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入学式の会場にお兄様に連れられて行きました

 そして、入学式の朝がきた。王立学園は6年制で私はその一年生になることになった。お兄様が五年生、エックお兄様が四年生、フランツお兄様が三年生、お姉さまが二年生、そして、私がピカピカの一年生なのだ。


 私は当然、お兄様からもらった金ぴかの髪飾りをつけて入学式に出ることにした。お姉様が相も変わらず、白い目で私を見てきたけれど、お姉様も黒い髪飾りをつければ良いのに!


 大所帯の我が家は朝から準備やなんやかんやで大変だった。

「お兄様は式の準備があるから、早く出るんでしょ?」

「えっ、そうなの?」

 お姉さまの言葉に私は驚いた。今日からせっかくお兄様と一緒に学園に通えると思ったのに、いきなり、一緒に行けないの!

 私はがっかりした。


「いや、お前らと一緒に行くつもりだが」

「良かった!」

 私はほっとしたのだ。


「えっ? だって生徒会長はいろんな準備があるんじゃないの?」

 お姉さまが驚いて聞いていた。

「そんなの他の者がやるだろう」

 お兄様はどこ吹く風だ。


 本来お兄様は、まだ五年生だから生徒会長には早かったんだけど、六年生に侯爵令息しかいなくて、その令息が辞退してくれて、仕方がないから俺がやることになった、とかお兄様が面倒そうに言ってくれた。でも、お兄様を差し置いて、生徒会長なんて出来ないわよ!

 だってお兄様は一年生の時から偉そうで、二年生の時には一緒にいた生徒会長ではなくて、皆がお兄様にペコペコ挨拶していたとか、エックお兄様が面白おかしく話してくれた。ちょっとお兄様は傲岸不遜な所があるのよね。ダンジョン潜っても王太子を顎で使っていたし……

 生徒会でも雑用に使っていそうで怖いんだけど……


 そんな私達は誰がどの馬車に乗るかでもめているんだけど……お姉様もフランツお兄様もエックお兄様までお兄様と一緒の馬車はいやみたい。

 私は別にお兄様と二人だけでも良かったんだけど……


「詰めたら五人で乗れるだろう」

 お兄様の一言で一台の馬車で行く事になった。まあ、学園と我が家は近いから最悪歩いても行けるし……

 お兄様とエックお兄様が奥の席でフランツお兄様とお姉様と私が進行方向と逆の席なんだけど、二人とも少し、ポッチャリしているから、こちらは結構狭かった。


「ちょっと、ユリア、もう少し小さくなりなさいよ」

 お姉様が文句を言ってくれるんだけど、絶対にお姉様が少し太いと思う。

「ええええ! 私は痩せているわよ」

 私がポロリと本当のことを言うと、

「ユリア、どういう意味よ! 私が太っていると言いたいわけ?」

 ムッとして、お姉様が睨み付けてくれるんだけど、これはやばい!


「えっ? いや、そうじゃなくて、太っているのはフランツお兄様かな」

 私は私の左隣に振った。


「な、なんだと! 俺は太っていないぞ!」

 今度はフランツお兄様が叫んでいるんだけど、男だからそこは頷いてよ!

 私はそう思ってフランツお兄様の太ももを軽く叩いたのだ。


「ギャーーーー」

 大げさにフランツお兄様が叫ぶんだけど、大げさすぎ。


「足が足が……」

 足を押さえて涙目なんだけど……変だな。軽くしか叩いていないのに?

「ユリアの軽くは俺にとって思いっきりなんだよ!」

 フランツお兄様が叫んでくれたんだけどんだけど……




「ああ、もう煩い!」

 お兄様はそう叫ぶと私をだきあげて、いきなり、膝の上に置いてくれたんだけど……


「えっ、ちょっと、お兄様!」

 私は真っ赤になった。さすがにこの年でお兄様の膝の上に置かれるのはどうかと思う。


「何を驚いているんだ。昔は呼んでもいないのに俺の膝の上によじ登ってきたじゃないか!」

「子供の時と今じゃ違うでしょ」

 私がお兄様に文句を言うと、

「俺から見たら子供だ」

 その一言に私はとても傷ついたのだ。

「煩いわね。私はもうれっきとした淑女よ!」

 私はそう言うと、お兄様の足を思いっきり叩いたのだ。


「ギャ!」

 お兄様が叫んで足を押さえてくれるんだけど、軽くなのに!

「ユリアはまた力が強くなったんじゃないか?」

「でしょう、兄上」

 お兄様とフランツお兄様が頷き合うんだけど、2人がなんと言おうと私は淑女なのだ。



 そんなこんなであっという間に馬車は王立学園にたどり着いた。

 これ幸いとエックお兄様、フランツお兄様とお姉様はさっさと馬車を降りてくれた。


「ああ、あの馬車はホフマン公爵家の馬車よ」

「じゃあ、アルトマイアー様も乗っていらっしゃるんじゃない?」

 お兄様は私を横に退けて皆の見守る中で降りてくれた。


「「「キャーーーー」」」

「アルトマイアー様!」

「素敵!」

 見目麗しくで運動神経も優れたお兄様は皆の人気の的だった。

 さすが私のお兄様だ。


 そのお兄様が馬車の中の私に手を差し出してくれたんだけど……

 えっ、こんな注目の中で降りるの?

 私は少しすくんだが、

「ほら、さっさとしろ!」

 お兄様が急かした。せっかちなお兄様を待たせると後が煩いのだ。

 私はお兄様の手を取って降り立った。


「えっ、誰? あの子は?」

「王太子殿下の婚約者のリーゼロッテ様?」

「リーゼ様はもう少し背が高いし、胸もあるわよ」

 私はその声に思いっきり転けそうになった。

 お兄様が私の横で笑ってくれた。

 むかついたから私はお兄様の足を思いっきり踏んでやった。

「ギャッ! お前な!」

 お兄様が悲鳴を上げたが胸が無いと言われて笑うお兄様が悪いのだ。


「一番下の子じゃない」

「ああ、あのホフマン家に養子に入った」

「まだお子ちゃまね」

 女どもの嘲笑が聞こえるんだけど。

 私はむっとしたのだが、そんな時だ。


「キャーーーー、アルトマイヤー様!」

ピンク頭の女がこちらに向かって走って来るのが見えた。


「あれは誰なの?」

「あれは聖女様よ」

女達の声に、私がまじまじと女を見た。これが聖女様? うーん、確かに可愛い系みたいだけど、私のイメージにある清廉潔白という言葉は当てはまりそうになかった。ピンク頭の変な女、どっちかというと男にこびへつらう娼婦という感じだった。


「ユリア、行くぞ」

駆けてくる聖女様を無視して、お兄様は講堂の方に私の手を引いて歩きだしたのだ。


「お兄様、良かったの?」

「ん? なにがだ?」

お兄様は本当にピンク頭のことを全く気にしていないみたいだ。


「聖女様がお兄様に用があったみたいだけど?」

「聖女? 俺はあまり教会の事には興味がないからな。人違いだろう」

お兄様は本当にマイペースだった。


そのままお兄様は私をエスコートではなくて手を繋いで連れて行ってくれんだけど……

うーん、何か違うぞ。


「お兄様。手!」

私が握られた手を見て言うと、

「手を離したら、また王宮みたいに迷子になったら大変だろう」

「何年前の話をしているのよ」

昔、王宮にエックお兄様とフランツお兄様、お姉様の三人でお父様と騎士団の訓練に顔を出したお兄様を見に行ったら、美味しい匂いがしてきて私が迷子になった時の事を言ってくれたのだ。私は王宮の厨房に入り込んで料理長からお菓子をもらって、むさぼり食べているところをお兄様達に見つかって、その後皆に怒られたのだ。


 それ以来、「ユリアがいなくなったら食べ物のあるところに行けば問題ないよな」

とフランツお兄様にからかわれる始末だった。

でも、いくらなんでも、入学式に他のところに行ったりはしないわよ!

私はそう主張したけれど、

「お前はどこに行くか判らないからな。父上からも席まできちんと連れて行くようにと言われているんだ」

そう言って保護者よろしく私はお兄様に引っ張って行かれたのだった。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

ピンク頭の聖女も登場しましたが、無視する二人は大物です。


次は入学式です。

怒りのピンク頭の登場か?

明朝です。

お楽しみに!

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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