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皇弟の娘視点 私を虚仮にしてくれた公爵家令息の妹を亡き者にする計画を立てました

「何ですって!」

 私はそれを聞いた時に、飲んでいたカップを地面に叩き連れていた。


 ガッシャン!


 大きな音とともにコーヒーカップは砕け散ったのだ。

 私には到底許せることではなかった。


 私はツェツィーリア・ブレーメン、このブレーメン帝国の皇弟の娘で皇女だ。

 その大帝国の娘が高々属国の公爵家の嫡男に申し入れた婚約を拒否されたというのだ。


「それは本当なの、エルマー?」

 私は私につけられた帝国から付いてきた侍従に聞いていた。


「はい。先程お父上から魔術郵便が届き、その旨が記されておりました」

 いつも冷静なエルマーの顔も少しこわばった表情だった。

「公爵家は何と言ってきたの?」

「皇弟殿下の文章によると、この度のお話は公爵家にとっても大変嬉しい事ですが、恐れ多過ぎるのでお断りするとのことだったしと」

 淡々とエルマーは説明してくれた。

「恐れ多すぎて断るってどういう事なの? そのような断り方はないわ!」

 私は声が思わず大きくなっていた。


「やはり、ユリアーナの存在が大きいのでは」

 フローラが横から指摘してくれた。

「あのユリアーナね」

 私は歯ぎしりした。


 本人に注意したのに、ユリアーナはその日もアルトマイアー様に抱き上げられて帰って行ったのだ。

 絶対に皇家から婚約を持ちかけられた本人がするようなことではなかった。

 アルトマイアー様としては私との婚約話を受けるつもりはないと、あの態度で示してくれたんだと思う。


 帝国の皇女の私が、どこの馬の骨とも判らない、属国の公爵家の養女のせいで振られるなど許されることではなかった。


「フローラ、ユリアーナにアルトマイアー様から身を引くようにちゃんと伝えたの?」

 私は怒りの矛先をフローラに向けた。


「はい。ツェツィーリア様の意向は何回もユリアーナには伝えました。聞き分けなさそうなので、聖女様にも協力頂いて、ユリアーナ本人にも色々嫌がらせをしたのですが、本人は鈍感なようでそれほど効果は無かったようです」

 呆れてフローラは報告してくれたが、そうだ。あのユリアーナという女は、元々平民だからか、貴族の常識に疎くて、私がやんわりと釘を刺しても理解できなかったのだ。フローラは私よりはストレートに話したと思うが、それでも通じなかったのだろう。

 それとも、理解できても、自分のアルトマイアー様からの寵愛の深さにあぐらをかいていたのかもしれない。影で私達を笑っている可能性もあった。

 ああ見えて、あの女は学年の主席だった。

 属国の養女に笑われることは私としては許せなかった。


 そもそも、今回の私の留学は私の意向でアルトマイアー様で私の婚約者が良いかどうか確認する為の留学だった。私さえ良ければ普通は属国の公爵家風情、尻尾を振って大喜びで了承するのが当たり前なのだ。それを帝国からの婚約の申し入れを拒否するなんて普通は許されることではなかった。

 というか、帝国の皇女である私の顔に泥を塗ってくれたのだ。許されることではなかった。

 でも、私もうまくいきませんでしたと帰る訳にも行かない。

 そんなことをお父様が許す訳はなかった。



「こうなれば色々と画策するしかありますまい」

 今まで黙って聞いていた帝国の影でお父様からつけられたバルトルトが申し出てくれた。


「どうするというの?」

「公爵家にも我が皇家に逆らったということを思い知らせねばなりません」

「アルトマイアー様に何かするの?」

 帝国の影はやると言ったら何でもやるのだ。私は少し不安になって聞いた。

「いや、いくら属国とはいえ、公爵家の嫡男を亡き者にするのはまずかろうと思われます」

「それはそうね」

 私はほっとした。

「ツェツィーリア様はまだ、アルトマイアーと婚約したいとお考えということで宜しいですな」

 私はバルトルトの問いに頷いた。

 公爵家は元々世話になった家だ。その嫡男のアルトマイアー様と結婚できればそれで良い。


「では、ツェツィーリア様に不愉快な思いをさせて今頃ほくそ笑んでいるあのユリアーナとかいう、聖女様が悪役令嬢とか呼んでいる女に思い知らせる必要がございますな」

 バルトルトは薄い笑いをした。


「しかし、ユリアーナは結構剣術は使えるそうよ」

「ふんっ、アルトマイアーの意向を恐れた周りのものが忖度した結果ですよ。本人は大したことはないはずです」

 バルトルトは断言した。


「でも、カスパルがやられているけれど」

「あれはカスパルが油断したのです。普通はああも簡単にはやられることはありますまい」

 バルトルトは私の指摘に首を振ってくれた。

「でも、どうするの? 今は毎日送り迎えはアルトマイアー様がつきっきりよ」

 私が疑問を呈すると、


「なあに、もうまもなく、魔物討伐訓練がございます。その時にどさくさに紛れて魔物に襲わせればいいのですよ」

「しかし、それでは他にも犠牲が出るのではなくて?」

 私が心配して言うと


「帝国の皇女殿下の行こうに逆らったらから、厄災が襲うのです。多少の犠牲は致し方ありますまい」

バルトルトは首を振ってくれた。


「でも、うまくいくの?」

 私が聞いたら


「お任せ下さい。帝国の恐ろしさを公爵家の面々に思い知らせるいい機会ですからな。ユリアーナさえ、いなくなれば、アルトマイアーもツェツィーリア様との婚約を認めざるを得ないでしょう」

 バルトルトはそう言うと笑ってくれたのだ。


「魔物に襲われるユリアーナが多少は可哀相だけど」

 私が呟くと

「帝国の皇女のツェツィーリア様に恥をかかせたのです。自らの死をもって贖うしかないでしょう」

「そうね。さっさと身を引けば生きて行けたのに、馬鹿な女ね」

 私はそう言うと皆で愚かな女の事を笑ったのだった。

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