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全員がスリッパに履き替えて、各々の靴を靴箱に入れると、山方が、
「それでは所々蛍光灯切れてるせいで、薄暗いですけど、ついて来て貰えますか?」
そう言うと、受付を左に進んで行った。ここはほとんど電気が切れとる・・・。真っ直ぐの突き当たりはどうやら非常口のようや。
非常口を告げる常夜灯だけが不気味に光ってて、逆にあそこからは逃げたくないと思えてくるくらいや。
突き当たりの手前を右に曲がると上と下への階段が姿を現した。地下は想像やけど遺体安置所のような気がする・・・。と言うても今は誰もおらんやろけど、それでも絶対に近寄りたくない。
「ちょっと太一!話がちゃうやんか!これって幽霊屋敷やで・・・。まさかここで一夜明かすんちゃうやろな!これやったら車で寝る方がマシやんか!」
さっきまで、料理も期待出来る!とか、はしゃいでたがな・・・。たしかに、まさか廃館に案内されるとは予想してへんかった。まあ、最悪食事させてもろたら、食事代払って車に戻ればええ事やし、すぐ近くに新館もあるんやから大丈夫やろ。
山方は二階へと続く階段を上がって行く。ドラマのようなカツーンカツーンっちゅう足音は聞こえず、スリッパのパタパタっちゅう音だけが院内に響き渡る。
七人分のスリッパの音が時々ピタリと合うと、一瞬だけ無音になり、その瞬間微かに階下から何か人の声らしきもんが聞こえた気がした・・・。思わず俺は、
「山方さん。この旧館って俺らの他に誰かおるんですか?」
と、尋ねた。
「いや、誰もおりません。なんでですか?」
「今、人の声が聞こえた気がしたんですけど。下の方から・・・。」
「下?この旧館には地下は存在しませんよ。」
え?さっきたしかに地下に続く階段あったやん!俺は慌てて後ろを振り返る。まだ中二階の踊り場やったから振り向くと下の階への階段が見え・・・る・・・・・・はず・・・!?
あれ?無い・・・。見間違い?いや、そんなはずはあらへん。たしかに下への階段があったはずや。しかし、今見ると、そこには白い・・・正確には灰色っぽい壁が見えるだけやった。
「太一、何言うてんの?上に行く階段しか無いし!」
「太一ちゃんもしかして怖がりなん?テレビの見すぎちゃうか?」
麻紀のキツい一言に詩音の怖がり扱い発言・・・。山方も笑いながら、
「たしかに夜の病院は怖いっちゅうイメージがあるから、見間違えたんでしょ。新館が完成してまだ一ヶ月ちょっと。それまでは、私もこの旧館で勤務してましたけど、地下はありませんし、幽霊とか見た事もありません。患者さんや同僚からもそんな話聞いた事ありませんし、大丈夫ですよ!」
と、見間違いっちゅう事で流されてもうた。すると、沙織が小声で、
「私も見たわ。声も聞いた。きっとこの病院には、山方さんの知らない・・・もしくは、知っていて隠しているかもしれない何かがあるわ。」
と、呟いた。沙織にも見えたんか・・・。けど、今は見当たらへん。っていうか、何かってなんや・・・。やっぱり、またなんかあるんやろか?もう、ほんまに勘弁してくれよ・・・。




