3 神さま?
小さな体で胸を張って神だと言ってのけた小人。佐久夜は、無言のままおにぎりを齧った。二人の間に、佐久夜の咀嚼音だけが聴こえてくる。
「何じゃ、お主ちっとも驚かんのう」
佐久夜は、おにぎりを食べ終えると、ペットボトルに口をつけ、飲料水を流し込んだ。ゴクリ、ゴクリと喉を潤す。
「十分驚いてるって」
「嘘じゃ!ちっとも驚いとらん!無反応じゃないか」
腕を組み、胡座をかいてそっぽを向く自称神さま。佐久夜は、その姿が可愛らしくて、クスッと笑った。
「それで、その神さまは、俺なんかに姿を見せて良いわけ?」
「むむ、お主が勝手に我の神域に入ってきたのではないか」
「神域?」
「そうじゃ!」
小人は、面をしっかり被り直すと、佐久夜に近づき、ペチペチと佐久夜の尻を叩く。
「お主が座っとるその石は、我の神体ぞ」
「え?そうなの。神体ってこんな道端に転がってるの?」
「うむ、我も目覚めたばかりで、何故こんなところに神体が或のかは知らぬのじゃ」
「アハハ、しょっぼい神さまだな」
佐久夜は、笑った。あれだけ思い詰めていたのに、笑える自分にも驚いてもいた。
「アハハ…俺、まだ笑える余裕があったみたいだ」
「人の子よ、哀しいことを言うな。そうじゃ、にぎりめしのお礼に、何か願いを叶えてやるぞい?」
「へぇ、なんか神さまっぽいな。……じゃあ、住むとこと!住める場所が欲しい!」
「…………す、すまぬ」
佐久夜にとっては、一番叶えたい願いというか、希望を伝えたが、小人はしょぼんと肩を落として項垂れた。
「我の力では、物欲を叶えることはできぬ」
「いいよ、いいよ。おにぎり少しあげただけだし、気にすんな」
小人は、佐久夜を見上げてじっと顔を見つめた。佐久夜は、その姿がいじらしく可愛らしいなと思い、気にするなと微笑み返した。
「人の子よ、名はなんと申す?」
「俺?佐久夜。木花 佐久夜」
「コノハナサクヤ……なんとも徳の高い名じゃな」
小人は、佐久夜にトコトコと近づき両手を添えた。
「佐久夜。お主さえ良ければ、我の神使として社に住まぬか?衣食住の住だけは保証するぞい?」
「神使?」
「そうじゃ、我は神として目覚めたばかりじゃ。故に神使がおらぬ。これから見つけるのもいつになるやら。…それであれば、住処が欲しいお主が、我の神使になれば、我は住処を与え、お主の願いを叶えることもできる。どうじゃ?」
佐久夜にとって、小人の提案は、願ってもないありがたい申し出だった。
「体の大きさ違うけど、大丈夫?」
「うむ、問題はない」
「俺、学校とバイトは続けたいんだけど、大丈夫?」
「うむ、勤労は必要じゃからな。今後も励むが良いぞ」
ここで会ったのも何かの縁。佐久夜は、小人の申し出を受けることにした。
「神さま?で良いのかなぁ。是非、俺を神使ってのにしてください」
「うむ、佐久夜。こちらこそ、よろしく頼む」
佐久夜は、小人の小さな手に指先を合わせた。
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