79 散々
平日、佐久夜は、夜八時まで弁当屋でアルバイトをしている。
元々佐久夜が住んでいたアパートの家主の息子夫婦が経営する弁当屋で、家主が引き起こした火災に巻き込まれたのが縁で、アルバイトとして雇って貰った。
真面目な働きぶりと素直な性格であった為、店主からも気に入られ、いろいろと融通も利いて、家族のように接して貰っている。
「佐久夜、あんまり気にすんな」
しょんぼりと肩を落とす佐久夜を店主は、肩を叩いて励ましている。
「いろいろご迷惑をかけて、申し訳ありません」
ぺこりとおじぎをして、佐久夜は店主に本日の仕事ぶりを詫びた。
店の前を箒で掃いていたら、散歩中の犬にぶつかり、吠えられ噛みつかれた。
何故か、唐揚げを一つ多くお弁当に入れて、客には喜ばれたが、在庫が合わなくなった。
常連である担任教師の高城の釣り銭を間違えて、ツッコミを入れられた。
保冷庫に収納しなければならなかったドリンクを冷凍庫に誤って収納し、奥さんがすかさずフォローしてくれた。
などなど、惨事にまで至ってないが、普段の佐久夜であれば考えられないミスを連発していた。
「佐久夜くん、誰でもミスが重なることも、調子の悪い時もあるのよ。こんな時は、しっかり食べて、しっかり休みなさい」
奥さんも叱り飛ばすわけではなく、逆に佐久夜を心配してくれている。
たくさんの迷惑をかけたにも関わらず、佐久夜に夜のお弁当のおかずまで準備してくれた。
不出来な自分を罵ることもなく、逆に励ましてくれる。不甲斐ない思いでいっぱいになり、佐久夜は、涙が出そうになった。
何度も何度も頭を下げて、弁当屋を後にする佐久夜。大きくため息を吐きながら、真っ赤な貮号に跨りペダルを漕いだ。
カラカラカラ
虚しく負荷が掛からず空回りするペダル。チェーンが、外れてしまっていた。
「マジかよ…最悪だな」
貮号を近くの自動販売機まで、押して行き、ペダルの前に座り込む。外れたチェーンを指でギアにかけゆっくりペダルを回して、チェーンを嵌めた。
チェーンの油で指先が汚れ、ハンドルに油がつかないようにしながら、貮号に跨った。
道路の脇を走る貮号。正面から車が来たので、佐久夜はそっと端に寄って停車した。
バシャン。
車が通り過ぎる際、タイヤが水玉を通り、佐久夜に思いっきり水を引っ掛けた。
「何なんだ?」
小さな不幸が積み重なる。佐久夜は、弁当が無事なのを確認し、ペダルを再び漕ぎ出した。
散々な目に遭いながらも神社までは、たどり着くことができた。
ようやく帰って来たかと思えば、朧がバンと狛犬の前に立って待ち構えている。
「ただいま、朧」
ほっとして、貮号を押しながら朧に声をかけた。朧は、大きく目を開き、髭を前に突き出した。
「ちょっと待つにゃ!佐久夜、神社に入るにゃ!」
耳をペタリと伏せ、警戒心丸出しの低い姿勢で朧は、佐久夜にゆっくりと近づいていった。
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