25 廃神社のお風呂事情
「続きましては、提供者はうちのアネキ!元彼と初デートで買った水族館で購入したイルカの形をした鏡だぁ。その後、元彼の浮気が発覚して僅か三ヶ月で破局を迎えた曰く付きの一品だ」
「良いのかよ、そんな事バラしても」
テンション高く進行をしていく京平に、思わず佐久夜は苦笑い。朱丸は、楽しそうに合いの手を入れている。
「アネキからも、要らないのなら叩き割ってねと了承を貰ってるから大丈夫!」
「いや、心配してるのはそこじゃねえ」
気にせずに姉のプライベートを暴露していく京平は、イルカの形をした鏡を神さまに差し出した。
「うむ、拝見いたそう」
神さまも次々に鏡を吟味していくが、どれもこれも望んでいる鏡とは違っているらしいが、京平が明るく場を和ませてくれているため、気落ちする様子はなかった。
「ギャハハ、残念!アネキの無念晴らされず!」
「姉ちゃんにボコられるぞ」
「良いんだよ、今新しい彼氏とラブラブだし。自分で笑いながら話してたから」
京平は、目尻に笑いすぎて浮かんだ涙を指先で拭った。
「なかなか見つからないもんだなぁ」
「結局、この中にはお目当ての鏡はなかったしね」
お茶を啜り、京平は喉を潤す。佐久夜も鏡を見比べながら、目的の鏡はどんな鏡なのだろうと思いを巡らしていた。
「神さま、今日は見つからなかったけど、きっとこれっていう鏡を探して来るから」
「うむ、しかと頼んだぞ」
七輪の火がついた炭は、火消し壺に移して蓋をする事で、炭の消火ができる。朱丸に頼んで、炭を一つ一つ壺に移してもらった。
「それで、佐久夜は風呂どうしてんの?」
京平が、期待に満ちた表情で、佐久夜に尋ねてくる。重度のオカルト好きの京平は、廃神社の風呂事情が気になっていた。
「え?風呂ないけど」
「マジ?」
「マジマジ」
「え~!俺、秋刀魚焼いたし、汗いっぱいかいたし、お年頃の男の子だし、ばっちいのやだ」
どこの女子かよと思わせる仕草で、京平は口を尖らせて文句を言う。佐久夜だって、秋刀魚の煙臭い頭で布団に入るのは、避けたいと思っている。ただ、風呂が無いのは事実だった。
「京平、驚くなよ。この神社には秘密がある」
佐久夜の発言を聞いて、京平はむくりと起き上がった。
「だろ?なになに、妖温泉とか、秘湯とか近くにあんの?」
佐久夜は、黙って京平に桶を一つ手渡した。京平が、桶を受け取ると、佐久夜は服を脱ぎ始める。
「京平、お前も全部脱げ」
「お、おう」
京平も佐久夜に続き、服を脱いでいく。佐久夜は、自身の下着も脱ぎ捨て全裸になった。
「京平、下着も脱げ」
「マジ?」
「マジマジ!面白いことあるから」
佐久夜は、桶を片手に全裸でいる。男同士だからといって、土間で全裸はないだろうと京平は思った。
「京平、お前、不思議体験したいんだろう?」
「……絶対、佐久夜に弄ばれてる!チクショウ!」
京平は、えいっと一気に下着を脱いだ。
「じゃあ、俺に続けよ」
佐久夜は、そう言うと釜戸に沸かしているお湯を桶で掬うと、手を入れて湯加減を見る。京平も同じ様に、桶でお湯を掬った。
佐久夜は、お湯の入った桶を持ったまま、社の外に出た。京平も慌てて後に続く。
全裸で佐久夜と京平は、社の外で並ぶと、佐久夜は、桶のお湯を頭から被った。
「マジ?」
「マジマジ!良いからほらほら!」
佐久夜に促され、京平も頭からお湯を被る。その後、三回ほどそれを繰り返した。
佐久夜は、土間に戻り濡れた身体をタオルで拭いていく。
「ありえねぇ」
京平も口を尖らせながら、身体を拭いていった。
「こんなの、風呂じゃねぇ……あれ?」
京平は、頭を拭きながら、自身の髪の毛の指通りが滑らかになっている事に気がついた。
佐久夜は、すでに下着を履き、スウェットに袖を通している。京平は、身体を拭きながら、脇を臭ったり、肌を触ったり感触を確かめる。
「とりあえず、パンツくらい履けよ」
全裸のまま自分の身体を弄る京平に、佐久夜はタオルを投げつけた。
「どうなってんの、これ?」
「言ったろ、不思議体験って」
佐久夜は、いたずらが成功したという表情を見せて笑った。
「へぇ、清水効果ねえ」
「なんか、浄化の効果があるんだ」
「すげぇな、地味だけど」
京平は、サラサラになった髪の毛を満足そうに手櫛で何度も指を通した。
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