46 鍛冶が媼
「ええい!どうせ『オモテ』じゃ使えない銭でござる!持っていけ!!」
浅葱は、懐から財布を取り出し、 鍛冶が媼に財布ごと渡した。
「一ニ三……二文足りないね。……ま、大枚叩いてくれたんだ。負けてやろうじゃないか」
浅葱の財布から全てのお金を取り出し、空っぽになった財布を 鍛冶が媼は、浅葱に笑顔で返した。
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「佐久夜さま、どうぞお納めくだされでございます」
可哀想になるほど悲痛な笑顔で、先程佐久夜が手にしていた銅鏡を浅葱は、手渡した。
「浅葱……おまえ、一文なしだな」
京平が、お礼ではなく台無しな一言を発言。
「そこ黙ってぇ!俺は、佐久夜さまの笑顔が見られるのであれば、至極幸せでございますぞ」
浅葱は、京平をギロリと睨みつけると何か吹っ切ったような爽やかな笑顔で、ずいっと銅鏡を佐久夜に手渡した。
「浅葱…無理させて悪いけど、鏡が欲しいのは、ウチの神さまなんだよ…」
事のあらましを知らなかった浅葱は、衝撃を受けた表情をした。
「なんだい、神さま用の鏡かい。なら、『ウラ』の鏡じゃ役に立たないね。あ、もう銭頂いたから返品は受けないよ」
浅葱は、ガクリと膝を折って前のめりに倒れた。
「浅葱は、お馬鹿さんにゃ」
「こら!浅葱、ごめん。俺のために買ってくれたのに…。ありがとう!俺、ちゃんと使うから?」
「佐久夜さまは、優しいでござる。ところで、神さま用の鏡は、売ってないのでござるか?」
浅葱は、気を取り直して、 鍛冶が媼に尋ねた。
「無いね。そもそも、『オモテ』神さまに奉納する鏡は、『オモテ』の材料を使って、神使さまが磨き上げた鏡を奉納するもんだよ」
「俺が、磨き上げる?」
「おや、アンタが神使さまなのかい?ただの人間が神使とは、面白いね。そこのおチビちゃんの熱で銅鏡を焼いてアンタが磨き上げりゃちゃんとした鏡もできるんじゃないかい」
カラカラと笑いながら 鍛冶が媼は、暖簾の奥へ消えていった。
「朧?俺、人間に見えるの?」
「穢れを纏った時点で、オイラの幻術は、もう要らないにゃ」
八つ手の面で、[鬼火]に見える幻術は、既に解かれていたらしい。
「え?じゃあ、俺は幼児天狗にお姫様抱っこされた高校生に見えてたわけ?」
「にゃん!」
朧は、可愛らしく鳴いた。先程の浅葱とは、逆に京平が膝をついて前のめりに倒れ込んだ。
「どんまいでござるぞ」
「おまえが、言うなよ…一文なし」
涙目で、浅葱を見る京平。一文なしと言われ、浅葱は、ぷっくり頬を膨らます。
「ちょっと、アンタ」
暖簾の奥から、顔を出した 鍛冶が媼が、佐久夜を手招きして呼びつけた。
鍛冶が媼は、佐久夜に巻物を手渡した。
「せっかく、ウチの鏡を買ってくれたんだ。銅鏡の作り方と材料を書いておいたよ。『オモテ』に戻ったら、試してみな。これは、オマケだよ」
佐久夜の頭を人撫でして、 鍛冶が媼は、暖簾の奥へ戻っていった。
「ありがとうございます」
佐久夜は、店の前で深々と頭を下げた。
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