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神さまのお家 廃神社の神さまと神使になった俺の復興計画  作者: 枝豆子


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9 鬼火の子 その2

 膝の上でぎゅっと拳を握り、頬に伝う涙を拭う事なく、ポロポロ涙を流す佐久夜。


「お主は、鬼火のみ成らず、我の事も憂いてくれるのか?」

「そ、そんなんじゃ…ただ、いなくなる事も当たり前みたいに…言うから」


 神さまは、嬉しそうに笑う。鬼火も嬉しそうに笑う。佐久夜だけが、グズグズと泣いている。


「うへへ、僕、こんなに嬉しい気持ち初めてだ」


 鬼火は、むくりと起き上がると、釜戸から飛び出た。消えかけだった炎の衣は、しっかりと全身に纏われている。ふよふよと漂いながら、佐久夜の顔の近くまでやってきた。そっと両手を伸ばして、佐久夜の顔に擦り寄る。


「熱く…ない?」

「うむ、鬼火は炎の化身じゃが、悪さはせぬぞ」


 両手を差し出すと、鬼火は佐久夜の掌の上に降り立ち、ヨッと片腕を上げて佐久夜に佐久夜に笑いかけた。


「なぁ、僕これからも兄ちゃんの側にいて良いか?」

「えぇ!?」

「ほほう、鬼火よ。我の神使である佐久夜を気に入ったと申すか?」

「うん、兄ちゃんの側って暖かい!ずっと一緒にいたい」


 佐久夜の掌にちょこんと座る鬼火に、佐久夜は戸惑い、神さまに助けを求める。


「ちょっと、神さま、俺意味がわかんないけど、どう言うこと?」

「うむ、佐久夜に従うと言っておる。佐久夜よ、鬼火の子に名を授けよ」

「名前?えっと、炎…火の玉…明るい…朱丸(あけまる)!っで良いかなぁ?」


 鬼火の体が光り、腕に神代文字(かみよもじ)の紋が浮かび上がる。


「僕の名、朱丸!朱丸だぁ!」


 佐久夜の掌からピョンと飛び上がり、朱色の火の玉となって飛び回る。


「佐久夜兄ちゃんの願い、叶えてあげる!」


 朱丸は、両手で印を結び声を上げる。朱丸を中心に光りの輪が、社全体に拡散して行った。


ボッ、ボボッ、ボボボボボッ!


 社の灯篭、行燈全てに火が灯る。


「あ、明かりが点いた?」

「うむ、明かりだけじゃないぞ。火も起こせる様になったのじゃぞ」


 神さまは、にっこりと微笑んだ。朱丸も胸を叩いて、ドンッと胸を張っている。


「朱丸、よろしくな!……因みに、神さまは、何を探していたわけ?」


 神さまは、スッと視線を反らせて明後日の方向を向いている。


「神さま?」

「灯も灯されたことじゃ……良いではないか?」


 佐久夜は、神さまの頭を摘んで、自分の顔の方向を向かせる。小さな腕をパタパタ動かし、神さまは慌てふためく。


「こら、佐久夜!我は神ぞ。酷いではないか」

「いんや、神さま!俺は、神さまとこの社を守って行くんだ。ハッキリとさせるべきだろ。な、朱丸」

「僕は、佐久夜兄ちゃんに従うぞ」


 朱丸は、神さまに抱きつき、身体中をくすぐり始めた。佐久夜は、戯れ合う神さまと朱丸を微笑ましく見ていた。そして、この縁を大事に慈しんでいこうと願った。


「わかった、朱丸!言うから許すのじゃ!」


 ハァハァと肩で息をする神さま。全くもって神さまらしくない神さまだ。


「狐火を捕まえて来てもらおうと提灯を探してたのじゃ!獣の屍体の側に、提灯を置いておけば、棲家にと狐火が寄り付くのじゃ!言うたぞ。我は、言うたぞ!」

「獣の屍体って…」

「佐久夜が、探して来るに決まっておろう!」

「……提灯見つからなくて良かった」


 やっぱり神さまは、残念な神さまだと佐久夜は思った。


モチベーションにつながりますので、

楽しんで頂けた方、続きが気になる方おられましたら、

評価、ブックマーク、感想、宜しくお願いします!

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