クラスメートの目の前にサラマンダーが現れました
翌朝も私は元気いっぱいだった。
日の出と同時に目が覚めて、テントの外で素振りをしていたのだ。
「えい! えい!」
私が素振りする音が朝のしじまに響く。
私はこの朝の誰も起きていない時間に素振りをするのが好きだ。
朝の空気は美味しいし、いつもの屋敷の中庭とは違うので、私の剣は喜んでいた。
今日は学園の訓練だから宝剣ではないし普通の剣だけど……
「お、ユリア早いな」
「お兄様」
離れたテントからお兄様が出てきて私に声をかけてくれた。
お兄様も剣を振り出した。
お兄様のは本当にビュンビュンと剣がうなりを立ててしなうのだ。
「ユリア様」
「早朝から精が出ますね」
その音に気付いて、ダミアンとゲオルクがテントから出てきて、一緒に素振りを始めたのだ。
そして、その音でクラスの男達が次々に出てきて結構大きな音になってしまった。
「お前らな。早くから起きすぎだ」
とブレンダー先生に後で怒られてしまった。
「本当に、朝早くから煩いし、何事かと思ったわよ」
朝食作る時にもマリア等にも文句を言われたんだけど、怒らせると私の食事がなくなるかもしれないので私はおとなしく聞いていたのだ。
そして、朝食が終わるとさっそく、討伐訓練だ。
班ごとに集合してクラス単位で集まる。
五年生から順番にダンジョンの中に入っていった。
お兄様の横にはツェツィーリア様が寄り添うようについている。
「ユリア、気をつけてナ」
お兄様が手を振ってきたので、私も手を振り返した。
「あっ」
その横でツェツィーリア様が石かなんかにけつまずいてよろめくのを
「大丈夫か?」
お兄様が支えていた。
「ありがとうございます。アルトマイアー様」
そう言って微笑むとツェツィーリア様はお兄様にすがりつくように歩き出してくれた。
それを見て私はむっとした。その私の方を得意そうに見てくるのは止めてほしかった。
「いいか、一年生は基本はポーションの原料の薬草採取だ。危険はないと思うが油断はするなよ。何かあったら渡した笛をすぐに吹くように。決してお前らだけで対処しようとはするなよ」
ブレンダー先生が私を見ていってきたんだけど……どういう意味かな?
別に魔物なら私だけでも処理できるわよ!
そう思ったのだが、
「ユリアーナが暴れたら下手したらダンジョンが潰れるかもしれないからな」
とんでもないことをブレンダー先生は言ってくれたんだけど、いくら私でも魔力をダンジョン内で全開で使うなんて事はしないわよ!
私はそう思ったのだが、ブレンダー先生は
「念には念を入れてだ」
そう言って笛を班長の私ではなくて副班長のマリアに渡してくれたんだけど、全然信頼されていないじゃない。まあ、こんなダンジョン壊してもまた作り直せば良いと思っていたけれど……
私は薬草入れ用の大きなザックを持っていた。皆の五倍は入る。いざとなれば全部私のバッグに入れる予定だった。
時間になって私達がダンジョンの入り口に向かうと
「いい、皆、絶対にA組なんかに負けないわよ!」
ピンク頭が叫んでいた。
「そうだ。薬草の量も獲物も絶対に勝つからな」
ボニファーツも気合いを入れていた。
「ふん、俺たちがB組に負けるなんて」
「あり得ないよな」
ダミアンとゲオルクが首を振って否定していた。
「ふんっ、結果はすぐにわかるさ」
「ほえづらかくのはそちらだ」
ボニファーツとゲオルクが今度は睨合ってくれた。
「ゲオルク、行くわよ」
私が声をかける。
「はい。ユリアーナ様」
慌ててゲオルクが駆け寄ってきた。
「ふん。悪役令嬢のユリアーナもここから無事に出てこれたら良いけれど」
ピンク頭がほくそ笑んで不吉なことを言ってくれた。
「ふんっ、そっくりそのまま返してあげるわ。ゴブリンは集団で来るから気をつけるのよ」
そう、ここにはゴブリンも多いのだ。私はわざわざ二人に注意してあげたのに
「他人のことよりも、自分のことを気にしなさいよ」
ピンク頭の言葉の意味を私はよく判っていなかったのだ。
ダンジョンの入り口を潜ると中は巨大な空間が広がっていた。
どういう仕組みか不明だが、上にはどんよりとした曇り空が広がっていた。
今日はこの一階層で薬草を採取するのだ。
既に六年生も含めて五学年が歩いた後だ。魔物なんて碌な魔物が残っているはずはなかった。
そして、クラスごとに行くところは決まっていた。
私は入る前に全員に渡された、薬草がたくさん茂っているとマーカーされているところに向かったのだ。
その場所までは魔物は出てこなかった。
崖の傍の森の中はポーションの薬草がいっぱい茂っていたのだ。
男性陣が見守る中で女性陣が慌てて薬草をサックに詰め始める。
私も一番多そうな所に班の皆で行くと、薬草をザックに詰めだしたのだ。
いつも採取も慣れている私はあっと言う間にザックをいっぱいにしたのだ。
「ギャーーーーー」
その時だ。私はダミアンの悲鳴を聞いたのだ。
「行くわよ」
私は先頭を切ってその悲鳴の所に向かったのだ。
崖の洞窟の入り口に腰を抜かしたダミアンがへたり込んでいた。
そして、その目の前にはなんと今にもダミアンに襲いかかろうとしているサラマンダーがいたのだった。
絶対絶命のダミアン。
続きは今夜です。
お楽しみに








