魔物学者視点 史上最強の古代竜にたてついた聖女は古代竜に咆哮されて失禁してしまいました
今日2話目です。
私はフラーケン、我がハンブルク王国出身の生物学者だ。
我がハンブルク王国は巨大なブレーメン帝国にある20ある属国の一つだ。
人口は1000万人を超えるので属国の中では一番大きい部類に入る。
帝国本国自体が人口3千万しかないので、大きいと言えば大きい。帝国はこの大陸の大半を支配しており、総人口は属国も含めて1億強いた。
私はこのハンブルクの学園を首席で卒業して、帝国本国にある大学という所で、生物学を専攻した。
私の専門は魔物で、特に竜を研究していた。ただ、竜はダンジョンや大陸でも高原にしかいずに、中々本物に出会える機会は無かった。それでも、書物や実物を見に方々を旅したのだ。そして、多くの竜種のいる魔の森で5年間、研究もした。母校の大学でも教鞭をとりもした。
そんな私が、母の様態の悪化で母国の生物学の教授になってもどってきたのは50を過ぎてからだった。
母は喜んでくれたが、ハンブルクには竜の住む場所はあまりなく、私は少し気を落としていた。
そんな私に、私のゼミに入ってきたフランツ・ホフマンが竜の子供がペットとして公爵家にいると教えてくれたのだ。
私は最初は信じられなかった。
そもそも竜種は警戒心が強くて中々人間に慣れるということはしないのだ。
ペットにするなんてとんでもない。若い生徒が周りに誇示するための眉唾物だと思った。
しかし、ホフマン公爵家に出入りしていた教師達も見たことがあると教えてくれたのだ。
私は慌ててフランツに連れてきて欲しいと頼んだのだ。見れるならば実物を見たい。
でも、中々フランツは連れてきてくれなかった。
何でも、一番下のユリアーナのペットなのだそうだ。
一番上の剣士として有名なアルトマイアーのペットならまだ知らず、女のそれも一番下の妹のペットで竜を飼っているなど信じられなかった。
ところがその妹が剣術競技で第2位になったのだ。それほど強いならば竜を従えているのもおかしくないかもしれない。
私は思い直してそのユリアーナに連れてきてくれるように頼んだ。
「ピーちゃん。フラーケン先生に挨拶して」
「ピッ」
ユリアーナは子竜を抱いて連れてきてくれたのだ。
「えっ」
授業の前に連れてきた竜を見て私は目が点になった。
恐ろしい竜ではなくて、見た目は本当に可愛いペットだった。
私は間違えたと思ってしまった。
しかし、鋭い手足の爪は確かに竜、それも最強の古代竜の物だ。
色も金色だった。金の古代竜は竜の中でも頂点に立つ竜だった。
そんな地上最強の竜がユリアーナの言うことを聞いて、犬のようにお手をしたり、お座りをしたりするのだ。私は呆然とするしか無かった。
子供の時から飼っているから、私に慣れてしまったのかもしれないとユリアーナはいうが、いやいやいやいや、竜は特に古代竜は絶対に人に慣れないのだ。
それが世界の常識だった。
それを易々と手なずけているユリアーナの方が私には化け物に見えた。
まあ、見た目は本当に可愛い十二歳の女の子なのだが……
私はユリアーナに抱いてもらって傍で見させてもらった。
女の子達は抱かせてもらったと言っていたが、私からしたら子竜といえども人間など一瞬でぼろ布のように切り裂けるのだ。そんな危険なことは出来なかった。
しかし、本当にその子竜は大人しかった。
でも、金色の羽毛は室内灯の光の中でも燦然と輝いていたし、そのつばさもとても美しかった。
その牙はこんな小さくても人間の喉笛など一瞬でかみ砕いてしまうだろうと思えるほど鋭かった。
「なんか竜がペットになるなど信じられませんな」
何故か、聴講生として教会のホイットニー大司教代理がいた。
「本当に私も信じられません」
私はそのホイットニーの言葉に頷いた。
「先生。ユリアーナさんは、何か別の魔物を改造して古代竜と言い張っているんじゃ無いですか」
聖女がいきなり叫び出した。
その言葉に古代竜がむっとして睨み付けていた。
これは良くないだろう。こんな子竜でも人を殺そうと思えば簡単にできるはずだ。
「アグネスさん。信じられないかも知れませんが、ユリアーナさんが抱いておられるのは古代竜で間違いありません。昔遠くから私が見たことがありますが、そっくり同じです」
「でも、こんなに大人しいなんておかしくないですか?」
なおも聖女は反論してきた。
「それは私もそう思いますが、ユリアーナさんの薫陶が行き渡っているのでしょう」
私は話題を変えようとした。
「でも、絶対におかしいです。ユリアーナさんが薬付けにして静かにさせているんじゃ無いですか」
「ちょっとアグネスさん。何を根拠にそんなことを言うの」
「ピーーーー」
ユリアーナが少し怒って、それに便乗して古代竜も唸ってくれた。
「先生、私、ユリアーナさんから邪悪な物を感じます。ユリアーナさんは絶対に闇魔術を使って竜を大人しくさせているんです」
なおも聖女が言い立てるのだが、
「何と、聖女様それは誠でございますか。闇魔術を使うとは言語道断ですな」
ホイットニーがそれに便乗してはやし立ててくれた。
こいつらは馬鹿なのか。こんなところで古代竜が暴れてくれたら学園が壊滅するぞ。
私が危惧した時だ。
「何言っているのよ。私は何もしていないわ」
ユリアーナが反論しても聖女は聞かなかった。
「元に戻れ!」
聖女が自らの聖魔術を子竜にかけようとした。
信じられなかった。古代竜に魔術をかけるなど完全に敵対行為だ。
横のホイットニーは何故止めない!
私が慌てた時だ。
「ガォーーーー」
目の前に一瞬巨大竜が現れたのだ。
「ギャーーーー」
聖女の声が講堂に中に響き渡ったのだ。
「ピーちゃん。静かにしなさい」
ユリアーナの声がして、ポカリと音がした。
「ピー」
後にはユリアーナの腕の中で頭を涙目で押さえて鳴いている古代竜と、恐怖のあまり失禁でもしたのか、水たまりの中に呆然としているへたり込んでいる聖女がいたのだった。
皆唖然としていたが、ユリアーナだけは平然としていた。
私はどちらが強いかその瞬間悟ったのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございました
続きは明朝です。
お楽しみに








