22 オカルトマニア
佐久夜は、神さまの希望である鏡を用意するとは言ったが、どんな鏡が良いのか皆目見当がつかなかった。取り敢えず、佐久夜の私物である手鏡を神さまに見せては見たが、これじゃないと神さまは首を横に振った。
「取り敢えず、神さまのご希望に叶うかどうかわかんねぇけど、心当たり探して来るよ」
朝食を食べ終わると、後片付けをし、佐久夜は愛車である真っ赤な【貮号】に跨り、元気よく学校へ登校して行った。
朧の姿をした二体の狛犬に見送られ、佐久夜は【貮号】のペダルを漕いでいく。
「おはよう佐久夜!今日も廃神社から登校か?」
佐久夜の【貮号】に並走して挨拶をしてきたのは、クラスメイトの魚住 京平 だ。重度のオカルトマニアで、深夜神社に忍び込んで来たところを朧に御用されてしまった。
「京平!おはよう。廃神社って言うな!立派な狛犬も出来たんだ」
「ハハ!あれは爆笑もんだ」
「また、朧に引っ掛かれるぞ」
まるでネズミを捕まえて、ご主人様に褒めてもらおうと、得意気に京平を前脚で踏みつけて胸を張っていた朧の姿を思い出す。
「今度、またたびでも持って行って機嫌でも取るよ」
京平が忍び込んできてくれたお陰で、朱丸や神さまの事も遠慮なく相談できることが、佐久夜にとって有難かった。
「へぇ、面白そうじゃん!神さまの鏡ねぇ」
「神さま自身も実際に持ってみないとわからないらしい」
「よし、俺も家から、鏡を持っていくよ。だからさぁ、今日遊びに行って良い?」
京平は、わくわくした顔で尋ねてきた。重度のオカルトマニアである京平は、以前から神社に泊まりたいと言っていた。
「うち、テレビもラジオもないぞ」
「良いよ、良いよ!」
佐久夜は、諦めた顔をして、京平が泊まりに来る事を許可した。
「あ、電気通ってないから、携帯充電できないからな」
「わかった!」
るんるんと鼻歌が混じり出す京平に、変わったヤツだと佐久夜は、笑って答えた。
昼休み、学校近くの商店街で、鏡を購入する為に、佐久夜と京平は学校を抜け出した。
京平の家にある鏡以外にも、用意した方が良いと思ったからだった。
百円ショップでは、手鏡や二面鏡、女性が好みそうなコンパクトなど色々購入した。ファンシーショップでも、女の子にプレゼントしたら喜んでもらえそうな物や、大きめな置き鏡なども購入した。
買い物が終わると急いで佐久夜達は、学校に戻って再び授業を受けた。
そして、その夜。
「佐久夜!迎えに来たぞ……高城先生?」
夜八時、京平が佐久夜のバイト先に顔を出すと、担任である高城が店舗にいた。
「魚住?いや、俺は、客としてだなぁ」
「京平、お待たせ。高城先生も、良い加減に文さんをデートに誘いなよ」
デートの誘いと聞いて頬を染める弁当屋の主人の娘の文。佐久夜の言い回しに京平は、ははんと顎をなぞった。
「先生の想い人ってわけね」
「バッ!木花、魚住!大人を揶揄うな!」
真っ赤になって、佐久夜と京平を攻める高城の手をそっと握ったのは、文だった。
「高城先生、本当ですか?」
見つめ合う二人に、微笑みかける。
「文さん、先生けっこう本気で惚れてるみたいっすから」
二人に声をかけて佐久夜達は、弁当屋を出た。
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