苛立ち
「なんなのよ! アイツは!」
イラつくイラつく! こんな気分になったのは覚えがない。
「ど、どうしたんだ? 口に合わなかったかい?」
「美味しいわよ! ちょっと黙ってて!」
「は、はい……」
テラス席がある、飲食店。その辺にいた男を引っ掛けてご飯を食べていた私は、さっきの出来事を思い出して怒りが込み上げてきた。
男共は、私が隣に座ると口を揃えて、何を食べる? 奢りますとしか言わない。これが食べたいと言って、後はニコニコしてるだけでご飯が出てくる。マジ便利。
それに比べてアイツは、これがメニュー表だとか、店員の呼び方はこうするとか。何の時間だったの? あれは。おまけに何? 初対面の人には奢れない? こんなに可愛い私がお願いしてる上に、アンタお金持ってるでしょうが!
私が苛立ちを隠さないでいると、横にいる男はおどおどしている。どうして良いかわからない様子だ。
「デザート」
「え?」
「甘いのが食べたい」
私がそう言うと、男は笑顔になり、
「そ、そうだよね! 怒っているのは似合わないよ、笑顔の君が一番さ!」
男は、一番いいのを注文してくるからちょっと待ってて! と言い店内へ走っていく。アンタ私の何を知ってるのよ、と鼻で嗤ってしまった。……それにしても、ここまで屈辱を受けたのは初めてだ。恐らくアイツは魅了に耐性があるタイプだ。見えないけど。
「私が舐めてかかってれば、いい気になって……みてなさいよ」
次に見つけた時は、全力を出す。全力で、オトす。黄色い声を出していた女共が、悲鳴を上げるのが今から楽しみだわ。
私は、分かりきった勝負に愉悦を感じながら、男が眼の前に持ってきた、大きなパフェに口を付けた。