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神さまのお家 廃神社の神さまと神使になった俺の復興計画  作者: 枝豆子


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12/41

12 猫

 神社がある竹林は、人里から少し離れている。街灯もポツリ、ポツリと距離が有り、陽が落ちれば暗闇が広がる。


 佐久夜は、【貮号】のヘッドライトを頼りに、夜道を進む。


 ニャウン


 竹林の入り口付近で、佐久夜は猫の鳴き声が聞こえた。【貮号】のブレーキをかけ足を止めて、周囲を見渡す。


 ニャア


 佐久夜の足元に、身体を擦り付ける丸っとした顔付きの黒猫を発見。


「おぉ!真っ黒だから、気付かんかった」


 グルグルと喉を鳴らしながら、佐久夜の足に纏わりつく。


「ハハッ。人懐っこいニャンコだなぁ」


 佐久夜は、【貮号】のストッパーを立てて黒猫の側に座った。丸々とした愛嬌のある顔、両手で首元をわしゃわしゃ撫でてやると、気持ちよさそうに首を伸ばした。


「ちょっと待ってろ」


 バイト先で貰った弁当を開けると、唐揚げ五個、海老フライ二本、赤ウインナー二本が入っていた。


 佐久夜は、手頃な落ち葉を見つけ皿代わりにして、唐揚げを一つ乗せた。


 黒猫は、大きく目を見開くとジッと佐久夜を見つめた。


「唐揚げ、一つだけどお裾分けだ」


 にゃーっと黒猫は、一鳴きすると、パクパクっと唐揚げをあっという間に平らげた。まだまだ欲しいと言わんばかりに、佐久夜の膝をカリカリっと軽く爪を立てるが、佐久夜は後ろ髪を引かれる思いで立ち上がった。


「悪いな、おかずを楽しみにしている奴が、他にもいるんだ。また、今度会えたらお裾分けしてやるよ」


 お弁当の蓋をしっかりと閉めて、ビニール袋にしまうと、【貮号】のカゴに乗せた。


 もう一度、黒猫を撫でるとそのまま【貮号】に跨り、ペダルを踏み込んだ。


「じゃあな」


 手を振って、佐久夜はその場を去っていった。




「提灯よーし、灯籠よーし、行燈よーし」


 朱丸は、神社周りの提灯、境内の灯籠、社の中の行燈に全て明かりが灯されているのを確認していく。


「あぁ、早く佐久夜兄ちゃん、帰って来ないかなぁ」


 点検を繰り返しては、参道の入り口まで行き、佐久夜が見当たらないとまた灯りの点検を繰り返す。


 遠足前の小学生の様に、胸を躍らせて佐久夜の帰りを待っていた。


「朱丸よ、ジッと待って居れんのか?我の気が散る」


 神さまは、組み紐をぎっちら、ぎっちらと編み込んでいる。朱丸に呆れた口調で諭すが、その声はとても優しかった。


「でもさぁ、佐久夜兄ちゃん、いつもより遅くないか?」

「ふふん、赤ウインナーが食べたいだけじゃろ?」

「ムッキー!神さまだって、海老フライ楽しみにしてるんだろう!」


 朱丸に対して余裕を見せる神さまだったが、マヨネーズの魅力にはまってから、タルタルソースを塗した海老フライを想像して、腹の虫が騒ぎ出す。


「確かに、ちと佐久夜の帰りが、いつもより遅いかもしれんのう」

「僕、ちょっと竹林の入り口まで迎えに行ってこようかなぁ」

「仕方ないのう、我も付き合うぞ」


 朱丸と神さまは、帰りの遅い佐久夜を迎えにいく事にしたのだった。 

モチベーションにつながりますので、

楽しんで頂けた方、続きが気になる方おられましたら、

評価、ブックマーク、感想、宜しくお願いします!

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