表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/44

女子会

 ウィズテーラスとして、活動を始めて一週間が経った。二、三日は周囲も凄く騒いでいたし、ギルドへ毎回招集からの指名依頼の流れには、カイルさんも困った顔をしていた。


 ともあれ、大分周囲の反応も落ち着いてきたし、活動も安定してきた。頃合いを見て、カイルさんにランクスさんの所へ行きたいとお願いしたら、快く承諾してくれたので、ここへ来ている。


「久しぶりに、来た気がするなぁ」


 ランクスさんのいる館、ボカティオパレス。


 一応、ギルドの方からランクスさんへ通達を出してもらったら、その日のうちに返答が来た。『何時でもいい、その日は一日開けておく』と。


 扉の前には衛兵さんが。私を見ると、こちらへ歩いてきて声を掛けてくれた。


「貴女がもしかして、アメルさん、ですか?」


「は、はい。そうです」


 オーガキラーの一件もあって、カイルさんが主導のパーティー、その一員である私も注目されているのかもしれない。そう思っていると、


「フルーラ様より『ランクス様にとって、大事な方です。アメルさんという、青色の綺麗な髪と瞳をしている女性が来たら通しなさい』と言われています。どうぞ」


「あ、ありがとう、ございます」


 ……自意識過剰でした、ごめんなさい。


 私は恥ずかしくなりながらも、歩みを進める。扉には貸切、と書いてある立て札が。ノックをしてみると、勢いよく扉が開き、中からこじんまりとした女の子が出てきた。ランクスさんだ。眼鏡はしておらず、神官の格好もしていない。私服みたいだ。


「きたきた! 待ってたよ、アメルちゃん! ささ、入って入って!」


「お、お邪魔します」


 笑顔で招いてくれるランクスさんに促されて、館内へと入る。


 あの日、人生を変えてくれた机の上にはーー大量のお菓子が。ところせましと並んでいるお菓子に圧倒されていると、女子会だー! とガッツポーズをして、嬉しさを身体で体現しているランクスさん。そして、私へ向き直り話し掛けてきた。


「アメルちゃん何飲む? なんでもあるよ? なきゃ買ってこさせるし」


 親指を向けた先には、衛兵であり執事もされているフルーラさんが微笑んでいた。会釈をされて、私も慌ててお辞儀をする。


「わ、私は何でも大丈夫です。けど、良かったら、お茶から頂けると」


「よしきた! フルーラ、一番いいやつ持ってきて」


「かしこまりました」


 お気遣いなく、と言う暇もなくフルーラさんは立ち上がり、奥の方へ消えていった。ランクスさんは、そんなことお構い無しに、ここ座って、ここ! と、自身が座った隣の椅子をペシペシ叩いている。私が隣に座ると、ランクスさんは更ににこやかな笑顔を浮かべてくれて、私も釣られて嬉しくなってきた。


「……一応聞いとこうか。ライムって言ったね? アンタはアメルの護衛で来てるんだよね?」


 私の肩にはカイルさんの従魔であるスライム、ライムちゃんが乗っている。一応、と言われてカイルさんが護衛に付けてくれた。


「そーだよー!」


「ならよし。何か食べたいのある?」


「たべたことないやつ!」


「ん。ゆっくり食べるなら、ここにあるの何でも食べていいよ。私達の分は残しておいて」


 わかったー! と言って、ライムちゃんは机へと飛び跳ねた。一つ一つ食べ始めており、あまーい! と身体を揺らしている。可愛い。


「さて! これでゆっくりお話できるね、アメルちゃん!」


「はい、ランクスさんのおかげで、楽しい日々を送れています。ありがとうございます」


「……なんかそれ、固くない?」


「え?」


「前々から気になってたんだけど、アメルちゃん、固い。私達、ほぼ同世代だよ? 敬語、いらないって」


「え、そ、急に、言われても……」


「とりあえず、さ。名前、呼び捨てでいかない? お互いにさ」


 ランクスさんは笑顔でこう言ってくれた。多分、これは自意識過剰ではなく、私と、仲良くしたいと思ってくれてるからこその提案だよね。応えたい、な。


「……分かりました。よろしく、ランクス」


「……っ! うん! よろしくね、アメル!」


 ランクスが、余程嬉しかったのか抱きついてきた。私は温かい気持ちになりながら、ランクスの頭を撫でる。その様子を、奥から戻ってきたフルーラさんが、うんうんと頷きながら眺めていた。



 ーーフルーラさんに淹れてもらったお茶を飲みながら、女子会? は、進む。このお茶、すごく美味しい。


「それにしても、オーガ、ねぇ。よく討伐出来たね。二体も居たんでしょ?」


 ダンジョンでのオーガと対峙した話になり、ランクスは感心しながら、お菓子を頬張っている。私は、緊張感もほとんど無くなって、ありのままでお話できる様になってきていた。


「それこそ、カイルさんやアミカさん。救援のギルド職員さんがいてこそだったよ。私はほとんど何もしていないの」


「でも、アメルが赤いオーガに致命傷を与えたって報告にあったよ? 何したの?」


 そう言われて、私がティアジャールさんの特殊弾を使ったこと、そして、眼について話した。その間、ランクスは百面相みたいな顔になっていた。


「あのおっさん、また危ないもんを。ギルド通してんのかよまったく……ま、それはいいや。私の仕事じゃないし。アメル、眼のチラつきはその頃からなんだよね?」


「うん。集中すると部位が光るの。【射士】のスキルだと思うんだけど、私にはよく分からなくて……」


「ウチがいるじゃん、任せてよ!」


 みせてみ? と言って、ランクスは私を見つめてきた。ちょっと恥ずかしいなと思ったけど、多分、鑑定してくれている。


「……うん。その頃から発現したなら、このスキルだね」


「何か分かったの?」


「誰だと思ってるの? ウチだよ?」


 ランクスは腰に手を当てて、エッヘン! とポーズを取る。可愛い。


「これは、万視、だね。万を視ると書いて万視」


「万視……」


 ピンとこない。視ることに特化してそうな気はするけど……。


「多分、アメルが視える範囲なら、何でも視えると思う。ダンジョンで暗がりもそうだけど、聞いた話だと、めっちゃ遠い所で戦っている人達も視えたんでしょ?」


「うん……それは、あった」


 カイルさんが元いたパーティー、オルサフォルム。そのメンバーが苦戦しているのを、順路沿いではあるが確認できた。距離はーー結構あったと思う。


「アメルの眼で現状分かるのは、暗視と遠距離を見るスコープの役割。それと、弱点が分かる事だね。ウチの知り合いに、視え方は違うけど色々と視えるスキルを持ってる奴がいるんだ。使い方はまるで違うことになるけど、そいつと同等クラスの眼になるとみた」


「え、そ、そう? ……なれたら、いいな」


 ウチが言ってるんだ、自信持てい! とランクスは言ってくれた。


 ーーなれたら、じゃない。ならなくちゃ、いけない。私も強くなって、カイルさん達と一緒に、冒険をするんだ。【射士】スキル、万視。私はこの眼を使いこなそうと誓った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ