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伯爵家当主の独り言 皇家の後押しを得て、勢力拡大のために子爵家との婚約を勧めることにしました

 俺は焦っていた。

 せっかく、ホフマン公爵をぎゃふんと言わせてやろうとキンメル侯爵家と組んだのに、ホフマン公爵家はびくともしなかった。


 ホフマン公爵の追及を逃れるために俺は教会と組んだ。その結果、ホフマン公爵の追及はなんとか逃れられたが、教会自体は商会にとってうまみのある仕事は少なかったし、その傘下の貴族達は弱小貴族が多かった。しかし、ここは我慢だ。いずれ聖女が王太子の婚約者に成り代わるという話だった。そうなれば教会の力は増して、我が伯爵家の力もそれに付随して強くなるだろう。俺はそう目論んでいたのだ。

 しかし、聖女と王太子殿下との間は進展することはなかった。


 息子からの報告によると聖女と王太子殿下は相思相愛であるものの、ホフマンの下の小娘がその間を邪魔しているのだとか。フルート子爵を取り込むのを横から茶々を入れてきたり、子爵の娘と息子を婚約させようとしたところを強引に遮ったり、本当に邪魔な小娘だ。

 挙げ句の果ては楽しみにしていた競技大会で我が息子をボコボコにしてくれた。

 息子が言うには少し可愛いからといい気になって派閥を作っているのだとか。決勝まで残ったのは公爵家の意向を笠に着て下位貴族を脅したんだとか、本当に性悪女だ。


 王都に商会が進出した勢いで儲けを上乗せして、我がボーケナ伯爵家の財政を安定させて将来への侯爵位への昇爵を画策していたのだが、逆に王都の店を任せたベンノを引き抜かれて、王都の大半の顧客をホフマン公爵の息子が作ったとか言う商会に取られてしまった。

 本当にホフマン公爵家はむかつくことばかりしてくれる。

 歴史は我がボーケナ伯爵家と変わらないのにだ。


 俺は忸怩たる思いでいた。


 それもこれもフルート子爵がうんと言わなかったからだ。その娘が開発したとか言う化粧水を手に入れて王妃様に献上して取り入り、我が伯爵家の影響力を上げようと色々画策していたのに、本当に許せん!

 しかし、子爵家が公爵家の傘下に入ったのなら、中々手出しすることが難しくなってしまった。


 俺は八方塞がりになっていた。

 折角多大な資金を使って王都に進出したのに、顧客を得られず、今までの顧客まで奪われる事になってしまった。大赤字だった。なんとかせねばと気だけがせいて焦っていた。


 そんな時だ。

 宗主国の帝国から皇弟殿下の娘の皇女殿下がこの国の学園に留学してくれたのだ。

 教会が手を回してくれたらしい。


「あなたがこの国で由緒正しいボーケナ伯爵殿ですな」

 教会でお会いした帝国の皇女殿下の側近のコンラート・リーベルト伯爵家令息が俺を見てくれた。

 帝国は宗主国だ。それも相手は皇女殿下の側近、いくら俺がこの国の伯爵家当主とはいえあくまでも属国の伯爵家なので、息子とはいえ位は相手の方が上なのだろう。


「はい。コンラート様。お会いできて光栄です」

 俺は慇懃に礼をしたのだ。

「まあまあ、ボーケナ伯爵殿。私は帝国の伯爵家のものとはいえ、まだ若輩者。伯爵家当主であるボーケナ殿にそこまで丁寧にお話しして頂ける必要もございますまい」

「ボーケナ殿。コンラート殿はこのように気さくな方だ。これからも仲良くすれば良かろう」

 一緒にいたキンメル侯爵がこう言ってくれたので、俺もコンラート殿と呼ばせていただくことになった。

 コンラート殿は兄が帝国の皇太子殿下の側近を務めているとの事で、リーベルト伯爵家は帝国でも重きを置かれているらしい。俺もこの機会にこの伯爵家と仲良くなっておくのも今後の為になろうと思った。


「ホフマン家も困ったものですな。普通は聖女様が現れたら、王家との婚約を辞退するのが筋ですのに、未だにしがみついているとは」

 コンラートはそう言ってくれた。

「そうなのです。本当に困っているのです」

 一緒にいた聖女も困り顔だ。


「本来は帝国の意向を持って命じればすむのですが、皇女殿下が公爵家の嫡男を憎からずお思いなので、中々出来ないのですよ」

「さようでございますか? 皇女殿下が公爵家の嫡男に思いを寄せておられるのか」

 コンラートの言葉にキンメル侯爵が驚いていた。その声には落胆がありありと浮かんでいた。


 もし皇女殿下とアルトハイマーがくっつけば更に公爵家の力が強くなるではないか?

 俺としてはそれは避けたかった。


「まあ、そう心配召されるな。もし皇女殿下と公爵家の嫡男が結びつけば帝国の方から公爵家に働きかけて、王太子殿下の婚約者の地位を聖女様にお譲りするようにするつもりです」

「まあ、本当ですの」

 聖女は途端に嬉しそうに微笑んでくれた。

「一国の中で一つの公爵家の力が強くなりすぎるのは帝国としても看過できませぬ。それに聖女様のお力はハンブルク王家にとっても必要なものと我らも思っておりますから」

 そういう風に横にいた陰気な男が言ってくれた。

「あなた様は?」

 俺は思わず聞いていた。

「これは申し遅れました。帝国の皇族にお仕えするバルトルトと申します」

 男が挨拶してきた。

 皇族に仕えているということは側近か何かか……後でキンメル侯爵に聞くと、帝国で皇族のために動いている側近の一人では無いかと言うことだった。下手したら帝国の影かもしれない。

 帝国の陰は帝国を裏から支える組織でありとあらゆる所に居て、皇帝陛下の為に働く者をいうそうだ。その行動は暗殺業務も含めて多岐に及ぶとか噂されていた。

そんな男がここにいるということはコンラートの監視役兼補佐を兼ねているのだろう。


「それと貴殿の嫡男とフルート子爵令嬢の婚約の話ですが、伯爵家が今でも望んでおられるのでしたら帝国としても後押しするつもりです」

 バルトルトはそう言ってくれた。

「化粧水は皇女殿下もお気に入りで、出来れば公爵家が一つの家で独占するのではなくて、伯爵家がそれを売り出しても良いと思いますから」

 コンラートが横から補足してくれた。

 帝国の皇族の後ろ盾で、なおかつ、フルート子爵の化粧水が我が家で扱えるようになれば今の状況も変わるような気がした。


「良かったではないか、ボーケナ伯爵、皇家の後ろ盾があれば問題はないと思うぞ」

 キンメル侯爵も言ってくれた。

「そうですな。早速、もう一度フルート子爵に接触して見ましょう」

俺は頷いた。

「まあ、多少は強引なことをしても、後は皇室が責任を持って対処いたしますから」

男は笑って言ってくれた。それは強引に推し進めても皇家が後押ししてくれるということなのだろうか?

俺は大船に乗ったつもりで話を進めることにしたのだ。




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