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第45話:『攻略の鍵。思考連結(マインド・リンク)』

 バチバチバチッ!!

 紫電が走るたびに、周囲の風景が削り取られていく。

 リズ・スカーレットは止まらない。彼女はただの暴走機関車と化し、その場にいる全てを破壊しようと荒れ狂っている。


「……物理的な罠も、魔法による拘束も無意味だ」


 シキは瓦礫の影で、冷静に結論を下した。

 相手は認識できない速度で動く物体だ。網を張っても、網が閉じる前に抜け出される。誘導ミサイルを撃っても、ミサイルが静止して見える相手には当たらない。


「だったら、どうするのよ! お手上げじゃない!」

 レナが叫ぶ。彼女の頬には、リズによる高速ビンタの跡が赤く残っていた。


「外側から止められないなら、内側システムから電源を落とすしかない」


 シキは自分のこめかみを指差した。


「彼女の脳に直接ハッキングをかける。暴走している加速回路に割り込み、強制的に『スリープモード』のコマンドを打ち込むんだ」


「の、脳にハッキング……?」

 ソフィアが割れた眼鏡を押さえながら聞き返す。


「ああ。俺の『虚数回路』なら、生体電流への干渉が可能だ。だが、遠隔操作じゃ弾かれる。彼女の演算速度が速すぎて、通信が追いつかないからな」


 シキは真剣な眼差しで、リズの残像を見つめた。


「成功させる条件は一つ。俺が彼女に直接触れ、有線接続ハード・リンクすることだ」


「触れるって……あんな速いの、どうやって捕まえるのよ」


「捕まえるんじゃない。一瞬の接触タッチでいい。俺の魔力を彼女の神経網に流し込み、俺と彼女の意識を直結させる――『思考連結マインド・リンク』を行う」


 その言葉を聞いた瞬間、エミリアが「えっ」と声を上げ、顔を引きつらせた。


「ちょっと待ってシキ。思考連結って……まさか、貴方の感覚と相手の感覚を『完全同期』させる気?」

「そうだ。それ以外に、あの光速の思考に追いつく方法はない」


 シキは淡々と言うが、魔女たちの反応は劇的だった。


「だ、ダメよ! 絶対ダメ!」

 エミリアが必死に止めに入る。

「思考連結は、視覚や聴覚だけじゃない……触覚、痛覚、そして『快感』までも、すべてお互いに共有しちゃうのよ!? 下手をすれば、記憶まで混ざり合う……泥沼の精神交差ミックスになるわ!」


 それは、ただ抱き合うよりも、キスをするよりも、遥かに深く、濃厚な接触。

 互いの魂の殻を破り、中身を混ぜ合わせる行為。

 相手が感じた「気持ちよさ」が自分に流れ込み、自分の抱く「欲望」が相手に筒抜けになる。


「そんなの……公衆の面前でやる『精神的露出プレイ』じゃないですか……っ!」

 ソフィアが顔を真っ赤にして口元を押さえる。


「しかも相手は、あの刺激に飢えてる暴走車よ? シキの濃厚な魔力が流れ込んだら、どんな反応するか……」


「……あー、想像したくない」

 レナが頭を抱えた。


 だが、シキは眉一つ動かさなかった。


「リスクは承知の上だ。だが、このまま放置すれば彼女の脳は焼き切れて死ぬ。……俺は技師だ。目の前で壊れかけているパーツを見捨てる趣味はない」


 シキは工具ベルトを締め直し、暴風の吹く広場へと足を踏み出した。


「それに、俺の精神メンタルは頑丈だ。少々の快感や記憶の逆流には耐えられる」


「……バカ。そういう問題じゃないのに」

 エミリアが悔しそうに唇を噛む。

「……あとで私たちにも、同じこと(リンク)しなさいよね」


「何か言ったか?」

「なんでもないわよ! ……行ってきなさい! その代わり、失敗して死んだら承知しないわよ!」


 ヒロインたちの複雑な嫉妬と応援を背に、シキは戦場の中央に立った。

 ターゲットは、紫電を纏う神速の魔女。

 接触のチャンスは一度きり。

 失敗すれば首が飛ぶ。成功しても、精神が溶け合う泥沼のダイブ。


「おい、リズ! 聞こえてるか!」


 シキは大きく両手を広げ、猛獣を挑発するように叫んだ。


「お前の欲しがってる『最高の刺激』、俺が直接ねじ込んでやる! ……受け取る覚悟があるなら、かかってこい!!」


 ピタリ。

 高速移動していたリズの足が止まった。

 彼女の充血した瞳が、シキを捉える。


「……へぇ。いい度胸ね」


 バチィッ!!

 リズが姿を消した。

 神速の突撃。

 シキは防御も回避も捨て、ただ「触れる」ためだけに、その身を晒した。

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