王太子を弾き飛ばしたら王妃様の所まで飛んで行きました……
我が家では基本的に一番強いのは当然お兄様、次がエックお兄様。そしてその3歳下の私。最後が嫌々剣を握らされているフランツお兄様と相場は決まっていた。
そして、折角、神様がフランツお兄様と対戦させてくれたのに、卑怯なフランツお兄様は直前に辞退してくれて私のデザート1年分が夢のまた夢に消えていったのだ。
後は私が可能性があるとしたらエックお兄様だ。
最近はたまに勝っている。
そう、残っている私が唯一勝てる可能性があるのが2番目のお兄様なのだ。
食べ物がかけられているからいつもより確実に力は出るはずだ。
フランツお兄様にショックを受けさせられたが、こうなったら私はエックお兄様と出来るように神様にお願いしたのだ。
しかし、結果は残酷だった。
私は、我がホフマン家3兄妹以外唯一残っていた王太子のクラウスと対戦になってしまったのだ。
私の勝てる可能性のあったエックお兄様は何とお兄様との対戦になってしまった。
ええええ! これって本当に最悪だ。
エックお兄様とお兄様が対戦するなんて……絶対にお兄様が勝つに決まっていた。
未だかつてお兄様がエックお兄様に負けた事なんて無いのだ。
折角私が勝てる可能性のあるエックお兄様がここで消える可能性が大きかった。
私のデザート1年分が…………
そして、例えクラウスに勝ったところで、決勝で待ち構えているのはお兄様だ。
お兄様は勝ったら一生涯デザートを私に貢いでくれるとか言っていたけれど、お兄様が婚約したら絶対に煩い小姑の私は邪魔だから出て行けって言われる事になると思う。
お兄様も来年は18だ。そろそろ婚約者が出来てもおかしくないのだ。
まあ、私は18まではあと5年あるからその間は家から通うけれど、お兄様といちゃラブする兄嫁の邪魔は出来ない。
お兄様が婚約して卒業と同時に結婚ということになったらそれ以上お兄様から貢いでもらうのは無理だ。
元々勝つ可能性が少ないところに勝っても利益がでないんなら意味が無いのではないかと思ってしまった。
それに私の対戦相手がクラウスというのも問題だ。
クラウスはお姉様の婚約者だしそれをコテンパンにやっつけるというのもどうかと思う。
そもそも特別観覧席には陛下と王妃様も来ているのだ。絶対に息子の活躍を期待しているに違いない。
それでなくても、私は王妃様のお茶会で王妃様のお気に入りだったフリッツ先生を叩きのめした実績があるのだ。この上クラウスを叩きのめしたら、王宮に立ち入り禁止になるかもしれない。
まあ、私としてはマイヤー先生のいる王宮には近寄りたくないのが本音だけど……
そして、対戦の時が来た。
「三年A組クラウス・ハンブルク王太子殿下」
「「「クラウス様!」」」
「「「王太子殿下!」」」
女の子からの熱烈な熱い声が響く。
「クラウス様 悪役令嬢のユリアーナを倒してくんださい」
この黄色い声はピンク頭だ。
修理された救護テントから出てきて応援していた。
「対戦相手は一年A組 ユリアーナ・ホフマンさん」
「「「おおおおお」」」
今までほとんど無かったのに、男達の大きな声が聞こえたんだけど。
「ユリアーナ様!」
「頑張って!」
「1年生頑張れ!」
「可愛い女の子を応援するぞ」
あれ? 女性陣の応援はあまりないけれど、男性陣からの応援は凄まじいものがあった。
私も少し人気が出てきたみたい。私は少しだけ嬉しくなった。
「さあて、方や女性に人気のある王太子殿下と、彗星のように現れた1年の期待の星、ユリアーナ嬢です」
ベスト4からはグランドの真ん中に作られた特設会場で戦われるのだ。司会は放送部の面々がしてくれるみたいだ。
「今日は特別ゲストの聖女のアグネスさんに来てもらっていますが、アグネスさんは殿下の応援ですか?」
何故かピンク頭は放送席に座っていた。
「はい、そうです。殿下には卑怯な悪役令嬢のユリアーナを是非とも倒して欲しいです」
「アグネスさんはユリアーナさんが卑怯だとおっしゃるのですか?」
「そうです。実のお兄様を脅して棄権させたり、我がクラスのボニファーツ様を油断させて倒すなど、やることがえげつないです」
「私は卑怯なことはしていないわよ」
「「「ブーーーーー」」」
私が叫ぶが、皆のブーイングによって聞こえなかった。
「アグネスさんはそう言われますが、私はベスト8の試合を見ましたが、ユリアーナさんは我々の同級生のブットゲライト相手に正々堂々と戦っていましたよ」
「そうだそうだ」
男達が私を援護してくれている。
ええええ!
嘘、自称ヒロインよりも私の方が人気があるの?
「えっ、そうですか?」
ピンク頭は笑って誤魔化していた。周りの反応を気にしてそれ以上話さないみたいだった。
「ではそろそろ対戦みたいです。私はユリアーナさんを推します」
「私は絶対にクラウス様です。クラウス様! 頑張って下さい!」
司会の2人がそれぞれを応援してくれた。
「じゃあ、ユリアーナ、お手柔らかにね」
クラウスが声をかけてきた。
「お姉様の婚約者と言っても手加減はしませんから」
私はニコリと笑ったのだ。
「では、始め!」
先生の合図で私達は剣を構えた。
「クラウス、頑張って!」
この声は王妃様だ。
私がやばいと思った時だ。
クラウスが正面から打ち下ろしてきた。
ガキン!
私はその剣をまともに受けたのだ。
「ユリアーナちゃん!」
「危ない!」
男達から悲鳴が上がる。
クラウスが力を入れてきた。
クラウスが力業で押してこようとするが、魔術で強化した私はびくりともしなかった。
押し合いが始まるが、私は剣を止めたままだ。
クラウスが一瞬私を押してから飛び下がった。
隙あり!
私はそれについて行ったのだ。
「あっ」
失敗したという顔をクラウスがした。
遅いのだ。
そこから私の怒濤の打ち込みが始まった。
クラウスは必死に剣で止めようとするが、私はそれを許さない。
そのまま一気にクラウスを土俵際に追い詰めると、すなわち境界線まで追い詰めると、留まる暇も与えずに外に叩きだしていたのだ。
「ギャッ」
クラウスは勢い余って飛んで行った。
それも観覧席の方に!
「えっ?」
私は目が点になった。
何とクラウスは陛下と王妃様のいる特等席に突っ込んでいったのだ。
ガンガラガッチャン!
凄まじい音がした。
陛下と王妃様の上にクラウスが倒れ込んでいた。
私はまたやってしまったのだ。
白い目のマイヤー先生の視線が私には厳しかった……
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
王太子に勝ったユリア。
次回はお兄様と決勝対決か
明朝お楽しみに!
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