20 神さまの頼み事 その1
佐久夜は、鼻歌混じりに境内を箒で履いていた。箒で履きながら、チラリ。また履きながら、チラリ。朧モデルの狛犬を見ては、口角がゆっくり弧を描く。
「いつか、猫の神社って言われるんじゃないかな?」
神さまは、狛犬は、犬でも狐でもどんな動物でも良いと言っていた。神社の結界を担う動物が、狛犬としての力を奮う。この神社の結界は、猫又である朧が張っっている。だから、朧の姿で問題ないと神さまは、言った。
朝のお努めを済ませると、皆の朝食の準備に取りかかる。朧も一緒に食事をする様になり、ますます神社は賑やかになっていった。
佐久夜が土間に戻ると、既に神さまがちゃぶ台の上に鎮座している。いつもなら、食事の準備が整ってから現れるが、今日は様子が違う様だった。
「神さま、おはよう?」
元気な朱丸も調子が狂うらしく、挨拶が疑問形になっている。
「おはよう、何か有ったの?」
「うむ、苦しゅうない、近うよれ」
何処ぞの悪大名だよと、佐久夜は思った。
「まずは、朝ごはんの準備を用意してからでも良い?」
「うむ、良きに計らえ」
気持ち悪い様子ではあるが、神さまも了承したので、取り敢えず朝食の準備を始めた。
本日の朝ごはんは、ベーコンエッグとおかか梅のおにぎり。トマトサラダと牛乳を用意した。神さま、朱丸、朧の好物をそれぞれ用意してないと贔屓だ狡いと小競り合いを始める為、意外と気を使っている。
最近では、神使というよりもお母さんの立場だなと思うこともしばしばだった。
「はい、お待たせ。一緒に食べよう」
いただきますと両手を合わせて、食事を始める。神さまも箸はつけるが、口数が少ない。
「神さま、体の調子が悪いんか?」
いつもなら、朱丸とおかずの取り合いを始めたりするのに、もそり、もそりと食べている。朱丸が、心配そうに佐久夜の袖を引っ張って、見上げて来る。
「ちんちくりん!オイラが佐久夜に伝えてやるにゃ!寝小便にゃ!寝小便したにゃ!」
「!!」
「え?そうなのか?」
「ち、違うぞ!我は、寝小便はせぬぞ!佐久夜に、頼みたいことが……あ」
しれっとそっぽを向いた朧に、神さまは頭を掻いて恥ずかしそうにしていた。
「神さま、俺に教えてくれる?」
「佐久夜よ、我にはどうしても手に入れなければならぬ物があるぞ」
神さまは、朧の機転に感謝しつつ、佐久夜に頼みたい事を話し始めた。
モチベーションにつながりますので、
楽しんで頂けた方、続きが気になる方おられましたら、
評価、ブックマーク、感想、宜しくお願いします!




