1年生 。
登場人物 。
五十嵐 吹雪
三神 澪亜
_____ 始まりなんか、一瞬だった。 壇上で堂々とスピーチをしている君から目が離せなかった。
1年生。
私が好きになったのは、クラスのカッコいい男子でも、勉強ができる男子でも、運動神経が良い男子でもなく、入学式の日、新入生代表としてスピーチをした3組の女の子だ。名前は、三神澪亜。成績優秀で常に学年トップを取り続ける、そんな子だ。当然、1組で違う小学校から来ている私となんか関わりも共通点もない。今は、ガラス越しのその真面目な表情を見るので精一杯だ。
「五十嵐ちゃーん。一年にさ、ちょー綺麗な子いるよね!」
「まって私も知ってる!確か名前が…。」
「「三神澪亜!」」
「あー、三神さん。先輩狙ってるんですか?」
「そーなんだよねー。だからさ、協力してほしくて!五十嵐ちゃんって三神さんと仲良いの?」
「…。いえ、出身小学校もクラスも違うので話したことないです。」
「まじかー。おけ!急にゴメンね〜。」
「あ、はい。」
同じ部活の3年、一宮先輩はルックスも性格も良く、色んな学年の女子からモテまくっている人だ。一宮先輩がライバルとか。私勝ち目ないじゃん。まぁ、同性な時点で勝ち目なんかないんだけど。
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_____ 入学してから3ヶ月、今日は学年でレクリエーションがある日だ。学校からちょっと離れた場所にある博物館で班ごとにお題をクリアしていくらしい。一班8〜10人程の人数で、班長と副班長が1人ずついる。良くも悪くも私は三神さんと同じ班だ。その上、副班長という大役付きだ。もちろん三神さんは班長。今までガラス越しで見るのに精一杯だったのに、今日は急に距離が近い。緊張して離せなくなることなんか目に見えている。でも役職上、話さなければ活動は一向に終わらない。神様は意地悪だ。
「五十嵐さん。次のお題なんだけど、」
「…ぁ、はい。、なんでしょう」
「そんな硬くならなくて良いよ〜(笑) あ、これにしようかなって思ってるんだけど、大丈夫?」
「んえ、あ、もちろん!、デス」
「はーい。有り難ね」
たった少しの、ごく普通の会話。それだけなのに、何でこんなにも心臓がうるさいのだろうか。もう少し話したい、もっと近くに行きたい、もっと仲良くなりたい、今まで見ているだけで満足だったのに、そんな事を思ってしまう自分がいる。
「?どうかした?五十嵐さん」
「…。いえっ何も!」
「そー?何かあったら言ってね」
そう言い微笑みかけてくれた三神さん。 あぁ、私は本当に三神さんが好きなんだな。その気持ちが私の中でどんどん広がっていく。私が男だったら、三神さんが男だったら、、。なんて。 どうせ叶わない恋。それでも勇気を出してこの先の自分が後悔しないように、少し頑張ってみようと思う。 今日は私が、歩幅は狭くとも、大切な一歩を進んだ日、だ。