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帝国皇弟の娘視点 幼なじみに男と思われていたのを知ってショックを受けました

 私はハンブルク王国に七歳の時以来10年ぶりに帰ってきた。当時はホフマン公爵家の領地にいたので、王都自体にはほとんど来たことが無かったけれど、人通りも多く馬車の行き交いも盛んで、辺境の属国にしては栄えている方だと思った。

 私は学園に通っている間はハンブルク王国の王宮に部屋を借りて生活することになった。


 早速歓迎の夜会が開かれるのかとも思ったのだが、カルラによるとそのようなものは開かれないと聞いて驚いた。

「なんでも、学園を卒業するまでは学生は学業優先だそうで、十八歳で卒業するまでは学園であるもの以外は基本的に夜会の参加は禁止されているそうです」

「まあ、そうなの? 属国って遅れているのね」

 私は素直な感想を言ったのだ。


「まあ、お嬢様。お子様の健康な生活を送るのに、夜遅くまでやっている夜会は良くないですからね。帝国本国よりも健全かも知れませんよ」

 カーラは教えてくれた。


 確かに、夜遅くまで夜会に参加していれば疲れるし、子供には良くないのかもしれない。

 しかし、それではアルトマイアーには中々会えないではないか。せっかく留学する予定よりも1週間も早めに来たのに、それでは意味がない。


「どうされますか、お嬢様。早めに学園に通われますか?」

「そうね。早めに行ってアルトマイアー様を驚かせてみましょう」


 私はその日は早めに学園に行って馬車溜まりでアルトマイアーを待っていたのだ。

 でも、中々アルトマイアーはやって来なかった。


 やっとやって来た公爵家の馬車からはバラバラと子供達が降りてきた。でもその中に夢にまで見たアルトマイアーはいなかった。

 そして、最後にそのアルトマイアーが小さな女の子を抱き上げて下ろしているのが見えた。

「えっ?」

 私は唖然とした。


 誰だ? あの子は? リーゼだろうか?

 違う。リーゼは茶髪だったはずだ。

 その子は私と同じ銀髪だ。それもとてもきれいな。

 おかしい。銀髪は帝国の皇族の象徴なのに!

 めったに他家には出ないはずだ。


 まあ、同じ馬車で出てきたと言うことはこの子はホフマン家の子供のはずだ。ホフマン公爵家は由緒ある家柄で、帝国の公爵家から嫁入りしたこともあるはずだから、その子供に銀髪が出てもおかしくはなかったけれど、でも、私よりきれいな銀髪の子がいるなんて信じられなかった。

 それも、どう見てもアルトマイアーが溺愛しているんだけど……


 どういう事なの?

 そんなことお父様からは聞いていなかった。


 でも、私は帝国の皇弟の娘。こんなどこの馬の骨とも判らない娘に負ける訳には行かない。

 私は決意するとアルトマイアー目がけて歩き出したのだ。

 その子は私を見ると驚いたように私を見つめてくれた。

 私の身に纏っている威厳と美しさに圧倒されたみたいだ。

 ふんっ、そうよ。私は帝国の皇弟の娘よ。属国のどこの馬の骨とも判らない娘とはものが違うのよ。

 でも、私はその娘は当然の如く無視してアルトマイアーに向き合ったのだ。


「アルトマイアー様、お久しぶりですね」

 私はその娘を牽制するために、アルトマイアーと顔見知りだと強調したのだ。

 その時になってやっとアルトマイアーは私のことを見てくれた。


「お前は誰だ? 俺は知らないが」

「えっ?」

 私は驚いた。やはり年月が経ちすぎていたのだ。

 そうか、私が美人になりすぎて判らなかったのかもしれない。当時は身分を隠すためにできる限り地味な格好をしていたし。


「お兄様。先程エックお兄様が言われていたツェツィーリア様じゃないの?」

 むかつくその子の方が私が誰か判ったみたいだ。


「はああああ? 何を言っているんだ、ユリア、ツェッツィは男だぞ」

「えっ?」

 私はその言葉の意味がわからなかった。確かに当時私はアルトマイアーからツェッツィと呼ばれていた。

 確かに周りを走り回るために乗馬服は着ていた。でも、男? 

 私が男に見えていたというの?

 そんな馬鹿な! 初恋の相手に自分が男だとみられていたというの?


 私の思考が完全に固まってしまった瞬間だった。


「これはこれは帝国の銀の薔薇と呼ばれているツェツィーリア様。お久しぶりです。ホフマン公爵家の次男エックハルトです」

 アルトハイマーの弟が挨拶していたけれど、私は本当にそれどころではなかった。


 初恋のアルトマイアーが私を男だとみていたと知ったショックの方が大きかったのだ。私はもう何も考えられなかったし、死にたかった。


 しかし、そこに予鈴の鐘が鳴り響いたのだ。

 なんとかせねば。私がそうかろうじて思いついた時だ。

 私の視界が反転した。


 なんと私はアルトマイアーに抱き上げられていたのだ。


 嘘ーーーー


 恋しく思っていたアルトマイアーに抱き上げられたのだ。

 私は頭の中がパニックになった。

 なんか、夢にまで見たお姫様抱っこではないが、それでも異性にこれだけ深く触れられたことなどなかった。確かにカルラが言うようにアルトマイアーはとてもがっしりとした体つきをしていた。

 それも、私を抱えて飛ぶように走ってくれるんだけど。

 私は目が回りそうだった。


「アルトマイアーさん。何をしているのですか?」

 教室の入り口では黒縁眼鏡の先生と一緒に留学してきたコンラート・リーベルトやフローラ・マンハイムも唖然として私達を見て立っていた。


「いやあ、遅れそうになったもので」

 私を下ろしながらアルトマイアーは言い訳していた。


 私は昔を思い出していた。昔もよくこんな事があった。よく私が力つきて倒れるとこうやってアルトマイアーが家まで運んでくれたのだ。


 黒縁眼鏡の先生はぎろりとアルトマイアーを睨み付けると

「さっさと席に着きなさい」

 と命じていた。

「ツェツィーリア様大丈夫ですか?」

 フローラがそう聞いてくれて、慌てて乱れた私の髪を軽く整えてくれた。


「大丈夫よ。少し驚いただけ」

「帝国の皇女殿下になんてことをするのでしょう」

「アルトマイアー様は昔からああだから、良いのよ」

 私は少し落ち着いて怒るフローラを窘めた。


「しかし、子供の頃とは違いますよ」

 フローラはブツブツ文句を言ってくれたが、私はアルトマイアーが昔と変わっていないことを知って少しほっとしたのだ。


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

ここからは帝国の皇女とお兄様中心に話は進んでいきます。

ユリアとの関係はどうなるのか?

お楽しみに!


更新ですが、3日間ほど鈴鹿の山を縦走しているので、更新が不定期になります。ご了承ください。

最低でも1日1更新頑張ります。


続きが気になる方はブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾




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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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