77 坂本 静香
恥ずかしさで居た堪れなくなり、佐久夜は、自分の教室に逃げ帰った。
「木花くん、顔真っ赤だよ?」
教室に戻ると洋服作りの先生であるクラスメイトの坂本 静香が、揶揄うように話しかけて来た。
「何でもないよ、坂本さん」
「ん、もう。しいちゃんって呼んでって言ってるでしょ」
静香は、佐久夜のこめかみを指で突きながら笑った。
「そうそう、この間頼まれた本持って来たよ」
鞄からゴソゴソと数冊本を取り出し、佐久夜の机に並べる。
「これが、カジュアルで、こっちが和装ね。あと、おまけに編み物の本も持って来ちゃった」
「編み物か……俺にも編めるかな?」
静香は、にっこり微笑み、鞄の中に手を突っ込む。
「んふっ、木花くんなら、興味持ってくれると信じてたよ。毛糸玉でしょ、鉤針でしょ、そして初めての編み物『鉤針編』!」
「あ、これ可愛いな」
「ん?それ、あみぐるみっていうんだよ。結構人気あるんだから」
パンダ、猫、ブタなど丸っこい愛嬌のあるあみぐるみのページをじっと見つめる。
「鉤針の基本的な編み方で、編めるから初心者にも簡単だよ?何なら、しいちゃんが、教えてあげるのだ」
「あ、ありがとう。坂本さん」
「だから、しいちゃんだってば!」
「し、しいちゃん…頼めるかな?」
強制的に『しいちゃん』呼びを強要され、佐久夜は、頬を赤らめながら、静香にあみぐるみの作り方を教わる事にした。
「じゃあ、コレとコレ……し、しいちゃん、教えてくれる?」
「サクちゃん…固いなぁ。ま、いっか。パンダとトラだね。うん、可愛いんじゃない。材料は、しいちゃんが、準備してあげるね」
「…サクちゃん」
一気に距離を詰められたじろぐ佐久夜を他所に、静香は、ウキウキと軽やかに体を弾ませ、自分の席に戻っていった。
元々友達と言える人物は、京平しかいなかった佐久夜。相変わらず人との距離の取り方は、よくわからないが、自分の身の周りの変化は、決して嫌な気はしなかった。
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