王太子視点 いつも妹相手に戦う前に棄権していた軟弱な友人が、妹の危機に瀕して悪逆非道の皇帝に反逆したのに驚課されましたた
俺はクラウス・ハンブルク、ハンブルク王国の王太子だ。
俺の幼なじみで婚約者の妹にユリアーナ・ホフマンがいた。
ユリアーナは目の覚めるようなきれいな銀髪に輝くようなキラキラした緑の眼をしていて、とてもかわいかった。なおかつ、剣を持たせればユリアーナの兄以外には無敵でとても凜々しかった。俺からしたら光り輝いていたのだ。なおかつ、デザートを食べる時が本当に嬉しそうに食べていて俺は見ていて癒やされた。
そう、前述したが、俺の初恋の相手だ。というか、その姉のリーゼロッテと婚約したのはユリアーナとより親しくなるためだ。
俺としては婚約者はユリアーナにしたかったのに、それだけは絶対に母が許してくれなかったのだ。
仕方なしに、その姉にした。
ユリアーナは剣術も魔術も強くて俺は全然太刀打ちできなかった。
でも、俺なりに必死に追いつこうと努力したのだ。剣術に魔術に死にもの狂いで訓練した。
でも、強くなったと思ったのに、いつもユリアーナはその上を行くのだ。
そんなユリアーナが帝国の冷徹皇帝から難癖をつけられて帝国に召還されたと聞いたときは肝が冷えた。かの皇帝は子供だろうが容赦なく簡単に殺すのだ。そんな皇帝のいる帝国なんかにユリアーナをやりたくなかった。俺は父になんとかしてくれと頼み込んだ。
「クラウス、それは属国の国王でしかない私からはいかんともしがたい」
父からはできないと言われてしまった。
こうなれば俺もユリアーナを守るために帝国に行くしかない。
俺は帝国の学園への留学する許可を父に求めた。
父はそんな俺に唖然としていたが、
「クラウス、ユリアーナ嬢の髪色が何色か知っているか?」
俺は父が何を言わんとしているのか判らなかった。
「そんなの銀色に決まっているでしょう」
「そうだ。銀色だ。で、誰か銀色の髪の人間を知っているか?」
「それはツェツィーリア様ですね」
俺は即答した。
「そうだ。皇弟殿下のお嬢様のツェツィーリア様だ」
父はそう言うと私を見た。
「帝国の皇族に多いということですか?」
「そう言うことだ。帝国の後継者に近ければ近いほど銀髪になる可能性が高い」
「何をおっしゃりたいのかよく判らないのですが……」
俺は戸惑った。
「まだ、判らぬか?」
「ユリアーナが皇族の血を引いているというのですか?」
俺には信じられなかった。
「ホフマン公爵の亡くなった妻は帝国の名門伯爵家の出身だった。その親戚や知り合いに皇位継承権を持っているものも多い。というか、その子供達にも皇位継承権はあるのだ。養子のユリアーナ嬢が皇族の血筋だというのは十分に考えられる」
「そんな」
俺は父の言葉に唖然とした。そう言えばユリアーナはホフマン公爵の養子だ。本当の両親が誰かは聞いたことはなかった。
「公爵ははっきりとは言わんがおそらくそうだ。それと銀髪は皇位継承権が近いほど濃くなるということだ。ユリアーナ嬢の銀の髪はツェツィーリア様よりも濃かった。そして、今回ユリアーナ嬢が皇帝に呼ばれたということは、おそらく皇帝と敵対した血筋だということだ」
俺は父の言葉を呆然として聞いていた。
帝国と敵対するなんてできないからできたらお前はこのままハンブルクに残れとか言われたが、俺はユリアーナに惚れているのだ。惚れた女の危機に自国にいて傍観なんてできなかった。
俺は両親の反対を押し切って帝国の学園に留学した。
一緒に留学したリーゼロッテやフランツの心配をよそにして、帝国の学園でもユリアーナは皇族に対して傍若無人だった。
第三皇子を張り倒したり雷撃したり、不敬にならないのかと俺が心配するほどだった。
俺が大丈夫なのかと聞いても
「できるかぎり注意しているんだけど、ついやっちゃうのよね。皇族って何故であんなに気遣いができないの?」
いや、ユリアーナ、皇族はこの世界の頂点に立ち、誰にも遠慮する必要が無いからこれほど傍若無人なんだよ!
俺は思わず言いそうになった。でも、さすがにそんなことをおおっぴらに言えなかった。
「まあ、ユリアーナはそこは我慢するしかないんじゃ無いかな」
ありふれたことしか言えなかった。
その翌日だ。ユリアーナが自宅謹慎になったのは。
そして、その翌日には行方不明になったというのだ。
「それは本当か、リーゼ?」
俺はリーゼから聞いて驚いた。
「クラウス様。私はとても心配で」
リーゼがうつむいてくれたが、心配なのは俺も同じだ。
もっともアルトマイアーと一緒に行方不明になったというところが安心でもあり不安でもあった。
アルトは脳筋だ。でも、ユリアーナを溺愛していた。ただ、ユリアーナはアルトを単なる兄としてしか見ていないから安心だと思ったが、いつ変わるか判らないでは無いか。
危機に陥って吊り橋効果でアルトに恋を感じてしまうかもしれない。
俺はいきなりユリアーナがどこに行ったのかとても心配だった。でも、属国の王太子の俺ではこの国でできることは限られていた。
でも、事態はそれどころでは無くなった。
俺はいきなり拘束されてしまったのだ。俺はそのまま皇宮の地下牢に入れられてしまった。
何でも、ユリアーナとアルトマイアーは鉱山で働かされていた奴隷の獣人の女の子を解放したというのだ。まあ、彼のユリアーナとアルトマイアーだから奴隷というのが許せなかったんだろう。
でも、それは皇帝に対する反逆行為だった。
俺はその関係者として捕まえられてしまったみたいだ。しかし、俺は何も聞いていないし関係者というのもおかしいように思うのだが……しかし、帝国の官吏は何一つ俺の話を聞いてくれなかった。
しかし、あの二人はどうなるんだ?
というよりもユリアーナは大丈夫なのか?
俺はとても不安になった。
確かにユリアーナもアルトマイアーも強いけれど帝国四天王には全く歯が立たなかったはずだ。
特に赤い悪魔と黒い死に神には二人は散々やられたと聞いていた。
「ギャーーーー!」
それに地下牢中に聖女アグネスの悲鳴が夜通し聞こえるのだ。
かの図太い聖女が悲鳴を上げるなんてとんでもないことだ。余程酷い拷問をされているんだろう。
周りに投獄されたものも青くなっているし……
ユリアーナも捕まったらああやって拷問されるんだろうか?
俺は心配で夜もほとんど眠れずに過ごしていたときだ。
ドカーーーーーン
皇宮中が大音響と共に揺れて官吏達が全員いなくなったのだ。
そして、俺はなんと、古代竜を引き連れたフランツに助け出されたのだ。
信じられない事にフランツはユリアーナのペットのピーちゃんを引き連れていた。
体中ボロボロになりながら、史上初めて帝国の皇宮をフランツが制圧したのだ。
いつも妹と戦うのを怪我するから嫌だと棄権しまくっていたフランツが、その妹のために先頭に立って皇宮を落とすとは信じられなかった。
「凄いじゃないかフランツ! ユリアーナのために先頭に立って悪逆非道の皇帝に反逆して、皇宮を落とすなんて! これでお前の名前が帝国史にでかでかと載るぞ」
「いやあ、それはないだろう」
歴史に残ることをしたのにフランツは謙遜していた。
「いやあ、能ある鷹は爪を隠すんだな」
俺の言葉にフランツの顔が何故か引きつっていたように見えたけれど、気のせいだろう。
フランツによって助けられた俺達はフランツを褒めまくったのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
実はピーちゃんに脅されてここまで来たなんて、本当のことを言い出せないフランツでした…………
新作始めました
『モブですらない小さい聖女に転生したので、小説の世界を堪能しようとしたら、何故かヒロインになっていました』
https://ncode.syosetu.com/n4848kz/
パウリーナは5歳の時に高熱で数日間生死の境を彷徨った時に、前世の記憶を取り戻した。それと同時にこれが小説『聖マリアンヌのピンクの薔薇』の世界だと気付いたのだ。パウリーナはヒロインでも悪役令嬢でもなく、モブですら無かったが……その後に聖女の力を発現したパウリーナは下っ端聖女としてひたすら初級ポーションを作らされていた。そして、16才になり小説の舞台の王立学園に通えることになった。特等席で小説の世界を鑑賞しようと期待に胸を膨らませたパウリーナだが、何故か小説のように話は進まなくて、気付いたら王太子のエドガルドと仲良くなっているんだけど……悪役令嬢からもヒロインからも白い目で睨まれてさあ大変。皆に虐められるも王太子が助けてくれて更にパウリーナの立場が……平民の私なんか王太子殿下の婚約者なんか無理と逃げようとするが、王太子が許してくれなくて……王太子を巡って血みどろの女の戦いの中に巻き込まれて果たしてパウリーナはやっていけるのか? 平民の孤児が繰り広げるシンデレラストーリーの始まりです。
読んで頂けたら嬉しいです。
この15センチくらい下にリンク張ってます








