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お兄様視点 可愛い妹が出来ました

 俺の名はアルトマイアー・ホフマン。ホフマン公爵家の嫡男だ。


 ホフマン家は武の一族。

 俺は物心ついた時から父達から厳しい訓練を受けさせられていた。

 三歳の時に挑戦したホフマン公爵家の試練の間では、巨大なサラマンダーが現れた。

 俺は一瞬ぎょっとした。

 サラマンダーは強力で持っていた剣はあっと言う間に弾き飛ばされていた。

 そんなとこにサラマンダーは突進してきたのだ。


 殺される! 

 そう思った時に俺の体の底から湧き上がってくるものがあった。

 それが魔力だとは俺には判らなかったが、それをサラマンダーに叩きつけたのだ。


ドシーン


 次の瞬間大きなサラマンダーが倒れたのだ。

 試練の間に入ってきた父や家臣達は歓喜していたが、俺は正直倒せてほっとしていた。



 俺に優しかった母は俺が四歳の時に流行病にかかって亡くなった。

 これは無骨な俺にもショックだった。

 父もショックだったみたいで俺たちの前では気丈夫に振る舞っていたが、それ以来仕事に邁進することになってあまり家にいなくなった。


 そんな父が3年後に女の子を連れてきた時には皆は唖然とした。

 すわ隠し子かと皆思ったのだ。


「アルト、預かったあの子だが、母さんの友人だった人の娘だ。母さんが昔からとても気にしていたんだ。その人も亡くなったから我が家で娘として預かることにした。お前が少し面倒を見てくれないか?」

 父が娘として育てると言うからにはそれなりの理由があるのだろう。

 俺は黙って父に頷いた。


 その子は母と同じ銀髪のきれいな女の子だった。

 俺はどこかその子に母の面影を見たのかもしれない。


「名前はユリアと呼んで良いか?」

 俺はその子に話しかけてみた。

 その子はこくりと頷いてくれたのだ。

 俺は母がよく読んでくれた白馬の騎士が王女を守る絵本を読んであげたのだ。


「この騎士様お兄様そっくり」

 その子はにこりと笑って言ってくれた。

 俺はその笑顔がとても可愛いと思ってしまったのだ。


 俺はどちらかというと気難しい方で兄弟達は中々俺になつくということはなかったのだが、ユリアだけはなついてくれた。


 よく俺の膝の上によく登ってきて

「お兄様。この御本を読んで」

 とせがんできた。


 妹のリーゼは女なんだから剣なんて持ちたくないと全く寄り付きもしなかったのに、ユリアは訓練場で訓練している時にいつも見に来てくれたのだ。


「お兄様凄い!」

 と目を輝かせて応援してくれた。


 俺はとても嬉しかった。


「ユリアも少し剣を持ってみるか?」

「えっ、良いの?」

ユリアはこわごわ剣を握ってくれた。


「振ってみて」

 俺はあまりにも嬉しくてユリアに振らせたのだ。


 それはたまたまかもしれない。

 ユリアが剣を振った時、ビューーーーと訓練場の中を突風が吹き抜けたのだ。


 俺たちは唖然とした。


 ユリアは俺の素振りをいつも懸命に見ていたからか、素振りも堂々としていた。

 俺は嬉しくなってユリアも一緒に訓練させるようにしたのだ。


「いや、さすがにそれはまずいでしょう」

下のエックが難色を示した。

「さすがに公爵様に確認した方が」

俺の護衛騎士のギルベルトも反対してきたが、

「なあに、資格がないのならば試練の間には入れないから」

だから行くだけ行ってみよう。


俺は領地に帰ったついでに公爵家にある近くのダンジョンに早朝から馬車を飛ばして行ったのだ。

その地でユリアを試練の間に連れて行くと、なんとユリアは中に入れたのだ。

「ユリア頑張って!」

俺は今ならば絶対にユリアにそんなことはさせないのに、その時は何故か、ユリアを試練の間に残してしまったのだ。

ご先祖様がそうさせたのかもしれない。


ドカーーーーン

凄まじい爆発音がした。


「ユリア!」

俺はその時に初めてユリアにとんでもないことをさせたと青くなったのだ。

中に入るとユリアは倒れていた。

俺は無我夢中だった。

「ユリア!」

俺はユリアを思いっきり抱きしめたのだ。

「ユリア、ユリア!」

俺がユリアを揺すると

「兄上、ユリアは気絶しているだけだよ」

冷静なエックが教えてくれた。

「でも、ユリアが」

ユリアの顔は青白く服は汚れていたし、体は傷だらけだった。

直ちに治療師にユリアの傷を治させた。命には全然問題はないらしいと聞いて俺はほっとしたのだが、


「それよりも兄上の足を咥えているこれはなんなの?」

足下を見るとユリアの横に金色の小さい生き物がいた。

そいつは俺の靴に噛み付いているんだけど。

「なんだこれは」

俺が睨み付けるとそいつもにらみ返してきた。

「兄上、これは竜の子供だと思うけれど……」

フランツが教えてくれた。

「はああああ? これが竜か?」

俺には信じられなかった。見た目は俺に反抗的な態度を取っていること以外はどう見てもペットだ。


「ちょっと可愛すぎるような気がするけれど、図鑑で見た子竜に似ているよ」

「凄いですね。ユリアーナ様は子竜を退治されたのですね」

ギルベルトが感心して言ってくれた。


俺の時は巨大なサラマンダーだったのに、ユリアの時はこんな可愛い子竜か?

俺は神と言うか、その試練の間を作った先祖のとてつもない贔屓を感じたが、まあ、ユリアは可愛いから仕方がない。

それも倒していないが、どうやら、この子竜はユリアに忠誠を誓っているらしい。


「竜は帝国の守り神ですからな。連れ帰っても問題はありますまい」

ギルベルトの言葉に従って連れ帰ったのだ。



帰ってからが大変だった。

急遽飛んで領地に帰ってきた父からはげんこつで殴られて吹っ飛ばされたし、その日の訓練は俺達には過酷過ぎた。

フランツなんて3日間も倒れていたし……ギルベルトもボコボコにされていた。


「まあ、父上。これでユリアも領民に公爵家の子供として認められたから良いでしょう」

エックはいけしゃあしゃあと父に言ってさらに酷い訓練を受けさせられていたが……


「なんとユリアーナ様はあの小さい体で、公爵家の試練をくぐり抜けられたとは」

「女性では初めてではないですか」

「将来は凄まじい豪傑になられますな」

それまで塩対応とは言わないまでもどことなく分け隔てのある態度だった館の使用人や領民達は、試練の間で子竜を倒したというかペットにしたと言うことで、180度態度を変えたのだ。

それからは誰一人ユリアを公爵様の隠し子だとか平民の子供と蔑むものはいなくなったのだ。


何しろユリアは歴代のホフマン公爵家の子供達が乗り越えてきた試練を乗り越えて騎士になったのだから。

ユリアが完全に公爵家の一員と認められた瞬間だった。


ここまで読んでいただいてありがとうございます。

お兄様視点でした。

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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