王宮に皇女様に会いに来てもすぐには会えずに、何故か王太子が来てお兄様と一緒に激高してそのまま皇女様の部屋に行くことになりました
私は怒り狂っているお兄様に連れられて転移したんだけど……
これって絶対に最悪では……
それも会いに行くのがお兄様が愛しく思うツェツィーリア様ってどんな罰ゲームなの?
エックお兄様に拝み倒されたから仕方なしに来たけれど……失敗した。
エックお兄様の強引な頼み聞いたんだから、デザート一年分くらい寄越す約束させれば良かった!
私はめちゃくちゃ後悔した……
それも、お兄様はいきなり王宮の正面入り口に転移してくれた。
「何者だ?」
いきなりの転移者の出現に門番達が飛んできたんだけど……
「「「あ、アルトマイアー様!」」」
門番の人達は、怒り顔で迷彩服姿のお兄様を見てぎょっとしていた。
それも片手に私を抱き上げているのだ。
殴り込みに来た男が可愛い? 女の子を抱き上げているというなんともシュールな展開だ。
誰よ? 可愛い女なんていないって言ったのは?
判っているわよ! 胸のないぺったんな貧相な女の子を抱き上げているという展開だったわ!
本当にむかつく!
「お前ら、良いところに出てきた。ツェッツィの所に案内しろ」
お兄様は門番達に命じていたんだけど、
「あのう、ツェッツィ様とは」
「ツェッツィはツェッツィだ」
「ツェツィーリア様のことです」
仕方がないからお兄様の言葉足らずなところを訂正してあげた。
「帝国の皇女殿下ですか?」
「いきなりの来訪など無理です」
門番達が慌てて止めようとしたが、
「緊急事態だ!」
「しかし」
「今日のところはお引き取りを」
「つべこべ抜かすな!」
怒り狂ったお兄様が一喝した。
門番達は腰を抜かしてその場に尻餅をついていた。
「な、何事だ!」
その後ろから今度は騎士達が飛び出してきた。
「こ、これはアルトマイアー様、こんな時間にいかがされたのですか?」
「非常事態が起こった。帝国の魔術師が暗殺未遂を起したので拘束していたのをツェッツィの使者と申す者が脱獄させたのだ。ツェッツィの真意を確かめに来た」
「あのう、ツェッツィ様とはどなたで?」
「ツェッツィはツェッツィだ」
「ツェツィーリア様です」
私がここでも正式名称を教えてあげた。
「えっ、帝国の皇女殿下ですか?」
騎士達がぎょっとした顔をした。
「そうだ」
「しかし、宗主国の皇女様とこのような時間に面談など、難しいかと」
「何を言っている。脱獄犯の捜査だ。緊急性を有するのだぞ」
「しかし、それは……」
騎士達は困惑した。
今は夕闇の迫る時間でそろそろ食事の時間だ。こんな時間に帝国の皇女様を訪問するのは難しいかもしれない。私はお兄様に諦めてもらおうと思ったが、怒り狂ったお兄様になんて言おう?
私が逡巡したときだ。
「ルードルフ様を呼べ」
騎士の一人がお父様を呼ぼうとしたが、
「先ほどお帰りになりました」
「今回の件は父から俺に任せると言われている。さっさと案内しろ!」
お兄様の怒り声に騎士達が慌てて相談を始めた。
「さっさとしろ!」
イライラしたお兄様がかんしゃくを起こした。
「はっ、判りました。とりあえずここでは何ですので、城の中へ」
私達は本宮の中の応接に案内された。
でも、お兄様は私を抱きかかえたまま、椅子に座ってくれたのだ。
「お兄様降りるから」
私はお兄様の膝の上から降りようとした。
「危険だから俺の膝の上にいろ」
お兄様が言い張るんだけど、
「はい? ここは王宮よ。問題ないわよ」
「しかし……」
「王宮でお兄様の膝の上は絶対に嫌」
「痛い!」
離そうとしないお兄様の膝を叩いて、お兄様が膝を押える間に私は無理矢理お兄様の膝の上から降りて、お兄様の横に腰掛けた。
「お前、更に力が強くなってるんじゃないのか?」
「何か言った?」
「いや、何も」
お兄様が明後日の方向を見てくれた。
「アルトマイアー、どうしたのだ? 帝国の皇女殿下に喧嘩を売りに来たと聞いたのだが」
そこに血相変えたクラウスが飛び込んできんできた。
「喧嘩を売ってきたのは帝国です。実はユリアがいきなり帝国の魔術師の攻撃を受けまして」
「な、何だと! それは本当か、ユリアーナ」
クラウスが慌てて私を見た。
「まあ、撃退しましたけれど」
私が答えると
「そうか、なら良かったが」
ほっとした顔で頷いて、私の左手を見て何故かぎょっとした顔をしたんだけど……失敗した。高価な指輪をそのままつけてきてしまった。まあ、でも、お兄様がせっかく魔力を付与してくれてお守りにしてくれたみたいだし、外すのは良くないのかもしれない。もっとも、私にお守りはあまり必要ないようにも思うんだけど……
普段使いするにしては高価すぎるのかもしれない。
というか、こんな迷彩服で王宮なんてきても良かったんだろうか?
もっとも今は任務中だから仕方が無いわよね。
でも、せめて騎士の正装してくれば良かった。
私は後悔した。
やっぱりこんな格好で皇女殿下に会うのは嫌だ。私はお兄様に帰ろうと提案しようと思ったのだ。
「殿下。良かったではありませんぞ。これから背景を探ろうとしたのに、ツェッツイの使者が来て、犯人を脱獄させたのです」
「何だと、それは犯罪ではないか? ユリアーナを攻撃した犯人を逃がすなど許せん! 直ちに皇女殿下をここに呼べ」
何故かクラウスが激高してくれたんだけど……
「しかし、殿下、帝国の皇女殿下を呼びつけられるのは問題では」
クラウスの横の侍従が言い出した。
「なら、これから訪ねる。お前はすぐに連絡しろ」
「判りました」
侍従も止めてくれたら良いのに、クラウスの勢いに飲まれたみたい。そのまま誰かに指示しているんだけど……
私は帰ろうとお兄様に言う機会を失してしまったのだ。
王宮に殴り込みをかけるお兄様と付き添いのユリア。
金髪碧眼で見目麗しいお兄様が自称胸無しぺったんこの女の子を連れて王宮に殴り込みです。
次は宗主国の皇女殿下のところに殴り込み? です。
今夜をお楽しみに








