61 おかえりなさい
ふと、霞が晴れ、目の前に竹林と見慣れた朧を形どった狛犬が、佐久夜たちの目に入った。
「帰って来たんだ……」
「ここが、佐久夜さまが仕える社ですか……」
あまりのボロボロ具合に、浅葱も呆然と見ている。
「スセリビメの社とは、大違いだもんな」
はっと我に返った浅葱は、両手を振って滅相もないと詫びていた。
朧は、一人社に向かう。拝殿に一人静かに座る神さまがいた。
「ちんちくりん…。心配かけたにゃ」
朧に声をかけられて、神さまはゆっくり振り返った。
「ひいも元気に、過ごしていたにゃ」
神さまは、立ち上がると朧に駆け寄った。
「主は、記憶が戻ったのじゃな」
「にゃ!ひいと佐久夜のお陰で、すべてを思い出したにゃ」
神さまもほっと一息つくと、社の外から佐久夜たちの声が聞こえてくる。
「神さま!ただいま」
「心配かけてごめん」
「お義兄さま、ただいま戻りました」
清水で汚れた足を洗い、身体を清め佐久夜たちが拝殿へ入って来た。神さまは、皆の無事の帰還を喜んだ。
佐久夜の後ろで、膝を付いて傅く天狗を見つけ首を傾げる。
「誰じゃ?我の知らぬ者がおるぞ?」
「神さま、『ウラ』で契約を交わした天狗で、名を浅葱と名付けた。これから、俺たちの力になってくれるってさ」
「ほう、佐久夜。主もなかなかやりよるな。我の神使として、良き仕事ぶりじゃぞ。浅葱よ、宜しく頼むぞ」
神さまは、新しい仲間を歓迎した。
「有り難き幸せで、ございまするぞ」
神さまと浅葱が微笑み、握手を交わす。
ぐぎゅるるる
大きく鳴り響く腹の虫。神さまは、すかさず手を離し後ろを向いた。
「あはは、相変わらず腹の虫すげぇな。俺たちも、腹減った。まずは、飯だな」
「我は、ちょっと安心をしたからであって、催促をしたわけではないぞ」
佐久夜たちは、土間へ向かう。朱丸は、待ってましたと言わんばかり、釜戸に火を起こす。
京平も佐久夜を手伝い、食事の準備をした。馴染んだちゃぶ台に、お湯を注いだカップ麺が並ぶ。朧には、マグロフレークの缶詰を用意した。
「今は、時間がなかったから、これで勘弁して」
浅葱は、初めて見るカップ麺を右、左、真上と眺めている。
時間にして三分、佐久夜たちが蓋を捲るのを見て、浅葱もそれに倣う。
「いただきます」
ズルズルっと啜る麺の音。浅葱も箸で麺を掴み口に運ぶ。
一口啜った浅葱は、目を見開き一気にズルズルっと音を立ててカップ麺を食べた。
「何でございまするか!美味!美味!有り得ない美味さでございまするぞ!」
涙を流し、麺を啜り、スープまで飲み干した。
神さまは、そんな賑やかな食卓で嬉しそうに笑っていた。
「ところで、ひいは、どうで合ったか?」
笑顔で食事をしていた佐久夜が、ポトリと箸を落とした。
「お義兄さま!」
京平が、箸を置いて神さまに畏まった。
「お義兄さま?」
佐久夜たちの不穏な空気に神さまは首を傾げる。朧は、すくりと立ち上がると、土間から外へ出ていった。
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