お兄様視点 反抗するユリアに無理矢理デザートを食べさせました
俺がユリアの世話を喜々としていた時だ。
エックが昔我が家で預かっていた帝国のツェッツイが留学してくると教えてくれた。
その時は俺は野山を駆けまわっている子供だった。
ダンジョンにもあまりもぐっていなかったし、ツェッツイには悪いことをした。
まあ、ツェッツイはユリアに比べたら体力も無くて、すぐにダウンしていたし……
今度は出来たらツェッツイもダンジョンに連れて行ってやるか!
俺はそう楽しみに思ったのだ。
わいわい言い合っているうちに馬車は学園に着いた。
俺は最後にユリアを抱いて下ろした。
そのユリアが可愛くて、見てくる男達を必死に威圧していた。
そんな中、銀髪の女が近付いてきたが、俺は威圧するのに忙しくて眼中になかった。
「アルトマイアー様、お久しぶりですね」
その銀髪の女が俺に挨拶してきたんだけど、
「お前は誰だ? 俺は知らないが」
俺の記憶には無かった。銀髪の女は母とユリア以外は知らなかった。
「えっ?」
女は驚いてみたいだ。
「お兄様。先程エックお兄様が言われていたツェッツィ様じゃ無いの?」
「はああああ? 何を言っているんだ、ユリア、ツェッツィは男だぞ」
俺はユリアに反論した。そう、俺は本当にツェッツィを男だと思い込んでいたのだ。
「えっ?」
女は更に固まっていた。
「エックお兄様!」
ユリアがエックを呼んで、俺はエックからこの女がツェッツイだと聞いて本当に驚いた。
「いやあ、その時はズボンはいていたし、やたら顔が可愛い男だなと思ってはいたんだが……そういえばツェッツィの面影があるな」
俺はそう言って笑ったが、女は固まったままだった。
「兄上。ツェツィーリア様と同じクラスですよね。このままでは何ですからツェツィーリア様を教室まで連れて行くしか無いですよ」
「えっ、何故俺が?」
「だって、兄上は同じクラスじゃ無いですか? 俺達には兄上の教室に連れて行って自分のクラスに帰る時間が無いです」
「でも、俺は女を抱いて運んだ事なんて無いんだけどな」
俺は愛しのユリアしか抱いた事は無いのだ。
そう言ったのに、何故かユリアが少しむっとしていた。
「やむを得まい!」
俺はそう言うとツェツィーリア様を荷物のように抱え上げると一目散に駆け出したのだ。
俺はユリア以外をお姫様抱っこなんてするつもりはなかったから、仕方が無かった。
ツェッツイはその後ショックからは立ち直ったみたいで、少し話をしてきた。
俺も男だと間違えていた手前無碍には出来なかった。
周りの者達が
「キャーーーー」
「アルトマイアー様が女の人と話しているわ」
「妹以外と話しているのを初めて見たわ」
色々と煩かったが、ツェッツイは女と言うよりは幼なじみなのだ。
別に話しても何も問題はなかった。
放課後もツェッツイから話しかけてきた。
昔のいたずらについてだ。良く二人でいろんないたずらをしては父らを困らせたものだ。
「でも、あの時は本当に驚いたわ。本当にびっくりしたんだから」
「いやいや、あれは絶対にツェッツィが悪かったって!」
「そんなことないわよ。アルトマイアーが余計な事をやるからよ」
思ったよりも昔話に花が咲いた。そう言えば俺は疲れて動かなくなったツェッツイをよく今日のように荷物見たいに運んで家に連れて帰っていたことを思い出していた。
「何を覗いているんだ?」
廊下からツェッツイの側近の声が聞こえた。
「ん? 誰か来たのか?」
そう言えば今日は夜間訓練の日だった。
俺はツェッツイと別れると馬車に戻ったのだ。
俺が馬車に戻るとユリアは何故か俺をぎょっした顔で見ると、慌てて今まで座っていた俺の席を空けてフランツとリーゼの間に飛び込んだのだ。
「ユリア、どうしたんだ?」
俺は驚いて聞いた。ユリアに避けられるなんて思いもしなかったのだ。
「別に」
ユリアは首を振るばかりだった。
「いつも俺の膝の上にいるのにおかしいじゃないか?」
俺が文句を言うと
「今までが異常だったのよ」
「はああああ! 何でだ? そんなわけないだろう?」
俺はユリアに避けられてとてもショックだったのだ。頭の中が大混乱していた。
「ユリア!」
俺は強引にユリアを掴もうとして
パシン!
俺はユリアにその手を叩かれていたのだ。
「えっ?」
まさか、俺がユリアに拒否されるなんて……そんな馬鹿な……
俺はショックのあまり固まってしまった。
そんな、ユリアに拒否されるなんて……今までそんなことはなかったのに!
「何でだ、ユリア、素直にこちらに来い!」
「絶対に嫌!」
ユリアは俺を拒絶したのだ。
「ユリア!」
俺はショックのあまり頭が真っ白になってしまった。
「まあまあ、兄上、落ち着いて!」
「しかし、エック」
「兄上、ここは男として我慢するところです」
俺はエックに窘められたが、理解できなかった。
何がいけなかったんだ?
調子に乗って食べさせすぎたからだろうか?
俺はショックのあまり呆然としていたのだ。
夕食時ユリアは俺の隣に座ってはいた。でも、俺の方を見ようともせずに、
「ピーちゃん、はい、あーん」
ユリアはペットのピー助に食べさせていたのだ。
「ピーーーー」
むかつくことにピー助は俺を自慢げに見ると喜んで食べてくれたのだ。
「ピーちゃん可愛い!」
ユリアの喜ぶ声が聞こえた。
俺は我慢できなかった。横からユリアの差し出したスプーンに食らいついたのだ。
「ピーーーーーーーー」
ピー助が怒ってきたが
「ガォーー」
俺は威圧で返したのだ。
「ちょっと、お兄様、何、ピーちゃんのご飯取っているのよ!」
ユリアが怒ってきたが、
「ふんっ、何を言っている。ユリアから食べさせてもらうのは俺だけの特権だ」
「はああああ! 私、お兄様に食べさせなんてさせたことないわよね」
「いや、子供の時に食べさせてもらったことはあるぞ」
「いつの話をしているのよ」
「ユリアに食べさせていいのは俺だけだし、ユリアが食べさせていいのは俺だけだ」
俺は自分の意見をはっきりと言ったのだ。
「何言っているのよ、お兄様。そんな規則はないわよ」
「それならデザートをやらないぞ」
「何よ。それ、別に要らないわよ」
えっ、ユリアが食べ物で釣られないなんて……
「何、一生涯のデザートだぞ?」
俺はここぞと一生涯と言うところを強調した。絶対にユリアを離すつもりは無かった。
「別にいいもの」
でも、ユリアはそんなことを言い出してくれたのだ。
「フランツお兄様。デザート」
更にはフランツからデザートを食べさせられようとしてくれたのだ。
俺はフランツを睨み付けた。
「いや、ユリア、絶対に無理」
「フランツお兄様。私にそんなこと言っていいの?」
「昨日、朝の鍛錬の時間に……」
「わああああ、待った、ユリア、それだけは」
「じゃあ、ああん、んぐ!」
ユリアの口の中に俺は山盛りのケーキを口の中に突っ込んだのだ。
「ングングング」
絶対にユリアを手放すなんて事はしない。
俺はユリアが文句を言う暇も無いほどそのままユリアに食べさせ続けたのだった。








