28 その頃、朱丸と神さまは…
夕方から夜にかけての時間帯は『陰中の陰(夜六時~午前零時)』と呼ばれ、清浄な気が全くなく不浄な気で満ちている時間帯となる。
古来の日本でも『逢魔が時(夜六時頃)』と呼ばれ、妖と出会いやすい時間帯とされて、不吉なことが起こる時間帯だ。
佐久夜たちがいる廃神社も例外では無く、朱丸がひくいどりに襲われた時間や、佐久夜が朧と最初に出会った時間も『陰中の陰(夜六時~午前零時)』だった。
妖である朱丸や朧は、妖力が増す時間帯だが、逆に神さまは、清浄な気がなくなるため、神力が使えなくなる時間帯だった。
「神さま!佐久夜兄ちゃんがいない」
釜戸の中で自身の妖力を充満させていた朱丸が、社に起きた異変に気づいた。
佐久夜に渡してある勾玉は、朱丸との絆である。神社の中ではもちろんの事こと、学校でも、バイト先でも、地が繋がっていれば、佐久夜が何処にいても感知できていた。
今しがた社に轟いた音、ドンっと地が響く音が、佐久夜の自室から響いてきた。
その直後から、佐久夜の気配を全く感知出来なくなってしまった。
神さまは、清浄な気がなくなる時間帯は、食事などの用が済めば、御神体の中で静かに時を過ごす。
今日も鏡の選定が終わった後、佐久夜たちに挨拶をし、静かに時を過ごしていた。
過去、ひくいどりに襲われた朱丸が、朧の張り巡らす結界を超え、御神体の岩まで血相を変え神さまを迎えに来た。
時刻は、午後十一時。『陰中の陰』である。
御神体から現れた神さまを見つけた朱丸は、腕を掴んで社の佐久夜の部屋まで連れて行った。
「いきなり、ドーンって音が鳴って、んで、佐久夜兄ちゃんたちが消えた!!!」
朱丸は、神さまに抽象的な説明をする。今にも泣き出しそうな顔をしていた。
佐久夜は、神さまの神使だ。朱丸とは異なり、地が続いていなくても、佐久夜が存在さえすれば、神さまは自分の神使が存在していることは把握出来た。
ただ、時間帯が悪く、神さまの神気では、居場所までは特定が出来ない。
部屋に消えかけている残滓を見て、佐久夜たちが何処に行ったかは予測ができた。
「朱丸、安心せい。#佐久夜は__・__#、無事じゃ」
「……佐久夜兄ちゃんだけ?」
「すまぬのう…京平は、解らんのじゃ。ただ、朧がおらぬ故、大事に至ってはないと信じるしかないのう」
神さまは、せめて夜から早朝にかけての時間帯であればと思いを巡らせる。
『陰中の陽(午前零時~午前六時)』は不浄な気が満ちている中で、清浄な気が混じってきている時間帯であり、神さまの神力が使えるようになるからだ。
「恐らく、佐久夜たちは、『根』におるのじゃろう」
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