お兄様は私を怪我させたことに責任を感じて自分で食べられるのに、食べさせてくれました
看護テントに私を連れて行ってからがまた大変だった。
「今すぐにユリアを治せ!」
とお兄様はピンク頭に詰め寄ってくれたんだけど……
「えっ、ええええ! アルトマイアー様が私に声をかけてくれるなんて、とても嬉しいです」
ピンク頭は私を無視してお兄様に媚びを売ってきた。
「そんな挨拶はどうでも良いからすぐにユリアを治すんだ!」
私をベッドに置くとお兄様はそんなピンク頭の媚びを無視してピンク頭に命じていたのだ。
「ええええ? いくらアルトマイアー様の頼みでも、ユリアーナを治すのはいやです」
必死のお兄様の前にこんなことを言えるなんてさすがにピンク頭だと私は感心したのだが、
「何か言ったか?」
お兄様の目がぎろりと光ったのだ。
「ぐずぐす言わんとさっさとやれ!」
お兄様はピンク頭の胸ぐらを掴むと大声で叫んでいたのだ。
さすがのピンク頭も涙目になって、仕方なしに、私に癒やし魔術をかけていた。
尤も完璧には治されなかったけれど、折れたところは治ったはずだ。
ピンク頭の日頃の私に対する態度に比べたらまともだった。
それで終わりだと思ったのに、その後のお兄様の態度も変だった。
いつもは怪我したら舐めてば消毒にもなるし治るだろうとかいい加減だったのに、なんと私をずっとお姫様抱っこしてくれるんだけど……
足は大丈夫だから下に降りると言っても、
「怪我させたのは俺だからな。グズグズ言わずに、静かにしていろ!」
と言って降ろしてもくれないんだけど……
皆呆れた顔で見てくれるし……お兄様も過保護過ぎるわ。
「本当にユリアは、本来ならば断罪してくれる人に溺愛されているわね」
ってマリアには後で言われた。
ゲーム上ではお兄様もエックお兄様も断罪するクラウスの側で、私は二人にもきつい言葉で断罪されるんだとか。
余程の命知らずか、ピンク頭みたいに頭がどこかずれていないと、怖くてお兄様を敵に回すなんて出来ないわよ。エックお兄様は腹黒いから平気で人を陥れてくれそうだし……
私はお兄様が結婚するまではお兄様の傍で守られて、平和なお嬢様生活を満喫するのよ。
私がそう言うと、
「アルトマイアー様が結婚するまでって言うと、もう予定とかあるの?」
不思議そうにマリアが聞いてきた。
「今は予定はないけれど、いずれはするわよ。そうなったら私はお邪魔虫だから誰か良い人探すわ。出来たらお兄様くらい強い人が良いけれど」
「そんな人いるの?」
マリアが呆れて聞いてくれたので、
「うーん」
私は悩んでしまった。確かに難しい。
「少なくても私より強い人が良いわ」
「この国にはほとんどいないじゃない」
マリアに言われてしまったんだけど……
「まあ、最悪今のままでもいいしね」
マリアが何か言ってくれたけれど私は意味がよく判らなかった。
結局剣術競技はお兄様が一位で、二位が私、三位がエック兄様だった。
三位決定戦があったならば私もクラウスに負けてエックお兄様と戦えば良かった。
まあ、ホフマン公爵家が一位から三位を独占したから良いかもしれないけれど、私には何の利点もなかったのよ。
お兄様はあろう事とか陛下から賞状をもらう時も私を抱き上げたままだった。
「アルトマイアー、愛も変わらずにユリアーナを溺愛しているんだな」
陛下には呆れられていた。
陛下の後ろのお父様も呆れていたし……
私はもう真っ赤だった。
何かクラウスの表情が怒っているし、エックお兄様は呆れていた。
何しに十三歳にもなろうというのに兄にだっこされないといけないのだ?
本当に最悪だった。
でも、家に帰ってもお兄様の過保護ぶりは変わらなかった。
怪我って言ってもほとんど治っているのに!
お風呂に入れるというのはさすがに断った。13にもなって兄に風呂に入れてもらうなんて普通はあり得ない。
でも、食堂で、私は今、お兄様に食べさせられているのだ。
ほとんど普通に手は使えるって言い張ったのに、
「ユリア、何を言っているんだ! 何かあっては事だからな。怪我させたのは俺だし」
そう言いながら、私のお皿で肉を切り分けて、こまめに私の口の中に放り込んでくれていた。
私は何かエックお兄様の哀れむような視線とお姉様の呆れかえった視線を耐えて、食べさせられていたのだ。でも、フランツお兄様の馬鹿にした視線は耐えられなかった。
「フランツお兄様。今日は私の前に棄権するなんて酷い」
私が今日の事を蒸し返した。
「仕方が無いだろう。食べ物かかったユリアとやるなんて兄上くらいだよ」
フランツお兄様が言ってくれるんだけど……
「フランツ、お前、戦う前に棄権するなど、最低だぞ」
お兄様が言ってくれた。
そうだ、そうだ、もっと言って、ついでに私にデザートを貢ぐように言ってほしいと私が期待した時だ。
「でも、兄上、ユリアが倒れた時に、剣を放り出してユリアに駆け寄ったけれど、あれって厳密に言えば試合放棄したことになるんじゃ無いの」
フランツお兄様が反論してきたんだけど。
「うーん、そうだな。やはり怪我させた責任取ってユリアの面倒は一生涯俺が見ないといけないかな」
何かお兄様がとんでもないことを言い出してくれた。
「大丈夫よ。お兄様。高々骨折くらいで、うぐ」
お兄様は反論しようとした私の口の中に切った肉を入れてくれて塞いでくれたのだ。
「しばらくは俺がユリアの面倒は見るから」
抗議しようとした私の口はそのたびにお兄様が食べ物を入れて塞いでくれてほとんど反論できなかった。
それをエックお兄様達が呆れてみてくれていた
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続きは今夜です。
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