44 蛇の道は蛇
幾ら高校生だからといっても、運動能力に特化している訳でもない。佐久夜は、足がもつれそうになりながらも、必死で朧たちについて行く。浅葱に抱きかかえられている京平は、振り落とされない様に、浅葱にしがみ付き必死に耐えていた。
やがて、一本道が終わり、大きく開けた場所に到着すると、朧と浅葱が、歩を休めた。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ」
両膝に手をかけて、荒い息をしながら呼吸を整えようとするが、心臓がバクバクと高鳴り続けている。ずっと抱きかかえられて移動していた京平が、恨めしく思えてしまう。
「ここまで来れば、大丈夫でございますぞ」
幼児姿の浅葱に抱きかかえられていた京平が、地面に降ろされた。朱丸は、キョロキョロと周りを見回して、首を傾げていた。
「僕、なんかココ見覚えがある様な気がする」
大きく開けた場所だが、無数に道が交わって人や妖で賑わっている。
「ここは、最初の場所にゃ。朱丸も、最初にこの場所に辿り着いたはずにゃ」
「そっか!でもどうやってここに辿り着いたか、僕、わかんない」
帰り道が、解らずしょぼんと朱丸は、肩を落としている。
「朱丸さま、解らないで当然でございますぞ。ここには入口しかないでございますぞ。出口は、一つ。神さまに鍵を開けてもらうしかないでございますぞ」
広場の中心には、大きな噴水のある池が備えられており、妖や人らしき面を被った者たちが、水浴びをしていた。
「あそこの池で、まずは身を清めていただきますぞ」
浅葱に誘導され、佐久夜と京平は、池に近づき、ざぶざぶと中に入っていった。中央の噴水は、水を真上に噴き出し、シャワーの様に佐久夜たちの身体を濡らして行く。
「ウチの神社の清水と真逆で、『ウラ』では穢れを纏うにゃ」
妖たちは、妖気を元々纏っている為、水を飲む程度で大丈夫らしく、ただの人間は、ここでしっかりと穢れを纏う必要があると浅葱が説明をした。
全身びしょ濡れになった二人は、池から出ると朱丸に来ているスウェットを乾かしてもらった。
「もう、言葉を発しても大丈夫にゃ」
佐久夜と京平は、色々な事があり過ぎた事と、取り敢えず危険がなくなった事がわかり、緊張感が抜けヘナヘナとその場に座り込んだ。
「生きた心地がしなかった…」
「同じく、逃げるのに必死だった」
佐久夜と京平は、お互いの顔を見合わせる。八つ手の面で表情は見えないが、お互いが同じような表情をしているんだろうと思っていた。
周りを見渡すと、先程一列に行進していた人魂は、何処にも見当たらない。
「朧、さっきの人魂は?」
「途中で迂回して、元の道に戻って行くにゃ。あそこは、黄泉の道で、神の神域には入れないにゃ」
「朧センセがいなかったら、俺たちもあの人魂の行列に加わってたのか?」
「カッカッカッカッ。列ぶ前に喰われているでござりますぞ」
京平は、カラカラと笑う浅葱を見て、自身はとても笑えないと天を仰ぐ。
「蛇の道は蛇ってことか」
「そうだな。だから、戻って来れないんだ。よーくわかったよ」
窟から出て、ようやく一息つけた瞬間だった。
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