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第91話:『神の御業。全属性・同時多重展開』

 地下空間は、この世の終わりのような光景に包まれていた。


「――『全属性同時励起フル・バースト』」


 光の巨神と化した皇帝が、厳かに腕を振るった。

 その背後に浮かぶ5つの巨大な魔法陣から、地獄が噴出した。


 業火の津波、絶対零度の吹雪、全てを切り裂く暴風、大地を砕く地震、そして数万ボルトの雷撃。

 通常、一人の魔導師が扱える属性は一つか二つ。しかし、この星のシステムそのものである皇帝は、全ての属性を、しかも災害級の出力で同時に放ってきたのだ。


「きゃぁぁぁぁぁッ!!」


 少女たちの悲鳴が響く。

 逃げ場はない。空間そのものが破壊のエネルギーで埋め尽くされている。


「防いで、ソフィア!」

「やって……いますッ! ですが、重力が保ちません……ッ!」


 ソフィアが展開した重力障壁が、わずか数秒でミシミシと音を立てて砕け散る。

 レナが迎撃の炎を放つが、押し寄せる火砕流に飲み込まれ、かき消された。

 リズが回避しようにも、足場である大地そのものが液状化している。


「あはは……。めちゃくちゃね。こんなの、喧嘩じゃなくてただの天災じゃない」


 レナが絶望的な笑みを漏らす。

 これは戦闘ではない。一方的な蹂躙。

 『五大元素』の乙女たちが束になっても、その根源である『マザー・コア』には傷一つつけられない。


「理解せよ。個が全体に勝つことなどあり得ない」


 皇帝の声が轟く。

 感情のない、事実だけの宣告。


「君たちの魔力は、元を辿れば私が供給したものだ。……水道の蛇口が、水源地のダムに勝てるとでも思ったか?」


 次なる攻撃の予兆。

 さらに巨大な魔法陣が展開され、地下空間全体を蒸発させるほどのエネルギーが充填されていく。

 万事休す。

 誰もがそう思った時――。


「……12秒」


 轟音の中で、場違いなほど冷静な声が響いた。

 シキだった。

 彼はゴーグル越しに、迫りくる破壊の嵐を見つめていた。その瞳は、恐怖ではなく、冷徹な観察者の色をしていた。


「シキ!? 何を言ってるの、早く逃げないと!」

「……角度30度。魔力充填シーケンス、タイプB。冷却インターバル、0.5秒」


 シキはレナの叫びを無視し、ブツブツと数値を呟き続けている。

 彼の目には、襲いかかる魔法が「恐怖の対象」ではなく、「解析すべきデータ」として映っていた。


 ズドォォォォンッ!!

 

 皇帝の一撃が、シキの目の前に着弾した。

 だが、シキは半歩だけ横にずれ、爆風の直撃を紙一重でかわしていた。

 まるで、そこに攻撃が来ることを知っていたかのように。


「……見えた」


 シキはニヤリと笑い、ゴーグルの位置を直した。


「おい、ポンコツ神様。……お前の攻撃、芸がねえな」


「……何?」

 皇帝の動きが止まる。


「『全属性同時展開』なんて大層な名前をつけてるが……やってることは、数千個の攻撃パターンをランダム再生してるだけだ。それも、教科書通りの効率重視のな」


 シキは指差した。


「お前は完璧すぎるんだよ。完璧ゆえに、『最適解』しか選ばない。……だから、動きが完全に読める」


 シキの『虚数回路』は、この短時間で皇帝の膨大な攻撃アルゴリズムを解析し終えていた。

 相手がシステムである以上、そこには必ず規則性ルールがある。


「パターンは見えた。……こいつ、マニュアル通りの動きしかしてねえぞ」


 シキが工具を構え、レナたちに振り返った。


「反撃開始だ。……俺が『回答ナビ』を出す。お前らは、その通りに動けばいい」


 絶望的な天変地異が、一転して「攻略可能なゲーム」へと変わった瞬間だった。


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