過保護なお兄様が私を抱き上げて教室に連れて行こうとしたら皇女の取り巻きともめました
翌々朝、私はお兄様達と一緒に学園に行った。
馬車の席は相変わらず、お兄様の膝の上なんだけど……絶対に変!
でも、フランツお兄様とお姉様が間に入れてくれなかったのだ。
ケチ!
私がそう言うと
「仕方ないでしょう」
「そうだ。俺たちの平穏を守るためだ」
なんか二人が訳の判らない理由で私に言い訳してくれた。
絶対に二人が楽したいだけだ。
小さいときならいざ知らず、何故13にもなってお兄様の膝の上に座らないといけないのよ!
馬車が学園に着くと
「キャー」
「エックハルト様!」
「素敵!」
相も変わらずエック兄様の人気は凄い。
「フランツ様」
「こっち向いて」
フランツお兄様も人気がある。
「リーゼロッテ様」
「お待ちしておりました」
お姉様は取り巻きの令嬢達に囲まれてご満悦だった。
そして、お兄様が降りなかった……えっ?
お兄様は私を抱き上げてそのまま馬車を降りてくれたのだ。
「キャーーーーー」
「嘘!」
「アルトマイアー様!」
女達の悲鳴が上がる。
「また、妹と一緒よ」
「信じられない」
「あの妹何なの」
非難ブーブーだった。
男達のブーブー言う声も聞こえるんだけど……
何なのよ!
「ちょっとお兄様。私歩けるから」
私がそういうのに、
「学園とはいえ何があるか判らないからな。教室まで送るぞ」
そう言うとお兄様は片手で私を抱き上げて、そのままずんずん歩き出してくれた。
「アルトマイアー様」
途中で出会ったツェツィーリア様にお兄様は声をかけられた。
「おはよう、ツェッツィ!」
お兄様は帝国の皇女殿下でも、呼び方が友達扱いだ。まあ、幼なじみかもしれないけれど、さすがにまずくないだろうか?
ツェツィーリア様の取り巻き達が白い目でお兄様を見ているんだけど。
「おはようございます」
ツェツィーリア様もこちらを見て変な顔をした。
と言うか私を怪訝そうに見ている。
そう、いくら妹といえども私がお兄様の腕の中にいるのはおかしい。
「お兄様、降りるわよ」
「良いからそのままでいろ」
お兄様は私の言葉を無視してくれた。
「ツェッツィ、また教室で」
お兄様はそう言うと歩き続けようとしたのだ。
「お待ち下さい。アルトマイアー様。ツェツィーリア様が話しかけられたのに、そのまま行くなど失礼ではないですか」
取り巻きのフローラが指摘してきた。
「ん?」
お兄様はそのフローラの言葉に立ち止まった。
「このようなところで立ち話するよりも教室の方が良いと思ったのだが」
お兄様は少し不機嫌そうだ。
「しかし、皇女殿下に話しかけられてその態度はないと思います」
「フローラ嬢。ここはハンブルク王国の王立学園だ。基本、学園内にいる限り皆平等だ」
お兄様は諭すようにフローラに話した。
「それはあくまでも建前でしょう」
「俺たちは基本はそれを忠実に守ろうとしている。いくら帝国の人間とはいえ、郷には入れば郷に従えだ。守る必要があるのではないか」
そう言うとお兄様はそのまま立ち去ろうとした。
「お待ちください。アルトマイアー様」
「何だ、フローラ嬢、まだ何かあるのか?」
不機嫌そうにお兄様はフローラを振り返った。
「いくら妹御とはいえ、ユリアーナさんを抱き上げて移動するのはいかがなものかと思いますが」
私はその言葉に真っ赤になった。そうだ。絶対に変なのだ。
「お兄様、降りるから」
「煩い! 黙れ!」
お兄様の叱責の声がした。
いくら私でもビクッとしてお兄様に反抗するのを止めた。
でも、お兄様は私なんか見ていなかった。
私を抱きかかえたまま、フローラをねめ付けていたのだ。
「そもそも貴様等帝国の魔術師が我が妹ユリアーナを魔術で攻撃するから俺が守っているのだろうが! 貴様等、自分らが悪いという意識はないのか!」
お兄様が激怒していた。
「お兄様、落ち着いて! 私は気にしていないから」
私は慌てて、お兄様の首に抱きついて、お兄様を抑えようとした。
「な……」
その様子を見て更にツェツィーリア様が気を悪くしたみたいだが、ここは強引に抑えないととんでもないことになる。
「何を言っているユリア! 帝国からはまだ正式な謝罪がないのだぞ」
お兄様は激怒していた。
「いや、だから、あんな小物に襲われても私はびくともしませんから」
「そういう問題ではなかろう」
お兄様は許さないみたいだった。
「正式な謝罪と言われましても、一昨日ツェツィーリア様が謝罪されたではないですか」
「何を言っている。正式な謝罪というのは書面でするものだろう」
フローラの言葉にお兄様は反論した。
「書面謝罪するなど、そのような事とはあり得ません」
「ほう、帝国は悪いことをしたのに、謝りもしないのか?」
お兄様の怒りがだんだんアップしているんだけど……
ちょっと待ってよ!
私が止められるのも限度があるんだから
私はとても焦りだした。
「何を騒いでいるのですか?」
そこに怒り顔のマイヤー先生が現れたのだ。
私はこれほどマイヤー先生が現れて良かったと思ったのは初めてだった。
「アルトマイアーさん、それとユリアーナさん、何故、あなたはアルトマイアーさんに抱き上げられているのです。王立学園の生徒が公の場でそのような破廉恥なことをするのは許されません」
マイヤー先生が激怒し始めたんだけど。私は真っ赤になっていた。そうだ、絶対にマイヤー先生はそうとるに違いないのだ。
「マイヤー先生。俺は妹をこうして守っているのです」
お兄様が平然と主張しだしたんだけど、そんなのマイヤー先生に通用するわけは無いじゃ無い!
「別に抱き上げなくてもあなたなら守れるでしょう。と言うか剣術競技で二位のユリアーナさんを守る必要があるのですか?」
マイヤー先生がむかつくことを言いだしたんだけど、私も女だし、別に守ってもらっても良いじゃない!
「マイヤー先生、ユリアーナはこう見えても俺にとっては可愛い妹なんです。それが帝国の魔術師に攻撃されたとあっては過敏になるのは当然ではないですか?」
「はい? 帝国の魔術師がユリアーナさんを攻撃したのですか」
マイヤー先生が慌ててツェツィーリア様をみた。
「いえ、あのその、彼は試しただけで」
「試しただけであのような強大な魔術攻撃をするなど言語道断ではないか? ユリアーナでなければ死んでいたぞ」
お兄様が大げさに話し出した。まあ、確かに私以外ならば死んでいたとは思うけれど、私ではあのような攻撃びくともしないのだ。
「何ですって」
「ユリアーナ様が帝国の魔術師に殺されかけたの?」
「それでアルトマイアー様は怒っているの?」
「それって酷くない」
「アルトマイアー様が激怒するのも当然だわ」
周りの生徒達がざわざわし始めた。皆私達に同情してくれているみたいだった
「ここではなんです。すぐに職員室に来なさい」
マイヤー先生は広場でこれ以上騒ぐのはまずいと思って慌てて指示してくれた。
私はお兄様とツェツィーリア様とその取り巻き達と一緒に職員室に連行されたのだった。
また職員室に連行です。お兄様の記録を破って年間新記録達成するかも……
続きは今夜です








