女子会.2
「にしてもカイルめ。あんなちんちくりんのくせに、益々モテるとはけしからん」
決意を固めていた時、ランクスが不意に呟いた言葉に私は、え? と言ってしまった。
「えっと、カイルさんって、モテるの?」
いんや? とランクスは首を振る。ど、どういうこと?
「アイツは元々モテる要素があったって言う方が正しいかな。この都市にいる人達って、ほとんど成人してるでしょ」
「そう、だね」
「ここに来る男達は、出稼ぎが多いんだよね。独身の男もいるみたいだけど、中年位の年齢層が多くて粗暴なんだって。それに比べれば、独身だけど、カイルの奴ナヨナヨしてるでしょ?」
「そ、そうかなぁ?」
私の中では、優しいし格好良いとも思ってるんだけど……。
「庇護欲? ってのを、年上女子からみたらそそるらしい。でも、二年間ほぼギルドからの支援でなんとか凌いできてた奴に、手を出そうって勇気がある女子はいなかったのよ」
「な、なるほど?」
稼ぎがない時期があったのは、ジェシカさんに聞いていた。ライムちゃんをテイムする以前の二年間だ。よく頑張ったなと思う。その辺りも、私としては凄いと思ってるんだけど。
「ところが今はどう? 称号持ちでお金にも困ってない。それでいて、粗暴になるわけでもなく、以前と一緒でナヨナヨしてる。腕っぷしだって、そこら辺にいる男達より確かだし。最近都市の女子達が眼をギラつかせててね……やんなっちゃう」
「ら、ランクスはどう、なの?」
「ウチ? ウチは……二年前のアイツを知ってるから。今も変わらんとはいえ、ないかなぁ」
両手を上げて首を振るランクス。ランクスはそう言ってるけどそっか、そうなんだ。カイルさんってモテるんだ……。
「アイツ自身、身なりに気をつけてる訳じゃなさそうだから、少しイジれば結構マシになると思うよ? アメルが彼女になって、色々イジってあげたら?」
「な、な、何で私が出てくるの!?」
急に言われて、咄嗟に大きな声を出してしまった。
「あれ? 彼女になる予定はないの?」
口角を上げて、こちらを見上げてくるランクス。
「……分からないっ!」
もうっ! と顔を背けると、ランクスは笑いながらごめんってと言ってくる。
ーーそんなことない! とその時すぐには、言えなかった。
カイルさんは、身元を引き受けてくれた恩人だ。勿論、感謝はしてる。でも、彼女になる、とかそういう事を聞かれると……分からない。今までそんな余裕は無かったから。
私が頭の中でモヤモヤしていると、アメルごめんってー! という言葉で現実に戻される。振り向くと、服を引っ張りながら謝り続けている、涙目のランクスがいた。
「お、怒ってない?」
「怒ってないよ」
「ホントにホント?」
「ホントにホント。ただ」
「た、ただ?」
「……慣れてないから、からかうのは、程々にね?」
私がそう伝えると、ランクスは首をもの凄い勢いで縦に振って、分かった! 気をつける、マジのマジ! と言ってくれた。
強気の彼女と、今みたいな彼女。どちらが本当の彼女なんだろう? どっちのランクスも魅力的だな、と思った。
話している間に、時刻は昼を少し過ぎた位になっている。午後は、ギルドへ招集をかけられている。カイルさんは酒場で食事をした後、ギルドへ向かうと言っていた。私達も、その道順で後を追おうと思う。
「ランクス、ギルドに招集をかけられてるから、段々カイルさんの所に行くね」
「行かなくて良いように、本部へ私が言っておこうか?」
平然と凄いことを言うランクス。権力だけで言えば、普通のギルド職員さんより優遇されているんだと思う。
「ううん。申し出は嬉しいけど、私は冒険者になったばかりだから、色々と経験してみたいの」
そっか、と少し寂しげに言うランクス。
「ランクスさえ良ければ、またお邪魔させてくれると嬉しい、な」
その言葉に、ランクスは破顔して、元気な声を上げた。
「ぜったい! ぜったいだよ!? 後でナシとか、駄目だからね!」
「うん、分かってるよ」
私は立ち上がり、奥にいるフルーラさんに会釈をする。そして、お菓子をほとんど食べてしまったライムちゃんに、行こうと告げる。わかったー! と肩に乗ってきたライムちゃんは、その、結構重かった。
あ、そうそうとランクスが声を掛けてきた。
「カイルは、清楚っぽいのが好みだと思うから、アメルもそういう格好をすれば、あいつなんかイチコロだよ?」
ウィンクをしながら人差し指を立ててきたランクスに、私はどう言っていいか分からず、あ、ありがとうと苦笑しながら館を後にした。
酒場までは、歩いてそう遠くない。館から少し歩いただけで、お店が見えてきた。
酒場に到着し、外から覗くとすぐに見つけることが出来た。カイルさんだ。声を掛けようと店に入ろうとしたが、足が止まってしまう。ライムちゃんが不思議そうにアメルー? と聞いてくる。
ーーカイルさんの隣には、親しげに話しかけている女性が。傍からみても、とても綺麗。
都市の女子達が眼をギラつかせている。カイルは清楚っぽいのが好み。ランクスが言った言葉が、頭を駆け巡る。
「……隣の人は、誰?」
私自身、信じられない位の低い声が出た。