67 鋳型を作ろう
「にゃんだ?」
佐久夜が、机で作業をしていると、脇の下からズボッと朧が顔を突っ込んで机の上を覗き込んだ。
「佐久夜、これはにゃんだ?」
朧は、前脚を突き出し、机の上に開いているノートをテシテシと叩いた。
「あぁ、これは青銅鏡の作り方をまとめた物で、今はデザインを考えていたんだ」
「ちんちくりんの面や猫の絵ばかりにゃ」
「うん、最初は何で招き猫の面なんか被っているんだろうって思ったけど、俺、理由がわかったんだ」
佐久夜は、嬉しそうにデザイン画のサンプルを色々描いていた。
「俺、神さまや朧の過去を知って良かったと思うよ。あのお面は、せめて逢魔を忘れないという、神さまの意志だと思うんだ」
「別にオイラは、そんなこと言われても嬉しくないにゃ」
ズボッと顔を佐久夜の腕から抜き取り、朧は膝の上から降りていった。
佐久夜の後ろで丸くなる朧。背中に朧のお尻が当たっているのを重みで感じて、佐久夜はふっと微笑んだ。
鋳型は二枚の石膏ボードを合わせて使う。鏡になる表面は、何も彫らずに真っ直ぐな板のまま利用する。
下手に彫ってしまうと真っ平にならないからだ。
背面となる裏面は、中央に円を描き、その円を深掘りし厚みを作る。更に、ヤスリや彫刻刀で凹凸を作り、青銅鏡の飾りをあしらっていく。
油粘土を使って、背面のデザインが、思い通りになるよう微調整をしていく。
「違うにゃ!もっと目はクリクリっとしてるにゃ」
「えー!」
デザインは、二種類考えた。一つは、朧の逢魔だった頃、尻尾が長かった時のシルエットを散りばめた物。もう一つは、神さまのお面を真ん中にドンとアップで描いた物。
神さまに内緒で、朧、朱丸、浅葱、次いでに京平にどちらが良いかと尋ねると、完全に意見が、割れてしまった。
「佐久夜兄ちゃん、どうせなら両方とも一つに纏めたらどうだ?」
うんうんと悩んでいると、朱丸が、おやつのいちご大福を食べながら、ポツリと言った。
さっそくノートを広げ、二つのデザインを一つに纏めてみた。
逢魔の体から上下に二本の尻尾が円を描き、真ん中に神さまのお面を遇らう。
「おぉ、可愛い感じになってきたじゃねえか!」
「俺も、神さまらしいと思うでござりまするぞ!」
「佐久夜兄ちゃん、すっげぇ!」
なかなか反応が良かった。ただ、朧だけは、デザインは気に入ってくれたみたいだが、色々注文がうるさい。
「佐久夜、よく見るにゃ!オイラは、もっとお目々がぱっちりにゃ」
「オイラは、こんなにお腹がぽっこりしてないにゃ!」
押し型を見るたび、やり直しを申し立ててくる朧。一生懸命、サポートしてくれるんだけど、ダメ出しが半端ない現場監督状態の朧であった。
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