魔物討伐訓練は貴族にとって移動から大変でした
翌日は魔物討伐訓練の日だった。
私はその夜はとても恥ずかしくてお兄様とも目を合わせられなかった。本当に動揺していたんだけど、一晩寝たら、あれは事故だったと、思うことにしたのだ。
昨夜は食事もあまり進まなくて、お兄様からデザートをもらうのを止めたら、
「明日は大雪だ」
と宣ってくれたフランツお兄様を睨み付けたけれど、今日は快晴だった。
朝のデザートも大切だ。
ということで私は今日もお兄様からデザートを食べさせてもらって、魔物討伐訓練に出陣することにした。
学園集合はいつもの時間の1時間も前だった。
7時半集合は、中々大変だった。
まあ、修学旅行気分の私は朝からバッチリ目が覚めたから問題はなかったけれど、お姉様が遅かったのだ。女の準備には時間がかかるのよとかいつているけれど、私も女なんだけど!
そう言ったら皆、全く無視してくれた。それはないんじゃない?
私は少しむかついた。
でも、なんとか私がギャアギャア言ったお陰で集合時間に間に合った。
今日はグランドにクラスごとに集合するのだ。
私を抱き上げてお兄様は私達のクラスの所に連れて言ってくれた。
「じゃあ、ユリア、気をつけろよ」
お兄様がそう言って私を降ろしてくんれた。
「お兄様もね」
私はそう言って手を振るとお兄様と別れた。
そんな私を遠くから燃えるような憎々しげな視線で睨んでくれているツェツィーリア様がいる事なんて私は気付いていなかった。
「ユリア、今日も愛されているわね」
フィリーネ等にからかわれるんだけど、違うって!
私がいくら言ってもフィリーネ等は聞いてくれなかったけれど……
今日はこれから馬車で5時間くらいかかる郊外のダンジョンに行く。
小さい頃よく行ったダンジョンであまり大物はいないはずだ。
いてもオーガくらいのはずだ。私はほとんど心配していなかった。
魔物討伐訓練は基本は2泊3日の訓練なのだ。私は前世は病弱で修学旅行なんて行ったことがなかったので、とても楽しみにしていた。 6年生の先遣隊は前日から現地に行っているはずなので、今日は後発隊5学年がお兄様等の5年生から順番に出発していく。
ツェツィーリア様も行くんだ。
私は遠くに魔物討伐の為の服装をしたツェツィーリア様を見て驚いた。帝国の皇女殿下は来ないと思っていたのだ。私みたいに日頃からダンジョンに潜っている者は別にして皇女殿下が耐えられるんだろうか?
私は少し心配して上げた。
でも、ツェツィーリア様はお兄様にエスコートされて荷馬車に乗っていたけれど、耐えられるんだろうか?
お兄様達が出発した後はエックお兄様達4年生だ。
そして、最後が私達1年生だった。
馬車は軍の移動で使われる荷馬車だ。この移動が結構大変だった。
馬車が動き出して私は後ろの外の見えるところに陣取った。
街並みが次々に後ろになっていく。私は景色を見るだけで、とても楽しかった。これぞ修学旅行っていう感じだった。
「ねえ、見てみて、町並みから畑に代わったわ」
私はそう言いながらおやつを食べて、見るもの食べるもの全て楽しんだのだ。
「ギャーーーー、お尻が痛い。もうだめ」
「死ぬわ」
でも、他の皆はそんなことは無かったみたいで、ビアンカらは1時間後の休憩の時に既に死んでいた。
「どうしたの皆?」
私は皆が何故苦しんでいるかよく判らなかった。いつもは豪華な馬車に乗っているからこんなスプリングも効かない馬車に乗るのは皆初めてだったらしい。
「まだ4時間もかかるからな。十分休憩しておけよ」
「ええええ! あと4時間も乗るんですか」
ブレンダー先生の言葉にビアンカらは唖然としていた。
「すぐに慣れるわよ」
私が言うと
「ユリアと一緒にしないでよ!」
ビアンカらは悲鳴を上げていた。
やはり貴族の令嬢達には大変だったみたいで、酔って吐いたり、お尻が痛いと言って泣き叫んだり、行きの馬車の中は中々大変だった。
「まあ、1年生は仕方が無いよな」
おえおえ吐き出したビアンカのために馬車を止めて背中を撫でているブレンダー先生はそう話してくれた。
「2年生や3年生になると少しは慣れるみたいだし、1週間前くらいから荷馬車に乗る訓練をしているそうだぞ」
ブレンダー先生が教えてくれたけれど、そういう事はもっと早くに教えて欲しかった。
最も皆で魔物討伐の訓練していたから教えてもらってもそんな暇はなかったけれど……
それは初めて参加したツェツィーリア様達も同じだったみたいで、同行したお兄様達も大変だったらしい。
5時間かけてダンジョンの入り口に着いた時は、ビアンからは息をするのも大変みたいだった。
「仕方が無いわね。食事は私が作って上げようか?」
唯一元気な私が申し出ると
「ちょっと待った。それはまずいだろう」
何故かブレンダー先生が反対しだしたんだけど……どういう意味よ!
「先生、1時間くらい休めばなんとか作れますから」
へばっていたマリアが言ってくれたんだけど。
私も焼くくらいは出来るわよ!
でも、誰も私に料理はさせてくれなかった。
最もマリアの作ってくれた料理は私が野宿で食べる料理の何倍も美味しかったから私は何も言えなかったのだ。
料理を食べたら皆、あっといううたた寝を始めたのだ。
仕方なしに、私が食器を洗う役を買って出ると、帰ってきたら皆寝ていたのだ。
せっかく遊ぼうと思って私はカードゲームを持って来たのに!
仕方が無いから、たき火の周りで騒いでいたダミアン等を捕まえて、カードゲームを興じたのだ。
何故かこの世界に修学旅行の定番の大貧民があったのだ。
「私の勝ちね」
「くっそう、なんでユリアばっかり」
「日頃の行いよ」
「なら絶対に俺が勝つはずなのに」
ボンズ等の声に私は少しむっとして睨み付けた。
ふんっ! 私は誰がなんと言おうと日頃の行いがいいので、圧勝していたのだ。
「おい、そろそろ休めよ」
「はあああい」
ブレンダー先生が見回りに来たので、私達は解散することにした。
テントに入る前に、私は簡易トイレにお手洗いに行ったのだ。
私はその時に森の中に入っていく、人影を見た。
確たる確信はなかったけれど、その人影が帝国のコンラートにとてもよく似ていたのだ。
どこに行くんだろう?
私は不思議に思ったが、お兄様からはあまり動き回るなと言われていたのと私も眠たかったので、そのままテントに帰ったのだった。
さて、次は帝国の罠です。
ユリアはどうなる
続きは明日です。
お楽しみに








