帝国皇女に兄が食べさせているのを見てショックを受けました
「ちょっと、ユリアーナ! あなた何してくれるのよ! せっかくか私がクラウス様に食べさせようとしたのに!」
ピンク頭が怒ってきたんだけど、
「……」
私は口の中に西瓜が詰まっていて言い返せなかった。
慌ててお姉様に叱責して欲しいと振り返ると、
「……」
お姉様も何故か赤くなって言い返してくれないんだけど……
本当にクラウスを前にしたらお姉様は役立たずになるんだけど、こんなので未来の王妃様をやっていけるんだろうか?
私は仕方なしに、クラウスを睨み付けた。
「えっ、いや、ユリアーナ。俺は別にアグネスから食べさせられようとした訳ではないぞ」
必死にクラウスは言い訳してくれたけれど、
「今でも、食べさせられようとしていましたよね」
やっと飲み込んだ私は両陛下の前だったので、一応敬語で問い詰めたのだ。
「いや、それはアグネスが無理矢理口に入れようとして」
「まあ、クラウス様。喜んで食べようとなさっていたではありませんか?」
「やっぱり」
私はアグネスの言葉にじろりとクラウスを睨み付けたんだけど。
クラウスは青くなっていた。
「まあまあ、皆さん。聖女様の触れられた食事には全て聖魔術が込められていて尊いのです」
横からホイットニーがしゃしゃり出て来て、訳のわからない説を唱えだしてくれたんだけど、
「何をおっしゃっていらっしゃるんですか、ホイットニー様? アグネスさんの触ったものが全て聖魔術が宿るのならば1年B組の教室はとっくに聖域と化しているはずですよね」
私はホイットニーに言ってやったのだ。
「せ、聖域ですか」
ホイットニーが冷や汗を流していた。
「だって聖女様がずっと存在していらっしゃるんですから。それに聖書にはどこにもそのような言葉は載っていませんよ」
私はホイットニーに反論した。
「そんなことはありませんぞ。この王国の危機に瀕した時に聖女様が現れて世界を浄化したとあります」
ホイットニーは建国神話を持ち出してくれたが、
「それは聖魔術を発動された時ですよね。普通に生活している時に聖魔術を垂れ流しているとはどこにも書かれていませんよね」
「ちょっとユリアーナ。あなた聖書を端から端まで読んだ訳ないでしょ。大司教代理のホイットニーに勝手な事を言わないで欲しいわ」
アグネスが怒って言ってきたけれど、
「何言っているのよ。私は聖書は端から端まで読んだわよ。あなた聖女のくせに読んでいないの?」
私はそう指摘してやったのだ。
「えっ、いや、それは……」
ピンク頭はしどろもどろになるんだけど、こいつ本当に聖女なんだろうか?
教会は聖女に聖書すら読ませていないのか?
私が軽蔑しきった目で見下した時だ。
「ちょっと貴方たち、帝国のお方もいらっしゃるんですから、少し静かになさい」
ギャー、マイヤー先生が出てきた!
これ以上はまずい……
「でも、先生、婚約者のいる男性に食べさせするなんて許されないと思います!」
私がそう主張すると、
「婚約者がいようがいまいが王家のお茶会で食べさせするなんて許される訳はないでしょう。そういう意味ではユリアーナさんもアグネスさんと同罪です」
「えっ!」
私はそのマイヤー先生の言葉に固まってしまった。
そういえば食べさせは礼儀作法ではあり得ないことだと私は思い出した。
これはまたお説教コースか……
「本当に帝国からいらっしゃっている皇女殿下の前で何をしているんですか? 2人とも」
やばい、マイヤー先生がお説教モードになってきた。
お父様! なんとかしてよ!
私は陛下の後ろで頭を抱えているお父様に合図したのに全く無視してくれた。
教会のホイットニーなんてマイヤー先生が出てきた途端に、何故か瞬時に遠くに逃げて行ってしまって見当たらないんだけど……
「まあまあ、マイヤー、今日は歓迎のお茶会だ。そこまで厳しく言うこともあるまい。ユリアーナもアグネスも反省していることだし」
陛下が助け船を出してくれた。
さすが陛下。こういう時はお父様よりも頼りになる。
その時、私は何気にお兄様の方を見た時だ。
「ツェッツィ、これはうまいぞ」
お兄様がそう言ってツェツィーリア様の口の中に西瓜をフォークに刺して運んでいたのだ。
「えっ?」
私は目が点になった。
「先生、皇女殿下もアルトマイアー様に食べさせられていますけれど」
言わなくてもいいのに、ピンク頭が言ってくれた。
マイヤー先生もそれを見て唖然として口を開けていた。
私はマイヤー先生が絶句するところを初めて見た。
でも、私はそれどころではなかった。
お兄様が食べさせていた……それも私以外に!
今まで10年弱お兄様と一緒に生活してきたけれど、お兄様が食べ物を私以外の女に食べさせるのを見たことはなかった。
初めてだ。
お兄様が他の女の人に食べさせていたのは……
私はそれから後のことをよく覚えていなかった。
唖然として皆が2人を見ていたのをかすかに覚えているくらいで……
私は何故かとてもショックを受けていた。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
お兄様とツェツィーリア様の関係はどうなる?
ユリアは?
続きは明日です。
お楽しみに!








