プロローグ 開幕
昔々、あるところに神様がいました。
その神様は、自然を創り、動物を創り――そして人を創りました。
それはもう、気が遠くなるほどの昔の出来事です。神様は永劫とも思える時間を、ずぅーと過ごしていました。
さすがに退屈になった神様は、何か面白いものはないものかと思案しました。しかし、これまでに発案されてきたゲームは、全てやり尽くしてしまいました。
いやはや、これは困った。
神様は頭を抱えました。神様同様毎日に退屈していた側近の天使達も、一緒に悩むようになりました。
こうして、神様と天使達は退屈を紛らわすためのゲームを考え始めました。
そうしたある日。何かを思いついたらしい天使の一人は、神様に向かってこう言いました。
貴方様は世に人間という、高貴なる存在を御創りなさった。そこで私は思ったのです。創造物は創造主に尽くすべきだと。
その天使が持ちかけたのは、とある『ゲーム』。人智の及ばぬ、恐るべき『ゲーム』なのです。
天使は事細かにルールを説明しました。違反行為や制約。クリア条件など諸々。その途中、神様はふむふむと頷き、やがてこう言いました。
うむ。良い意見じゃ。
神様は大きい決断を下しました。これほどの規模は、『ノアの箱舟』以来初めてのことでしょう。
そして、神様と天使達は『ゲーム』のために、着々と準備を進めました。もはや数えるのも億劫になる時が過ぎ、長い長い時間が経過していきました。
――しかし、揃いました。舞台も役者も脚本も何もかも。
準備万端。もうすぐ開幕の時です。ここから全てが始まり、全てが終わりを迎えました。それはすなわち『運命』。神様は人間に抗うことのできない宿命をお与えになったのです。