ダンジョンでお昼を食べていたらラスボスの水竜に襲われたので、お兄様と二人で退治しました。
本日3話目です
私はお兄様に抱き上げられながら、星空のようなつち蛍の光を堪能したのだ。
「どうだ、満足したか、ユリア?」
お兄様が尋ねてきた。
「うん、思ってた以上にきれいよ。星空の中にいるみたい。お兄様、連れてきてくれてありがとう」
私はお兄様の腕の中でお兄様に感謝の言葉を述べると、お兄様にもう一度抱きついたのだ。
「ユリアが喜んでくれて良かったよ」
お兄様は笑って抱き返してくれた。
「じゃあ、昼飯にするか?」
そう言うとお兄様は私を地面に下ろしてくれた。
今までずっと抱きかかえられていたから、私は少しよろけた。
「大丈夫か、ユリア」
慌ててお兄様が抱き留めてくれた。
「お兄様がずっと抱き上げて連れてきてくれたからよ」
私が少しむっとして言うと、
「これを見せるのには時間があまりなかったからな」
お兄様が言い訳してくれた。
そして、シートの上に私を座らせてくれた。
「あんまり運動していなからおなかは減っていないか?」
お兄様はそう言いつつ、お兄様のデイパックからお弁当の箱を取り出してくれた。
「そうね、少しお腹は空いたかな」
「お前、今日はまだ、ほとんど動いてないじゃないか?」
お兄様が笑ってくれた。
「だって、お兄様が私を抱き上げてここまで連れてくれたからじゃない。私も走るって言ったのに!」
私がムッとして膨れると、
「まあ、そう言うな、時間が無かったからな。さあ、ユリアの好きな鮭のサンドウィッチにしてもらったから」
サンドイッチの入った籠を開けてくれた。
「いつもいつも食べ物では釣られない……ング」
話している私はお兄様にサンドウィッチを口の中に放り込まれた。
「旨いだろう!」
お兄様が笑ってくれた。
「何してくれるのよ!」
「ユリアは本当に……ング!」
ムッとした私は食べ終えるとお兄様の口の中にサンドウィッチを放り込んだのだ。
「ふん、良い気味……ング!」
私は次の瞬間、また、お兄様にサンドウィッチを放り込まれてしまった。
それからは食べ終わるまではお互いにサンドウィッチを食べさせ合う形になってしまった。
「最後の1個だ」
「お兄様どうぞ」
私は珍しくお兄様に譲ったのに、
「いいから食え」
「えっ、いいわよ。お兄様食べてよ」
「じゃあ、半分食うか。先にかじれ」
そう言うとお兄様は最後の1個を私の口元に持って来た。
私は仕方なしにかじったら、その残りをお兄様が豪快に食べてくれたんだけど……
ちょっと待って! これってひょっとしなくても間接キスではないの?
私はふと考えたのだ。
そう思うと私は真っ赤になった。
「どうした? ユリア、辛かったか?」
お兄様がとんちんかんなことを聞いてきた。
なんかこんな事を気にしているのは私だけみたいだ。
まあ、お兄様とは今まで散々食べさせ合いしているから、こんな事も普通にしていたし、あれなんだけど……
まあ、わざわざお兄様に指摘することでも無いかと私は無視することにした。
その時だ。
私は何かが湖水から近付いてくるのを感じた。
「ユリア、湖の主が現れたぞ」
お兄様が注意をしてくれた。
巨大な影が水中をどんどんこちらに向かってくる。
「さて、ではやるか」
お兄様が剣を抜いて立ち上った。
私も持って来た宝剣ムラサメを掴んで立ち上った。
その瞬間だ。
「グオーーーー!」
いきなり湖面が盛り上がってそこから巨大な水竜が現れた。
私達の食べていたサンドウィッチの匂いに惹かれたんだろうか?
我が家のシェフの腕は一流なのだ。その美味しそうな匂いに引きずられてきたのかもしれない。
水竜は私達に向かって大きな口を開けて迫ってきた。
お兄様が巨大な剣を、構えた。
我が公爵家に伝わる宝剣エクスカリバーだ。
宝剣が自らキラリと輝いた。
「喰らえ!」
お兄様が剣を振り下ろした。
バキン!
水竜が纏っていたバリアがその瞬間、弾けた。
「ユリア!」
「任せて!」
私は持ってきたムラサメの鞘を抜いて、飛び上がった。そして、迫り来る水竜の大きな口を身を捻って避ける。
そして、口を躱すと剣を横に一閃した。
「ギャーーーー」
水竜の悲鳴とともに、大きな首が次の瞬間、落ちた。
そのまま、湖面に落ちそうな私を飛んできたお兄様が抱き止めてくれた。
「お兄様!」
「捕まっていろ」
お兄様はそう叫んでくれた。
私がお兄様の首にしがみつく。
お兄様はその場に残ったままだった水竜の体を蹴飛ばすと、その勢いで岸に戻ってくれた。
ドシーン!
ダァーーーーン!
大きな音を立てて、水竜は倒れた。
そして、水しぶきが上がる。
その瞬間、水竜の体が光って消え去る。
そして、今まで水竜のいた所に青い大きな魔石が現れた。
お兄様が手を翳すとその魔石はお兄様めがけて飛んできた。
お兄様が、その魔石を自分のデイバックの中にしまってくれた。
「ユリア、十分にダンジョンは堪能したか?」
お兄様が私の耳元で囁いてくれた。
何かお兄様が近すぎる。私は囁かれて何故か体が熱くなった。
まあ、首に抱きついている私が悪いのかもしれないけれど。
でも、抱きつけって言ったのお兄様だし、お兄様の動きは急だから抱きつけと言われたら、本当に抱きついていないととんでもないことになるのだ。
「ええ」
私もお兄様の耳に囁き返したのだ。
「では帰るか」
「うん」
お兄様は私を左手に抱いたまま、また来た道を駆け始めたのだ。
お兄様はとても速かった。
私はそんなお兄様の首に抱きついているしか出来なかった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ユリアとお兄様でした。
続きは明日です。








