表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/101

第88話:『学園崩壊。思い出の校舎を突き抜けて』

 ズズズズズ……ドゴォォォォンッ!!


 帝都防衛システムの自爆攻撃により、アトラス学園の壮麗な校舎が悲鳴を上げて崩れ落ちていく。

 天井が抜け、巨大なコンクリート塊がシキたちの頭上に降り注ぐ。


「――させません!」


 ソフィアが前に出る。

 彼女が展開した重力障壁が、数トンある瓦礫を空中でピタリと静止させ、粉々に砕いた。


「マスター、お怪我はありませんか!?」

「ああ、助かった。……だが、道が塞がったな」


 シキが指差した先、廊下は崩落し、足場が消失していた。

 だが、彼らに停滞は許されない。


「問題ないよ! 道がないなら、作ればいい!」


 リズが紫電を纏って飛び出した。

 彼女は崩れ落ちていく瓦礫を足場にして駆け抜け、対岸の敵兵を瞬時に斬り伏せると、壁を蹴ってこちらに手を伸ばした。


「ほら、シキ! 捕まって!」


 シキはリズの手を取り、崩壊する校舎の中を空中ブランコのように飛び移る。

 その背後で、瓦礫の隙間から狙撃銃の銃口が光った。


「……3、2、1。クリア」


 クレアだ。

 彼女は崩れる壁のわずかな隙間を通して、遥か遠くで待ち構えていた敵のスナイパーを正確に撃ち抜いていた。

 崩壊というカオスすら味方につけた、神業的な射撃。


「あーあ……。見てシキ、あそこ」


 走りながら、レナが崩れ落ちた壁の向こうを指差した。

 そこに見えたのは、黒板と机が並ぶ教室――かつてシキと彼女たちが過ごした『1年A組』の教室だった。

 だが次の瞬間、上の階が崩落し、思い出の教室は瓦礫の下に押し潰されて消滅した。


「私たちの教室が……。あそこでシキに怒られたり、お弁当食べたりしたのに」

「悲しいか?」

「ううん」


 レナは力強く首を横に振った。

 舞い上がる砂煙の中で、彼女は前だけを見据えていた。


「いいのよ。どうせ新しい未来を作るんだから! ……過去にしがみついてちゃ、シキの隣は歩けないわ」


「……いい度胸だ。卒業試験は合格だな」


 シキはニヤリと笑い、瓦礫の山を滑り降りた。

 目指す場所は、校舎の最下層。

 かつて『魔力ゼロの落ちこぼれ』だったシキが、毎日一人で掃除をさせられていた場所だ。


「こっちだ。……嫌になるくらい、よく知ってる道だからな」


 迷路のように入り組んだ地下通路を、シキは迷いなく進んでいく。

 やがて彼らは、埃っぽい最奥のエリア――『第3地下備品倉庫』へと辿り着いた。

 カビ臭い空気。古びたモップやバケツが転がっている。


「ここは……?」

「俺の元職場だよ。……そして、この奥だ」


 シキは倉庫の突き当たりにある、巨大で重厚な『開かずの扉』の前に立った。

 厳重な鎖と、数え切れないほどの封印術式が施された扉。

 生徒たちの間では「開けると退学になる」と噂されていた場所だ。


「まさか、世界の心臓部への入り口が、こんなゴミ捨て場の奥にあったなんて……」

 エミリアが絶句する。


「灯台下暗しってやつだ。……俺は毎日、この扉のノブをピカピカに磨かされてたんだぜ? その向こうに世界を終わらせるスイッチがあるとも知らずにな」


 シキは自嘲気味に笑い、ポケットから工具を取り出した。

 封印術式など、今の彼には何の意味も持たない。


「開けるぞ。……この扉の向こうが、世界の底だ」


 カチャリ。

 シキが『虚数解錠』を発動させると、数百年閉ざされていた重い扉が、軋んだ音を立ててゆっくりと開いた。

 そこから溢れ出したのは、目が眩むような青白い光と、圧倒的なマナの奔流だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ