帝国からの騎士志望の留学生が対戦を希望したので一瞬で叩きのめしました
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「遅いぞ!」
ブレンダー先生に教室に入る手前で怒られた。
「すみません!」
やばかった!
ギリギリホームルームの前に間に合ったみたいだ。
私はその横にマイヤー先生がいなくてほっとした。
でも、お兄様は間に合ったんだろうか?
まあ、走っていたから大丈夫だと思うけれど……でも、帝国の皇女様を丸太みたいに担ぐってどうなんだろう?
そして、先生の横に黒髪の男の子を見たんだけど、こんな学期の真ん中に転校生なんだろうか?
「皆おはよう」
「おはようございます」
元気な一年生の声がする。ホームルームは私を筆頭にみんな元気だ。
「今日は帝国からの転校生を紹介する」
やっぱり転校生だった。それも帝国からってことはあの皇女様に付いてきたって事だ。今日の事を突っ込まれたらまずいから、取りあえず親しくなるのは止めようと私は心に決めたのだ。
「私の名前はゲオルク・バインリヒ。帝国の伯爵家の者で、今まで帝国の学院の中等部に通っていた。此度の皇弟殿下のお嬢様のツェツィーリア様と一緒に留学することになってこの地に来た」
皆を睥睨して言い渡してくれたんだけど、中々度胸のある奴だ。
私はそんな奴が嫌いではない。まあ、親しくなりたいとは思わないけれど……
それに帝国の学院はこの大陸の最高峰で、貴族でもなかなか入学は出来ないと聞いていた。そこに入れるくらいだから、勉強は相当できるはずだ。
「凄い、帝国の皇女殿下が留学してきたんだ」
「私、朝、見たわ。とてもきれいな人だった」
「えっ、そうなの?」
皆、特に女の子はこんな生意気な男は無視して、皇女の噂でざわざわした。
そのきれいな人なら私も見たわ。お兄様に男と思われていたみたいだけど……こんなことは外交問題になるから言えないけど。
「何を言ってるのよ、アルトマイアー様が男と勘違いしてたってもう相当な噂になってるわよ。帝国の皇女殿下も可哀想だって」
後でマリアに教えてもらったんだけど、
「それってとても不味いんじゃないの?」
私が心配してそう言うと、
「当然大変だと思うわ」
マリアは他人事だった。
それを指摘すると、
「一番大変なのはあなたよ」
「えっ、私なの? お兄様でなくて?」
私には良く判らなかった。
「当たり前でしょ! アルトマイアー様は皇女殿下が話しかけたのに、貴方の方しか見ていなくて、全く相手にしなかったって話じゃない」
「いや、私じゃなくて回りの男たちを威圧していたのよ」
「それって、元々貴方のせいでしょ」
「何故私なのよ!」
「貴方に近寄ろうとする男達を尽く排除しているそうよ。アルトマイアー様は」
「えっ、そうなの? 本当にお兄様は過保護なんだから」
私が呆れてそう言うと、なんか、残念なものを見るような目でマリアは私を見てくれたんだけど……なんでだろう?
「ということで皆も仲良くして欲しい。席は一番後ろの席だな」
先生の指示でその子が座るのが見えた。
男は周りを我関せずで無視して席に着いてくれた。
その男は早速、授業でその片鱗を見せてくれた。数学の先生が当てた中学の三角形の証明問題を易々と解いてくれたのだ。私も負けられなかった。次の二等辺三角形の証明問題を楽々と解いて見せたのだ。
「ほう」
ゲオルクは少しは私に興味を持ってくれたみたいだ。
次の時間は帝国の公用語の帝国語だ。ゲオルクは楽々と問題を解いてくれた。帝国自体は我が国と同じ大陸公用語を話している。帝国公用語は教会がある聖公国の公用語なのだ。大陸公用語が広まる以前の古語だそうで結構難しい。今のブレーメン帝国の前の前帝国の言葉だったそうだ。だから、出来なくても、今は修道女とかにならない限り問題はないのだけど。私も当然出来た。何しろ私はこの学年の首席なのだ。ポット出の留学生なんかに負けるわけにはいかなかった。
先生から指摘されたところを完璧に訳してあげたのだ。
そして四限目は嫌な剣術授業だった。フリッツを弾き飛ばしてから、更には剣術競技で二位になってからはもっと、フリッツは私に素振りをさせるのだ。まあ、素振りは基本の基本だから、問題はないのだけれど……私もたまには剣を思いっきり振り回して大立ち回りをやってみたいんだけど……
けが人が出るから絶対に止めるようにとエックお兄様やお父様から止められているから、やるつもりはないけれど……
そんな中でさすが帝国の男は違った。
ゲオルクは最初にフリッツに注文したのだ。
「私は帝国の騎士志望です。できれば強いやつと対戦したい」
騎士志望と言うだけあって言うことも勇ましかった。
「なんだと、生意気な、俺がまず貴様を地面にひれ伏せさせてやるわ!」
ダミアンが真っ先に名乗り出た。
でかい口を叩くのは良いんだけど、もっと訓練してからの方が良いのではないか?
「ギャーーーー」
私の危惧した通りダミアンは一瞬でゲオルクに弾き飛ばされて自分が地面に這いつくばっていた。
ダミアンでさえ一瞬だった。他の奴では勝てないだろう。クラスの面々が伸されるのは待つまでもなかった。
「なんだ。ハンブルクの奴らはもっと強いと聞いていたけど、全然大したことはないな」
ゲオルクはほざいてくれたのだ。
男達は反論しようにも、全員ダウンしていたし……本当に頼りにならない。
「先生、仕方がないから稽古をつけてください」
道場破りする勢いでゲオルクは申し出てくれた。これではフリッツが地面に這いつくばるのも時間の問題だ。まあ、私としてはフリッツはムカつくから倒されても問題ないけれど、さすがにハンブルク王国の騎士がなっていないと言われたら、相手をするしかなかった。
おそらくお父様も許してくれるはずだ。
「先生、私がやりましょうか?」
青くなった先生に、代わって私が申し出て上げた。
「はああああ! ハンブルクは人がいないから女まで剣術をさせるのか?」
ゲオルクは呆れて私を見下してくれるんだけど……
「ふん、そういうことは私に勝ってから言ってほしいわね」
私は平然と、剣を構えてあげた。
「ふんっ、生意気な。ここは剣術訓練場だぞ。女子供がお遊びで来るところではないんだ」
「口のききかたも知らないガキに言われたくないわ」
「な、なんだと、小娘、俺様相手に大きな口をきいたことを後悔させてやるわ」
「いや、あのユリアーナさん」
必死に止めようとしたフリッツを無視して、私達は向かい合ったのだ。
「後で吠え面をかいても知らないからな」
「それは私が言うことよ」
「ここには忖度してくれるお前の兄もいないんだぞ。本気で行くからな」
「グチグチ口だけでかい男ね。さっさと来なさいよ」
私が剣を構えた時だ。
「よくそこまで言ってくれた。喰らえ!」
怒り狂ったのか、ゲオルクは思いっきり上段から撃ち込んでくれた。
カキンッ!
私はそれを軽く受ける。
「少しはやるわね」
「ふんっ、まだまだ準備運動だ」
そう言うと、そこから、次々にゲオルクは撃ち込んでくれた。
私は次々に剣を受ける。
「くっそう!」
ゲオルクは必死に打ち込んできたが、私に全然届かない。既に大量の汗をかいていた。それに息も上がっていた。
「おい、何をしているゲオルク、さっさとユリアーナを倒してしまえ! ああ、駄目だ。全然力が足りていないぞ。ユリアーナは全然息も乱れていないじゃないか。帝国の騎士志望と言っても女相手に全く相手になっていないじゃないか」
その後ろからフリッツがブツブツフリッツがゲオルクにダメ出しをしてくれているが、はっきり言って煩いのよ。
そんなにブツブツ言うなら、自分がゲオルクの相手していれば良いでしょ。
私はフリッツにも切れてしまった。
私は少し動いた。そして、ゲオルクとフリッツが一直線に並んだ時だ。
「タアーーーー」
一瞬で加速するとゲオルクを鎧ごと横薙ぎに剣で薙ぎ払ったのだ。
「ギャッ」
そのまま一直線にゲオルクは吹っ飛んでフリッツを巻き込んで壁に叩きつけられていた。
ダシーーーーン
訓練場の壁が大きく振動したのだ。
後には気を失った帝国の騎士志望の男と我が国の顔だけ騎士が2人揃ってのびていたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
続きはできる限り早く書こうと思います








