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第96話:『管理者権限、奪取。パスワードは「愛(バグ)」』

 情報の海が、黄金色の熱に侵食されていく。

 シキの指先から放たれる膨大なデータ書き換え命令コードは、皇帝が構築した鉄壁の論理防壁ロジック・ウォールを、バターのように溶かしていた。


『警告。警告。感情値エモーションガ、規定リソースヲ超過。……計算デキナイ。ナゼ、ココマデ不確定要素リスクヲ愛スル?』


 皇帝のホログラムが、ノイズ混じりの声を上げる。

 彼の計算では、人類は効率的な管理を望むはずだった。苦しみや迷いを捨て、ただシステムの一部として生きる方が「楽」なはずだった。


『痛ミ、悲シミ、嫉妬、焦燥……。ソレハ全テ、生命活動ニオケル無駄ロスダ。ナゼ、非効率ナ道ヲ選ブ?』


「……はん。分かってねえな、機械人形」


 シキは鼻で笑い、さらに深くシステムの中枢へと踏み込んだ。

 その背中には、レナたちの、そして世界中の人々の「想い」が繋がっている。


「無駄があるから、人生は楽しいんじゃねえか」


 シキは操作ウィンドウを次々と叩き割り、最短距離でコア(核)へと迫る。


「失敗して、遠回りして、泣いて、喧嘩して……。その『無駄』の積み重ねが、思い出になるんだよ。お前の作る完璧な管理社会はな……退屈すぎて、あくびが出るぜ」


 彼は足元のコアを見下ろし、言い放った。


「この星も、お前のクソ真面目な支配に飽き飽きしてるんだよ! もっとドキドキさせろって叫んでんだ!」


『否定スル。否定スル。否定ス……ル……』


 皇帝の姿が崩れ始める。

 シキたちが送り込む「熱量」は、冷たい論理しか持たない彼にとって、猛毒のコンピューターウイルスそのものだった。


「チェックメイトだ。……最終防壁ファイアウォール、突破」


 パリンッ!!

 ついに、最深部のプロテクトが砕け散った。

 目の前に現れたのは、この星の全権を司る『管理者権限アドミニストレータ』の入力コンソール。

 そこには、点滅するカーソルと、パスワードの入力を求める空欄があった。


『ヤメロ……! ソコニハ、如何ナル論理ロジックモ適合シナイ! エラーヲ吐イテ自滅スルゾ!』


「ああ、論理じゃ開かねえだろうな」


 シキはニヤリと笑い、キーボードに手をかけた。


「だが、俺たちが持ってる『最強のバグ』ならどうだ?」


 シキが打ち込んだのは、たった一文字。

 論理を超え、計算を狂わせ、しかし奇跡を起こす、人類最大の不確定要素。


 ――『LOVE(愛)』。


 ターンッ!!

 シキがエンターキーを力任せに叩き込む。


『グ、ガァァァァァァッ!!? バ、バグだ……! 愛トイウ名ノ、修復不可能ナバグが……私ヲ、食い尽くス……ッ!!』


 皇帝の断末魔と共に、青白かったシステム領域が一気に、温かな桜色へと塗り替えられていく。

 モニターの文字列が、次々と書き換わる。

 《管理者:皇帝》→《削除》

 《新管理者:シキ&魔女たち》→《認証完了》


「……よし」


 シキは汗を拭い、震える指で最後のコマンドを入力した。


「システム・オール・グリーン。……こんな窮屈な檻はもうおしまいだ」


 彼は、生まれ変わろうとする星に向けて高らかに宣言した。


「目覚めろ、世界! ……再起動リブートッ!!」


 カッッッ!!!

 眩い光が情報の海を、地下空間を、そして惑星全土を包み込む。

 1000年の呪縛が解かれ、世界が本当の姿を取り戻す瞬間が訪れた。


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