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家族へのカミングアウト

三日坊主、回避!

 時は過ぎて3月。

 私が社会人になってから1年が経とうとしていた。


 原課長をお迎えしてから、さらにアマゾンツリーボアをお迎えし、計5匹。


 いくら一人暮らしをしていようと、蛇を飼育していることを家族に隠すには限界がある。

 (当時はまだ実家によく帰っていたし、連絡も取り合っていた)


 実は、私にはなんでも話せる兄(次男)がいるのだが、兄(次男)以外の家族には蛇を飼育していることを隠していたのだ。


 だって、娘が蛇を飼育しているなんて嫌だろう。

 親の反応は火を見るよりも明らか。


 「今すぐ捨てなさい!」

 「そんなことのために育てたんじゃない!」


 容易に想像できる笑


 ずっと隠したいところだが、一人暮らしの家に来られたらすぐにバレる。

 それなら、蛇を見られて怒られるより、自分から言った方がいくらかマシだろう。


 というわけで、私は親へのカミングアウトのタイミングを伺っていた。


 そんな時、母から連絡があった。


「今度実家に帰ってくる時、迎えに行くのお父さんだから」

「…………え、嫌なんだけど」


 私の実家は田舎県のさらに辺境の地。

 公共交通機関はなく、家族が主要な場所まで車で迎えにくることがほとんどだ。


 ここで父親との確執を話そうと思う。


 

 先ほども言ったように、私は田舎の中の田舎に生まれた。

 母校は高校と大学しか残っていないし、中学は最後の卒業生だった。


 そして我が家は、家族親戚含めて皆、学校の先生。


 つまり、自分が通う学校に親がいた。

 中学の生徒指導の先生は父だったし、高校の生徒指導の先生は叔父だった(泣ける)


 また、父の性格も良くはなく、人を下げて自分を上げるような発言が多かった。

 それは私に対してもそうで、私を馬鹿にするようなことを私の同級生に言いふらすことは日常茶飯事だった。


 父の良くない発言や態度は、私にだけでなく他の先生に対しても同じだった。

 するといつしか、先生は腹いせに立場の弱い私をいじめるようになった。


 まぁ、いじめといっても過激なものがなかったのが唯一の救いだと思っている。


 当時驚いたのは、穴あけパンチだ。

 

 先生は、小テストの際に机上に出していた私の筆箱に、穴あけパンチに溜まった小さな丸い紙クズを大量に入れた。

 テスト中だから声を上げるわけにもいかないし、先生に「やめて」とどうやって言えばいいのか、当時の私には分からなかった。

 地味な嫌がらせにされるがまま。


 そんなこんなで、原因の父とは何年も口を聞いていなかった。


 父のことが嫌いだったし、笑って話す必要性も感じていなかった。


 中学を卒業してから8年。

 社会人になって1年。


 今さらどう話せというのだろうか。


 悶々と悩む中、父が私を迎えにきた。


 父の後ろを無言で歩く。

 父の背中は思ったよりも小さく、白髪が生えていた。


 私は急いで母にLINEをした。


「お父さん、すごい白髪生えてる」

「苦労してるのよ」


 あれだけ大きかったお父さんもこんな風に変わるんだ…


 実家に帰る前、私は父と夕飯を食べに行くことにした。先に実家に帰ると、到着が夜中になってしまうからだ。


 子どもの頃によく行った回転寿司。

 

 お寿司が来るまで、父は私と何を話したらいいのか分からないようだった。

 緊張しているようで、父がお茶をこぼす。


 私がお手拭きで机を拭くと、父は「すまんな」と言った。


 この人は、中学生だった私に少しは負い目を感じているのだろうか。

 ずっと、このまま私に対して緊張したまま生きていくのだろうか。


 と、ぼんやりと思ったことを覚えている。

 父に対して失礼だが、少し哀れにも思った。


 私は意を決して口を開く。


「お父さん。私、お母さんにも言ってないことがあるんだよね」


 お母さんにも言ってないこと、と聞いて嬉しそうに笑うお父さん。

 私は続けて言った。


「私、蛇飼ってるんだよね。しかも5匹」

「そうか」


 父はすんなりと受け入れてくれた。

 

(何年も口を聞いていない娘に、母親よりも先にカミングアウトしてもらえたら、世の父親はだいたい喜ぶよね)


 それから私は蛇の話を続け、父は楽しそうに聞いていた。


 さて、蛇のカミングアウトの最難関は母親である。

 だが、これもすんなりと事が運んだ。


 父が母に漏らしたからだ。


 家に帰ってから、私は母に問い詰められた。


「蛇飼ってるってどういうこと!?」

「社会人になったら飼おうと決めてたって」

「蛇って何?? そこらじゅうにいるじゃない! わざわざ飼ってるって…」

「日本の蛇じゃない。しかも5匹!」


(…全部お父さんが答えるじゃん笑)


 母は私に向かってギャーギャー言ってるのに、母の後ろでくつろいでいる父が丁寧に全部答えていく。


 そんな様子に母も呆れて、ついに矛先は父に向かった。


「なんでお父さんが答えるの」

「俺は全部教えてもらったからな」

「……あ、そう」


 母は私を怒る前に、怒ることに疲れてしまったようだった。


 

 結局、父のことは許していないし、この先も許すことはないと思う。


 でも、お互いちょうど良い関係に戻れたのは良かったなと思った。

 蛇を何も言わずに許してくれたおかげで、私の溜飲も下がったし。


 全部、蛇のおかげ♡

私の独断と偏見による蛇紹介No.4(5段階評価)

コーンスネーク

美しさ★★

危険度★

飼育難易度★

お迎え金額★


ちなみに、実際の言葉遣いはとても鈍っております。

田舎者なもんで。

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