27 朧、激怒する
「バカだバカだ、京平は本当にバカにゃ!」
渦が広がった瞬間、佐久夜たちは、急激な眩暈を覚えた。目を開けると、今までいた和室から、ゴツゴツした岩肌の洞窟の中にいた。
佐久夜と京平が、呆然としていると、佐久夜の腕の中にいた朧が、京平に飛びかかった。
「朧センセ!痛い!!痛いから~!!」
思いっきり腕に爪を立て、ガブガブと噛みついた。
京平の声に我に返った佐久夜は、慌てて京平を攻撃する朧を引き剥がした。
「お、朧!落ち着いて!」
「うにゃにゃ!オイラがいにゃかったらどうする気だったにゃ!本当にバカにゃ!」
京平の腕に、朧の引っ掻き傷と噛みついた痕から、血が出ている。
「京平!ごめん!朧が怪我をさせて…本当にごめん!」
「オイラ、悪くないにゃ!」
「コラ!朧、ごめんなさいして!」
京平は、噛みつき引っ掻かれ、ヒリヒリする腕を摩る。
「佐久夜、巻き込んでゴメン。朧センセが、怒るのも無理ない」
「このバカは、佐久夜と違って妖気の加護がないにゃ!」
「だからと言って、怪我させちゃ駄目だろ」
佐久夜に怒られても、朧はプイっとそっぽを向く。決して謝らないという意志を表す。
「佐久夜!朧センセ、俺のために噛みついたんじゃないかなぁ?ね、そうだろう」
佐久夜に抱きかかえられたままの朧は、顔を背けたまま、コクリと頷いた。
「なら、どうして怪我をさせる必要があったんだ?」
「……ここが裏だからにゃ。妖気がないと直ぐに連れ去られるにゃ」
佐久夜は、朱丸、朧と契約がある。また、二人から渡された勾玉も所持している。だからこそ、佐久夜は普段から妖気を身に纏っていた。また、神さまの神使であることから、多少なりとも神気も纏っている。
しかし、京平は、佐久夜と違って、何も纏っていない。ただの人間。
「この場所は、裏にゃ。表の人間は、存在が許されにゃいにゃ」
「それで、傷を負わせたんだ?」
「そうにゃ!オイラの爪と牙から妖気を分けたにゃ!でも腹が立ったから、オマケもしたにゃ」
佐久夜は、京平に朧がやり過ぎた事を頭を下げて謝った。
佐久夜が頭を下げる姿を見て、朧はちょっとだけやり過ぎたと反省をする。
「オイラは、悪くにゃい!だけど、佐久夜は、もっと悪くにゃい!だから、謝る。やり過ぎたにゃ!少し悪かったにゃ!」
京平は、朧の頭をそっと撫で、笑って見せた。
「朧センセ、俺のことも守ってくれてありがとう!」
「そうにゃ!オイラは、京平も守ったにゃ!」
佐久夜は、素直に頭を撫でられている朧を、ぎゅっと抱きしめた。
「朧…。俺の友だち、守ってくれてありがとう」
朧は、すいっと佐久夜の頬に、自分の顔をすり寄せた。
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