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お兄様視点 妹を蔑ろにした帝国の伯爵令息を叱責しました

 その後のお茶会は俺はツェッツイと適当に昔話に話を咲かせて、時間を潰した。


 聖女と一緒に怒られた後、ユリアはクラスメートの輪の中に入っていた。

 クラスの面々には男の奴らもいたが、そこではユリアはどうやら剣術の強さで崇拝されているようで、跪きそうな男達が数人いた。帝国からの留学生も早速配下に加えたらしい。さすが我が妹と褒め称えたい気分でもあるが、男は男だ。

 そういう男達にも俺の姿を見せておく必要があろう。


 俺はユリアの元に向かった。


「ユリア、そろそろ帰ろうか?」

 俺は囲まれたユリアに声をかけたのだ。


「お兄様。今日は私はビアンカに送ってもらうわ」

 ユリアは俺の方も見ずに断ってくれたのだ。


 えっ?

 俺は一瞬聞き違えたかと思った。


 再度ユリアを見ると、俺の方を見もしてくれなかった。

 何か怒っているようだ。

 俺は何かしでかしただろうか?


「アルトマイアー様、ユリアーナ様は私が責任を持って公爵家の邸宅にお送りいたしますわ」

 ユリアの女友達がそう言ってくれた。

「そ、そうか、ビアンカ嬢、なら、よろしく頼む」

 俺はそう言うしか出来なかった。




 帰りの馬車のに中で俺は自分で言うのもなんだが、とても不機嫌だった。

 俺の膝の上にいるはずのユリアがいなかった。まあ、それが原因の全てなのだが……ユリアは俺の方を見ることもなく帰るのを拒否してきた。


 一体俺が何をしたというのか?

 このモヤモヤした気分はなんだ?


 こうなれば家に帰ってエックとフランツに稽古でもつけてやるしかない。

 公爵家の騎士の奴らも最近鈍っている奴が多くなった。

 全員まとめて訓練させるのもいいだろう。


 俺がそう決意した時だ。


 俺の前ではリーゼもまたとても不機嫌そうにしていた。


「どうした。リーゼ? 今日はまた聖女がえらくクラウスに絡んでいたぞ」

 俺はやり場のない怒りをリーゼに向けてみた。


「はああああ! そもそもお兄様とユリアが食べさせ合いなんてするから、聖女がそれに調子に乗ってクラウス様にしていたんでしょ!」

 ユリアは怒りをこちらに向けてきた。


「なら、お前が阻止して、クラウスと一緒に食べさせ合いをすれば良かっただろう?」

「マイヤー先生の前でそんなこと出来る訳ないでしょ」

「じゃあ、それをした聖女をマイヤー先生に叱ってもらえば良かったじゃないか」

 俺がそう主張したら、リーゼはまじまじと俺を見てくれた。


「お兄様がツェツィーリア様に食べさせなんてするから、そのマイヤー先生が壊れてしまったんでしょ。お陰でユリアも使い物にならなくなるわ、聖女も好きかってしてくれるわ、最悪だったんだから」

「はああああ? ツェッツイは俺の幼なじみで、昔から食べさせなんて普通にしていただろうが!」

 俺はとんちんかんなことを言うリーゼに言い返していた。


「そう思っていあるのはお兄様だけでしょう。ツェツィーリア様は誰がどう見ても帝国の皇女殿下じゃない。そのお方に食べさせなんてするなんて下手したら不敬罪で処刑よ」

「そうか? 俺としてはツェッツイが女と言われても未だにピンとこないんだが」


「さすが兄上。あのツェツィーリア様相手に未だに男扱いするなんて……」

「まあ、兄上にとって女はユリアだけだからな」

 俺の前でフランツとエックが好き勝手に言ってくれるが、


「いや一応、リーゼも女だとみているぞ」

 俺は気分を害しかねないリーゼに言っておいた。


「はあ、それはありがとうございますね」

 リーゼは全然嬉しくなさそうに頷いてくれただけだった。



 ユリアは夕食の時も帰ってこなかった。何でもビアンカ嬢の家に泊まるんだとか……そんなことは初めてだった。


「うううう、ゆるせん!」

 バキッ

 俺が思わず机を叩いたら、半分に折れてしまなった。


 ガンガラガッシャン


 大きな音とともに食器が下に落ちる。

 フランツは器用なもので、全ての食器を手に持って落ちるのを防いでいた。


「まあ、兄上、ユリアも大きくなったのです。友達のところに泊まるくらい普通でしょう」

 エックが俺をなだめようとしてくれたが、

「ユリアは怒ると根に持つからね。しばらく帰ってこないかも」

 フランツがとんでもないことを言ってくれた。

「フランツ!」

 エックがフランツを叱責していたが、


「確か、ヒース伯爵家には兄がいたな。その兄がユリアを狙わないとも限らない」

 俺は手のフォークを握りしめた。

 バキバキとフォークが折れた。


「いや、兄上、例えヒース家の兄に襲われたたところでユリアには勝てないから」

 フランツが適当なことを言ってくれたが、

「そんなの判らないではないか。媚薬か何かもられたらどうするんだ!」

 俺は立上がったのだ。


「どこへ行くの?」

「ヒース家に行ってユリアを連れて戻ってくる」

「兄上、落ち着いてください。ここは大人の対応で」

「これが落ち着けるか」

 俺は何が何でもヒース家に行こうとしたが、ユリアの侍女のニーナがユリアの元に行くとのことで、ニックとリーゼと侍従等に強引に阻止させられたのだ。

「ここは兄上としてどんと構えていただかないと」

「兄上、ユリアが子供な分、大人の対応をしないと嫌われますよ」

「そうよ。兄上。取り乱すなんて兄上らしくないわよ」

 三人に言われ続けたのだ。

 仕方が無い。俺は我慢したが、心配で心配でたまらなかった。



 翌朝だ。俺はいつも準備に時間のかかるリーゼを急かしていつもより早めに学園に行くことにした。

 早く行ってユリアの無事な姿を見ないと心が安まらなかった。


 学園に着くと、聖女とクラウスがユリアの魔術で水で流されているところだった。


 リーゼとエックが頭を抱えているが、俺はもっとやれとユリアを応援したくなった。

 ユリアは何も変わっておらず、俺はほっとした。


 でも、そこにツェッツイが出て来るのが見えた。

 俺は慌てて馬車を降りたのだ。


「でも、ユリアーナさん。それならなおさら、クラウス殿下が婚約者を蔑ろにしていると窘めるのは婚約者のリーゼロッテさんのお仕事で、あなたが魔術を使うのは間違っていると思うわ」

 ツェッツイの正論が聞こえた。ツェッツイは帝国の皇女だからか昔から正論をひけらかすくせがあった。


「殿下。そもそも、婚約者がいる王太子殿下に対して大きな胸をすり寄せるなんて破廉恥なことをするアグネスさんが悪いと私は思うのですが、帝国ではこのようなことが許されているのですか?」

 それに対してユリアがこれまた正論で言い返していた。

 いや、これは嫌みだろう。

 誰に似たんだか……


「なんだと小娘。言うに事欠いて貴様ツェツィーリア様に説教するつもりか」

 ツェッツイの後ろからは口うるさい伯爵家の令息が出てきた。

「誰が小娘なのよ! 側近風情が横からしゃしゃり出てくるんじゃないわよ」

 しかし、ユリアは喧嘩を正面から買っていた。

「なんだと、貴様やるのか」

「上等じゃない。いつでも、やってやるわよ」

 でも、この伯爵令息、ユリアに負けた後でマイヤーに言いつけそうだ。下手に帝国にチクられるとユリアがまたマイヤーに怒られる。

 ユリアがまた、後でマイヤーに叱られるのは可哀相だろう。


「何をしているのだ!」

 俺はユリアのために出ていった。


「お兄様!」

「アルトマイアー様!」

「大したことではないわ」

 ツェッツィも大げさにはしたくないみたいだ。


「何でもないのならば良いが、しかし、我が国の王太子とその王太子に抱きついているゴキブリ女がずぶ濡れだが」

「ご、ゴキブリ女!」

 聖女が怒りで顔を赤くしていたが、ユリアにやられてもやられても復活してくる女などゴキブリと呼んでも良かろう。


「どのみちユリアがしでかしたのだろう」

 俺はユリアを温かい視線で見た。

「ツェッツィも足が少し濡れたのではないか。申し訳ないことをしたな。これで拭いてくれ」

 俺は一応、ハンカチを差し出して皇女の機嫌をとったのだ。ユリアが後で帝国から文句を言われたら嫌だった。


「ユリア、お前もツェッツィに謝れ」

 俺はユリアがマイヤーに怒られないために言ってやったのだ。


「えっ?」

ユリアはとても驚いた顔をした。我慢するのも一時の方便だ。俺は大人の対応を取らないとユリアに見捨てられると言われていたから、ユリアに対して大人の対応をしたつもりだった。そもそもこれはユリアがマイヤーに怒られないようにするための行動だった。


 でも、俺の親切も

「嫌よ!」

 ユリアは反抗期なのか即座に否定してくれたのだ。

 俺が折角助け船を出してやったのに、なんなんだ!


 その上、ユリアはそう叫ぶと駆け出して行ってしまったのだ。

 俺は追いかけていきたかったが、ここは残されたツェッツイの印象を良くしておいた方がいいだろう。


「妹がすまないな。ツェッツイ!」

俺はユリアのために謝ってやったのだ。


「本当ですよ。あの女はツェツィーリア様に説教しようとしたのですよ」

「コンラート!」

ツェッツイは慌てて側近を注意したが、

「俺がツェッツイに謝ったのだ。側近風情が口出してくるな!」

俺は切れてその側近風情に叱責していた。


帝国の伯爵令息風情がユリアを批判するな!

俺の威圧を受けてその伯爵令息は真っ青になっていた。



「クラウス!」

機嫌の悪かった俺はついでに王太子を呼び捨てにしていた。


「はい!」

クラウスが慌てて俺の前に来た。

「お前らもだ」

俺は後ろの側近達を見回した。


「次にそのゴキブリ女がクラウスにしがみついていたところを見つけたら、俺は陛下と教会に厳重に抗議するつもりだ。次はない。判ったな!」

俺はクラウスらを見て注意した。

「「「判りました」」」

側近達は直立不動で返事してくれた。


俺はユリアがこの時泣いていたとは思ってもいなかったのだ。







ここまで読んで頂いてありがとうございます。

あくまでユリア大切なお兄様でした。

でも、それが本人には伝わっていない……


次はユリア視点に戻ります。

お楽しみに!

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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