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お兄様と皇女殿下の婚約話が出ているのを知って、お兄様と距離を取ろうと思いました

 マイヤー先生の授業でヘトヘトになった時だ。


 ガラッ

 と大きな音とも教室の扉が開いてピンク頭を先頭に隣のB組の面々が入ってきたのだ。

 そして、彼女らは私めがけて歩いてきた。


「なんだお前らは?」

「隣のクラスの奴らが何しに来た?」

 ゲオルクとダミアン等が私の前に立ってくれた。


「貴様等どけ! 聖女様がそちらのユリアーナに話があるのだ」

「貴様等こそ、公爵家令嬢のユリアーナ様に話しかけるなど100年早いわ」

 王都騎士団長を父に持つボニファーツの言葉にダミアンが言い返した。

「何だと」

「やるのか?」

 ボニファーツとゲオルクが睨合ってくれているんだけど……


「悪役令嬢ユリアーナ! ついに今日こそあなたの年貢の納め時よ」

 後ろからピンク頭がもったいぶって話し出した。

「あなたに帝国の侯爵家令嬢のフローラ様が話があるそうよ」

「何のお話があるの?」

 なんか絶対に碌な話ではないと私は思った。


「それは聞いてのお楽しみよ」

「あっそう、じゃあさようなら」

 私はピンク頭から視線を逸らした。内容を知らない人間と話しても仕方がない。


「ちょっと、何無視しているのよ。フローラ様がユリアーナを呼んで来いっておっしゃられているのよ」

 ピンク頭が怒りだしたんだけど、

「面倒だから行かないわよ」

 私は拒否した。

「はああああ? あなた何言っているの? 帝国はこのハンブルク王国の宗主国なのよ。いくらあなたが公爵令嬢とはいえ、所詮属国の公爵家じゃない、帝国では伯爵クラスでしょう。侯爵令嬢様の言うことが聞けないの?」

 勝ち誇ったようにピンク頭が言ってくれるんだけど……

「何言っているのよ。我がホフマン公爵家は帝国からも侯爵家の称号を得ているわ。すなわちフローラ様と同格よ。話があるのならばそちらからこちらに出向くように言ってもらえる」

 私は言い返したのだ。


「さすが、ユリアーナ様です」

「帝国でも侯爵位をお持ちとは」

 ダミアンとゲオルクが感心してくれるが、私が持っているのではなくてお父様が持っているのだ。


「な、何ですって、あなたそんなこと言って良いと思っているの? フローラ様の後ろにはツェツィーリア様が控えているのよ」

「私もお兄様からは何があるか判らないから絶対に教室を出るなって言われているんですもの。もし、移動しろって言うのならばお兄様連れてきてよね」

 私は反論した。別に私から行っても良いのだが、勝手に動くとまたお兄様が煩いのだ。下手したら私と一緒に授業を聞くと言い出しかねない。そんなことしたらマイヤー先生が怒るのは確実だ。私はこれ以上マイヤー先生のお怒りを買いたくない!


「何だと、ユリアーナ、貴様自分が弱いからって実の兄を頼るのか?」

 ボニファーツがまた訳の判らないことを言い出してくれた。

 別にお兄様からここにいろと命じられていなかったら行くのは全然やぶさかでないのだ。それを知ったお兄様の反応が怖いから動かないだけで。今そう言ったのにこいつは何を聞いているのよ。


「ボニファーツ、別にあなたたちをここから弾き飛ばすのは何も問題なく出来るんですけど……何ならやりましょうか?」

 私は手に魔力を貯めたのだ。


「な、何」

「おい、やばいぞ」

「ユリアーナは本気だ」

 その瞬間、みんなさあああああっと教室から逃げ出したのだ。

「覚えてなさいよ。必ず後悔させてあげるんだから」

 ピンク頭の捨て台詞を残して……



 でも、それだけで終わるわけはなかった。

 次の休み時間だ。

 今度はそのフローラが一団を率いて襲来してきたのだ。


「ユリアーナさん。ずいぶん生意気な口を聖女様に対してきいてくれたそうね」

 フローラはのっけから喧嘩腰だった。

「あなたも聖女を使い走りに使うなんて神をも恐れない蛮行ね」

 私も言い返した。

「あれは聖女様が自らお使いを引き受けて頂けたのよ」

 フローラが訳の判らない言い訳してくれたけれど……

「で、ご用は何ですか?」

 いい加減に面倒になったので私はわざわざ聞いてあげたのだ。


「あなた、いくら妹とはいえ、アルトマイアー様に近すぎるんじゃないの」

 フローラは予想通りのことを言い出してくれた。


「それはお兄様に言って下さい」

 私は言い返した。

「マイヤー先生が言うようにあなたたちは近すぎるのよ。あなたももう少し遠慮しなさいよ」

 フローラは私の反論は無視して言ってくれた。

「私も散々言ってますよ。でも、お兄様が聞いてくれないんでしょ」

「嘘おっしゃい。あなたが喜んで近づいていると聖女様もおっしゃっていらっしゃったわ」

「あのピンク頭、何を言ってくれるのよ」

 私はぷっつん切れたんだけど

「あなた、聖女様のことをピンク頭と呼ぶなんて、あなたの方が余程罰当たりじゃない!」

 フローラが怒りだしたんだけど……

「そもそもあなたの所の魔術師が私を攻撃なんてするから過保護なお兄様が更に過保護になったのよ。責任はそちらにあるでしょ」

 私はフローラをにらみ返したのだ。


「何を言っているのよ! そもそもアルトマイアー様とあなたが近すぎるからでしょ。帝国からは公爵家にはアルトマイアー様とツェツィーリア様の婚約話が出ているのよ。アルトマイアー様から良い返事が頂けないのはあなたが傍にいるからって話だわ」

「えっ?」

 私はフローラの言葉にショックを受けた。


 私には帝国からお父様にお兄様とツェツィーリア様の婚約話が出ているなんて今初めて知った。

 昨日、お兄様がお父様に呼ばれたのもその話だったんだ。

 帝国の皇弟の娘とお兄様が婚約するのは我が公爵家にとってもとてもいいことだ。

 そうすればいくら聖女が出たからと言っても、帝国の皇女様がお姉様の義姉になるのだ。

 お姉様とクラウスの婚約の話も確実になるだろう。

 お父様のお母様の念願が叶うのだ。


 実の妹が原因で兄の婚約話が流れるのは絶対に良くないことだ。

 そうだ。フローラの言うようにお兄様と私は近すぎるのかもしれない。

 この指輪も過保護すぎると思うし……膝の上に乗せての馬車も変だ。

 もう少しお兄様とは距離を取ることにしよう。

 

「ユリアーナさん。アルトマイアー様からは兄離れするのよ。判ったわね!」

そう念押しするとフローラは去って行った。


私はその後ろ姿をうつろな瞳で見送ったのだ。 





お兄様と皇女の婚約の話が出ていることを知って距離を取ることにしたユリアでした。

続きは今夜です。

お楽しみに


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