64 浅葱の社会見学 その1
夕方、浅葱の社会見物を兼ねて、一緒にスーパーへ買い物に出かけた。
朱丸も行きたいと駄々を捏ねていたが、お土産に赤ウィンナーを二袋買って来ることを約束して、今回は我慢をしてもらった。
「佐久夜さま、本当に良かったのでござりますか?」
「いったろ、今日は浅葱の社会見学だって。アイツらの事は、気にするな」
心配そうに見上げる浅葱に、にっこり微笑みかけた。今まで、『ウラ』で生活していた天狗の浅葱。天狗の常識は、知っていても、この世の常識は、全く知らない。
佐久夜は、浅葱の手を握り商店街のスーパーにやってきた。
「まず、お店の中に置いてある商品は、勝手に食べたり、中を開けたりしたらダメだぞ」
緊張のためか、浅葱はコクコクと頷くだけだった。
「あら、いらっしゃいませ。今日は、お兄ちゃんとお買い物?」
店の中から出てきた顔見知りの店員に声をかけられ、ビクっと浅葱は、肩を震わした。
「こんにちは、親戚の浅葱と言います。ほら、浅葱、さっき教えただろ?」
はっとした表情を見せて、ぺこりとお辞儀をする浅葱。
「こんにちは。浅葱です」
佐久夜は、浅葱の頭を撫でて、よく出来ましたと褒めた。嬉しそうに両手で頭を触り、浅葱は笑った。
「あら、良い子ね。飴ちゃんあげる」
手に飴玉を握らされ、不思議そうな顔を佐久夜に向けた。
「ありがとうございます。ほら、お礼」
はっとして、ぺこりとまた頭を下げた。
「ありがとうござ…います」
店員は、浅葱の辿々しいお礼が、ツボだったのか胸をキュッと押さえる。
「まあ、可愛い!浅葱くん、何歳ですか?」
浅葱はコクコク指を広げ前に突き出した。
「ごひゃく…んぎ」
佐久夜は、浅葱を抱きかかえ、口を塞いだ。
「あはは、五歳ですよ。上手にパーで教えれたなぁ」
「そっか、五歳なのね」
なんとか誤魔化せたと佐久夜は、胸を撫で下ろした。改めて、事前に設定を決める必要があるなと思った。
店員が去ったのを確認して、佐久夜は浅葱に問いかける。
「お前、今本当の年齢を言おうとしなかったか?」
「もちろんでございまするぞ!」
やっぱりかと、佐久夜はため息を吐いた。
「あのね、五百歳の人間なんて存在しないからね」
「………本当でござりまするか?」
「ちなみに、俺も十六歳だからね」
佐久夜の年齢を聞き、驚愕の表情を浮かべる浅葱。
「俺のこと何歳くらいだと思ったわけ?」
「怒らぬでござりますか?」
様子を伺うように、佐久夜を見つめる。
「ん、怒らないよ」
「スセリビメ様と同じ年頃かと……思ったでござりまするぞ」
浅葱は、照れ臭そうに答えた。
スセリビメは、神さまが名前を失う前から神として君臨している。千年どころの年齢ではない。心の中で、がっくりと肩を落とした佐久夜であった。
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