すぐ上の兄が、棄権して一年分のデザートが飛んでいってムカついたので隣クラスの侯爵令息を聖女もろとも弾き飛ばしました
一回戦は基本的に同じ学年だけど二回戦からは学年関係なしになる。
でも、私はいきなり、フランツお兄様と当たるなんて思ってもいなかった。
お兄様が私が兄弟と試合で対戦して勝てばデザート一年分をかけると明言してくれたのだ。
私は完全にやる気満々になっていた。
鴨葱が向こうから歩いてきたのだ。
食べ物がかかった事で未だかつて私は負けたことは無かった。
「ユリア、あなた大丈夫なの。二年も上のお兄様に勝てるの?」
マリアが心配してくれた。確かに上背はフランツお兄様の方が高いが、私はここ最近負けたことないのだ。
「大丈夫よ。デザート一年分よ。絶対に勝つわ」
私は握りこぶしを作ったのだ。
「ユリア、頼むぞ、お前が最後の砦だ」
ボンズが言ってくれたが、剣術競技は私以外六人は全員が1回戦負け。
魔術競技も皆あっさりと負けていていた。
借り物競走、障害物競走組も全員負けたみたいで、勉強以外は大半が貴族が占めているA組はとても苦戦していた。
まあ、C組は大半が騎士、あるいは魔術師を目指している脳筋組だ。学年対決は大半がCないしB組の連中に持って行かれたらしい。
だから私の応援にクラスの大半の人間が揃っていた。
「頑張れよ、ユリアーナ!」
なんか王太子のクラウスまで現れたんだけど……同じクラスのフランツお兄様を応援しなくていいの?
「クラウス様!」
そこにピンク頭が看護部屋から飛び出してきたんだけど、怪我人の面倒を見なくて良いのか?
そして、そのままクラウスに抱きつこうとした時だ。
「アグネスさん!」
マイヤー先生の叱責声が響いたのだ。
「えっ!」
ピンク頭はぎょっとして立ち止まった。
「あなたは今日はけが人の癒やしでしょう。こんなところに来ている暇があるのかしら」
「い、いえ」
慌ててピンク頭は180度回れ右して帰って行ったのだ。
マイヤー先生をクラウスの横に置いておけば良いのかもしれない。
私は良いことを思いついたのだ。
口うるさい先生をクラウスの横に置いておけばピンク頭よけにはなるし、私もクラウスに近寄らなければ余計な被害もないし、お姉様は元々マイヤー先生と相性が良いから言うことはないわ。
これは何としてもエックお兄様と相談せねば、私が思いついた時だ。
「先生、俺は棄権します」
いきなり、私と試合会場で向き合っていたフランツお兄様が宣言したのだ。
私にはその言葉はまさに青天の霹靂だった。
「ええええ! 何を言っているのよ、お兄様。まだ一太刀も合わせていないじゃない!」
「だからこそだ。今棄権したらお前には戦って負けたことにならないからな」
「棄権は負けは負けよ」
私が言うと、
「デザートの賭けは戦って負けたらだったからな。棄権することは戦ったことにはならない」
フランツお兄様のへりくつに私は唖然とした。
確かにそうなのだが、
「えっ、そんな、私のデザートが……」
私の目の前からフランツお兄様にもらうはずだった1年分のデザートの山が消えて亡くなったのだ。
「でも、公爵家の屋敷内10周は大変よ」
一抹の希望を持って私はフランツお兄様に、言ってみた。私だったらそんなに走りたくない。
「ふんっ、そんなの食い物がかかったユリアとやり合うことを考えたら微々たるものだ。食い物かかった時のお前の本気さは今まで骨身にしみているからな」
「そんな、酷い、フランツお兄様。私の夢を……」
「お前とやりあってボコボコにされて、なおかつ1年分のデザートをやらなければいけないなんて罰ゲームよりは余程ましだ」
フランツお兄様は清々した顔であっさりと棄権していったのだ。
「そんな!」
私はその場に座り込んでしまったのだ。
「凄い、ユリアーナ様が不戦勝だ」
「「「やったぞーーーー」」」
我がクラスの面々は大喜びしていた。
「さすが悪役令嬢、実の兄を脅して引かすなんて」
「さすがに最低だな」
B組のピンク頭とボニファーツが棄権勝ちでショックを受けた私の気持ちも知らずに馬鹿にしたように見下してくれたのだ。
「では、これより3回線を始める。1年A組ユリアーナ・ホフマン対1年B組ボニファーツ・キンメル」
「「「おおおおお」」」
ざわめきが起こった。
「ボニファーツ様。頑張って!」
ピンク頭の黄色い声が響いた。
「ボニファーツ、生意気な銀髪をやってしまえ」
「ボニファーツ様、仇討ちよろしくお願いします」
エンゲルベルトの声もした。
一方の私はデザート1年分が無くなって茫然自失していた。
「ちょっと、ユリアどうしたのよ」
「しっかりしてくれ。ここでユリアーナまで負けたら一年A組は全滅だぞ」
「ユリアーナ様。私の仇を取ってください!」
皆好きなことを言ってくれる。
「なんで、私がダミアンの仇を討たないといけないのよ。それに1年分のデザートが……」
私はノロノロと立ち上がったのだ。
「それでは始め」
フレッツ先生の合図でおもいっきり、ボニファーツが、斬りかかってきた。
カキン
私は軽く受ける。
カキンカキンカキン!
必死にボニファーツが打ち込んでくれた。
私は全て受けた。
デザート一年分のショックを引きずっていた。
「良いわよ。ボニファーツ様。実の兄を卑怯な手段で手を引かせたユリアーナを倒すチャンスよ」
「やはり、A組の人間は大したことはないな」
フリッツ先生が馬鹿にしてくれた。
「ほう、胸も無いお子ちゃまの癖に良くやるな」
プッツン!
何か大きな音がして私の何かが切れた。
もうデザートはお兄様に勝つしかない。一生分のデザートを私に貢いでくれるって約束したし、そこでもらおう。
私は心を切り替えたのだ。
この失礼な男達は一撃で下して、お兄様戦略を建てないと。
私はボニファーツとフリッツ先生とピンク頭が一直線になるところを狙ったのだ。
「今だ!」
私は心の中で叫んだ。「喰らえ!」
剣を横になぎ払った。
ダシーン!
鎧に当たって、ボニファーツが、吹っ飛んでそのまま、フリッツ先生を巻き込んで、一直線にピンク頭に向けて二人が飛んでいった。
「えっ……ギャーーーー」
二人はピンク頭に激突して倒していたのだ。
ドシーーーーン!
三人はそのまま、テントに突っ込んだ。そして、大音響がすると同時にテントを巻き込んでテントの支柱が支えきれずにぺしゃんこになっていた。
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