お兄様が責任を取って私を娶っても良いと皆の前で宣言してくれました
マリアには
「ユリア、まるであなたが、ヒロインみたいね」
とつい最近、言われた所なんだけど、
「確かに、私は平民出身だし、ピンク頭やフローラやツェツィーリア様に比べれば気が弱くておとなしくて可愛げはあるけど、私がゲームのヒロインなんてあり得ないわ」
そう言ったら、
「あのね。どこの世界に、大人しくて気の弱い人がヒロインの聖女を水魔術で吹っ飛ばす人がいるのよ!」
マリアに呆れられたけど、
「ピンク頭やフローラに比べたら、私は大人しいわよ!」
「はいはい、あなた一から日本語の勉強やり直した方が良いんじゃない?」
と馬鹿にされてしまった。
そのくせ、ここで三人に面と向かって、悪役令嬢3人そろい踏みなんて言葉を言うか?
「まあ、あなた、マリアンネさんね。確かにアグネスさんもフローラも悪役令嬢と言われるような容姿をしているかもしれないけれど、直接本人に言うのは良くないわ」
ツェツィーリア様が返してくれた。
「マリア、ツェツィーリア様を悪役令嬢なんて言うのは不敬よ」
「本当にどう言うことなの?」
三人が三人とも自分がそう呼ばれたとは思ってもいないみたいだった。
図太さは古代竜並みね!
私が後でそう言ったら、
「あなたも含めてね」
マリアに言われてしまった。
「まあそんなことは良いわ」
ツェツィーリア様はマリアの事は無視するみたいだ。
私の方につかつか歩いてきた。
「ユリアーナさん。お父様から、あなたのお父様の公爵様と連絡を取り合っているんだけれど、何か聞いていて?」
いきなり皆の前で話し出したんだけど、そのような含みを持った発言を皆の前で話してもいいのか?
噂大好きな貴族や商家が聞けばすぐに噂になるんじゃないかと私は危惧したが、聞かれた限りは答えた方が良いだろう?
「いいえ、家族からは何も聞いておりません」
「あなたの家族からは何も聞いていないの?」
不満そうにツェツィーリア様は私を見てくれたが、私は大きく頷いたのだ。
確かに最近はお兄様はよくお父様に呼ばれているが、二人からは何も聞いていなかった。
「あなたにはショックかもしれないけれど、私とアルトマイアー様の婚約の話が進んでいるのよ」
ツェツィーリア様は私に教えてくれた。
「そうなのですね」
私は頷いた。お父様に最近お兄様が呼ばれることが多かったから、その事なんだろう。
でも、それを私に今言う必要があるのか?
「何手を休めているの? もっと真剣に振って!」
私は手を止めてこちらを見ている皆に指示した。
「ゆ、ユリアーナさん?」
「あなた皇女殿下が話しかけられているのに、他のことをするなんて不敬よ」
フローラ達が言うんだけど。
「あのう、ツェツィーリア様。私達、今は直前に迫った魔物討伐訓練の準備に忙しいんです。手短にお願いできますか」
私が文句を言うと、
「手短に話せって、あなた何様のつもりなの?」
「フローラ!」
「しかし、ツェツィーリア様」
二人で揉めているんだけど、もう早くして欲しい。
「いいわ。ユリアーナさん。はっきり言うわ。あなた、妹だとしてもアルトマイアー様に近すぎのよ。それにあなた、アルトマイアー様と血の繋がっていない養子なんでしょう」
ツェツィーリア様が話してくれた。
私が養子だろうが実子だろうが、部外者には関係無いんだと思うんだけど……
そもそも我が家に嫁に来ようとしているのならば、もう少し小姑になる私に気を使うのが基本じゃないの? まあ、皇女殿下に不敬になるから言わないけれど。
それに我が家でお兄様に意見できる者はいないんだけど……
「あのう、ツェツィーリア様。私とお兄様が近いとおっしゃいますが、私は自らお兄様に近付いていませんよ」
私は言い訳した。
「うそ、おっしゃい! ユリアーナがアルトマイアー様に抱きついているんでしょ」
ピンク頭が横から言い出してくれたが、
「あなたと一緒にしないでよ。私はあなたみたいに王太子殿下に胸を押しつけていないわよ」
私が反論すると
「それはそうね。あなた胸がないものね」
このピンク頭、私にそこまで喧嘩を売るか? 私は模擬剣を思わずピンク頭に投げつけそうになった。
訓練の名の下にピンク頭をボコボコにしても良いだろうか?
「例え違うとしても、もう少し距離を取った方がいいわ」
ツェツィーリア様が言ってくれるが、
「文句はお兄様に言ってください。私は皆の前では止めてほしいってお兄様に何回も頼んでいるのは周りの皆に聞いてもらったら判ると思います。
それにお兄様が『帝国の魔術師がいつ襲ってくるか判らないからな。ツェッツイが帝国の魔術師をこちらに差し出すまではこの体制は変えん』言っているんです。その点をきっちりとお兄様と話し合って欲しいんですけれど」
私ははっきりと言いきった。
「何ですって、あなたが身を引けばいいんじゃないの?」
フローラがきっとして私を睨み付けてくるんだけど、
「今言いましたよね。お兄様が強引に私を抱き上げてくるから、それが問題ならばツェツィーリア様からお兄様にはっきりと話してくださいと」
「ユリアーナさん。あなたからきちんと話すべきよ」
ツェツィーリア様まで言い出すんだけど、我が家のお山の大将のお兄様が私の言う事なんて聞く訳ないでしょう」
私はむっとした。
「何をしているんだ?」
そこに氷のようなお兄様の声が響いたのだ。
「ユリアは何をしている?」
お兄様は不機嫌そうに私を見た。
「お兄様には報告したわよね。クラスメートを鍛えるって」
私が文句を言うと、
「いや、ユリア」
「私は学年行事をきちんとやりたいの。手抜きは嫌よ」
私はむっとしてお兄様を睨んだ。
「しかし、何もユリアが自らやらなくても良いんじゃ……」
私の膨れた顔を見て、お兄様は諦めたみたいだ。
「判った。1時間だけだぞ」
「それよりもお兄様。ツェツィーリア様がお兄様に文句を言いたいそうよ」
「ゆ、ユリアーナさん」
ツェツィーリア様の取り巻きが私を睨んだが、邪魔された私は機嫌が悪かった。
「何だ、ツェッツイ?」
お兄様が聞いていた。
「いえ、あの、その」
ツェツィーリア様もお姉様と同じで意中の男にははっきりと話せないらしい。
「ツェツィーリア様としては、私とお兄様が近すぎるのは帝国から見ても問題だそうよ」
私ははっきりとお兄様に教えて上げたのだ。
「ツェッツイ、我が兄妹の事に何故帝国が口を挟んでくるんだ?」
心底判らないという顔でお兄様は聞いていた。
婚約の話はお父様のところで止まっているか、面倒くさいと言ってお兄様が聞いていない可能性があった。
「いえ、あのアルトマイアー様。ツェツィーリア様がおっしゃるには、アルトマイアー様もユリアーナ様もお年頃ですから、お二人が近すぎるのは、お二人の婚約者選定に影響を与えるのではないかと心配していらっしゃるのです」
フローラがオブラートに包んで話してくれた。
「我が家族間のことに帝国は関係無いだろう」
お兄様はむっとしてフローラを睨み付けた。
「しかし、アルトマイアー様。それだけ近いとユリアーナ様の婚約にも悪影響が出るのでは」
「最悪、俺がユリアを娶れば問題なかろう」
「えっ?」
私はお兄様の声に固まってしまったんだけど。
「いや、しかし、お二人は御兄妹で」
「別に血は繋がっていないから問題はないだろう」
フローラの声にお兄様は平然と反論してくれたんだけど……
ええええ! お兄様本気なの?
私は真っ赤になって完全に固まってしまったんだけど……
ついにさらりと告白ししてくれたお兄様。
どうするユリア?
続きは明日です。
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