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「ちょっとアンタ!いきなり何なのよ!それになんでアタイのあだ名知ってるわけ?」
どういう事や?まさか俺らの事忘れたんか?それとも人違いなんか?いや、二メートル近い大柄な体系やのに小柄っちゅう名前はそうそうおるとは思えん。
それにどう見たって山小屋で一夜を共にした小柄や。せやけど、そもそもコガッチや沢口はホンマは存在せえへん…後にわかった事やけど、あの二人は実は過去の人間…田代家の人や使用人と一緒に写る写真を発見して知った事。
その写真が撮影されたんは何十年も前の話、今も生きてたとしても60歳は有に超えてとるはずや。目の前におるコガッチは年齢不詳系やけど、さすがにそんな歳には見えへん。
そもそも、あの時見た二人は何やったんや…それも謎のままやのに、ますます混乱してきたわ。このまま考えてても埓があかへんから、俺は目の前いるコガッチに山小屋での出来事を話した。すると男は、
「そんな事いきなり言われても信じろと言う方が無理よ!…と言いたいとこだけど、実はアンタ達が見たと言うアタイに似た男は多分祖父よ。もっとも祖父は去年から体調を崩して大阪市内にある病院で入院しているの。だからアンタ達が言う山小屋なんかに行けるはず無いわ。でもね、祖父は昔田代って人の元で働いていた事があると言ってたわ。」
コガッチは、一呼吸置くと更に続けた。
「なんでも祖父が言うには、その田代って社長さん夫婦にはかなりお世話になったそうで、同僚だった、多分アンタ達の言う沢口って人だと思うけど、その人も二人よく食事なんかにも誘われたりして、仕事面では厳しい人だったみたいだけど、プライベートでは、とても面倒見が良かったと、口癖のようにいつも言ってたわ。ところが、その社長夫妻が行方不明になり、最終的には遺体が見つからないまま、事故死として処理されたと…。祖父と同僚は死因に納得がいかず、自分達で色々調べたそうなの。だけど当時はネットなんて存在しないし素人二人だけで調べるには限界があって、真相究明は断念したそうよ。これが祖父から何度も聞かされた話。だけど、この話はアタイ達家族と極身近な人達しか知らない事。それなのにアンタ達が知ってるという事は信じ難い話だけど信じる他無いわ。アタイはまだ仕事が残ってるの。何か聞きたい事があったら詰め所か受け付けで呼び出して頂戴!それじゃ行くわ!」
ノシノシと大股で本館の方へと歩いて行くコガッチを黙って見送ると、心が呟いた。
「どう言う事や?コガッチのじいちゃん生きてるんやったら俺等が見た二人は何やったんや?幽霊って事は無いんやし、ますます訳がわからへん…。」
心の言う通りや。せめてコガッチのじいちゃんが亡くなってるんやったらおかしな話ではあるけど説明がつく…。
「きっと生霊ね。そのおじいさん、相当悔やんでいるんだわ。だからその念が実体化してあなた達の前に姿を現したんだわ。」
突然沙織が冷静な口調で語り始めた。生霊?そう言えばテレビでそういうのやってたのを昔見た気がする。けど、単なる作り話としか思ってへんかった。




