69 青銅と朱丸の妖術
「まっかっか!まっかっか!お猿のお尻はまっかっか!」
朱丸は、変な調子で歌を歌いながら、七輪の温度を上げていく。
「なんだ、あのおかしな歌は?」
京平は、口元をふよふよさせながら笑いを堪えている。
「朱丸は、調子が良いと、歌いながら炎の調整をするんだ。米を炊く時も、よく歌っているぞ」
朱丸に歌を教えたのは、佐久夜自身なのだ。炊飯のコツを歌にして教えたのが、きっかけだ。
「あー、はじめちょろちょろ中ぱっぱ。ってやつな」
調子もへったくれもない朱丸の歌が、一面にこだまする。京平は必死で笑いを堪えた。
「大まじめなんだから、笑ってやるなよ。可愛いだろ」
京平は、左手で口元を覆い、笑いを押し込めようと耐えていた。
朱丸は、一定の温度を維持する為に、炎と風と対話をしながら調整をしている。風を炎に抱き込ませるには、音の反響とそのリズムを聞き分けることで、調整が容易に出来るようになった。
初めて炊飯を教えてもらった時、一気に火力を上げすぎ、硬く芯の残った焦げついたお米が、炊き上がった。
佐久夜から教えてもらった炊飯のコツは、朱丸の温度調整を理解する上で重要だった。
身体をるつぼにくっつけて、耳を澄ませる。クツッ、クツッと合金が少しずつ溶けて混ざり合う音が聞こえてくる。
「ゆーら、ゆーら、ゆーら!きいろ、きいろ、ゆらゆーら」
朱丸は、今度は合金が溶け始めた温度を維持する為、歌の調子を変えてきた。
コポポっ、コポっ。
合金がずべてトロトロに溶けて混ざるように朱丸は、歌った。
「できた!佐久夜兄ちゃん、全部トロトロに溶けたぞ!」
るつぼに抱きついたまま、朱丸は佐久夜に呼びかけた。
佐久夜と京平は、朱丸に礼をいうと、鉄鋏でるつぼの蓋を開け、中を覗き込む。
真っ赤に溶け合っている青銅が見えた。
るつぼをしっかりと挟み、側に埋めてある石膏ボードの湯口にるつぼを添える。
ゆっくりと傾けて、湯口から溶かした青銅を流し込む。ちりっ、ちりっと音を鳴らし、青銅が下に流れていった。
佐久夜の鋳型に青銅を流し込むと、一度七輪にるつぼを戻す。朱丸が、温度が下がらないように、歌を歌って調整してくれている間に、佐久夜は、京平に鉄鋏を渡した。
「おっしゃあ!」
京平は、大きく声を出して気合いを入れる。鉄鋏でるつぼを掴むと、自分の鋳型に青銅を流し込んだ。
「京平も作るのかにゃ?」
「スセリビメ様に渡すんだって張り切ってるよ。プレゼントだから、自分の手で作りたいんだと」
額に汗をかきながら、作業をする京平を佐久夜たちは、温かく見守っていた。
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