真の聖女視点 古代竜に咥えられて空に飛び立つ事になってしまいました
治って元気になった私は、フランツと一緒にユリアのペットの古代竜の子供のお世話係をさせられた……
「ピーーーー」
こいつは本当に口うるさいというか、ユリアと一緒で食欲が旺盛すぎるのだ。
餌を作った端から食べてしまう。
何でもコック達は逃げてしまったらしくて、残った面々で料理を作れるのが私とセバスくらいで本当に食事作るのが大変なのだ。まあ、食事は昔から作っていたから出来るけれど……でも、持って来た端から食べてしまうのよ。
私が一生懸命に厨房から作った料理を持ってくるとガツガツとユリアみたいにがっついて食べてくれた。ペットは飼い主に似るというのは本当だと私はあきれ果てたんだけど……
私はユリアの兄のフランツに助けられた当初は、とても嬉しかった。
私は冷酷非情の皇帝に剣で地面に縫い付けられて本当に苦しかったのだ。
助けてくれたフランツが神様に見えた。
ユリアの前でいつも棄権してくれてユリアに点数を稼がせている弱いフランツの印象しかなかったのに……
古代竜を背後に従えたフランツは本当に凜々しかった。
私には本当に神様のように見えたのだ。
でも、それは私の勘違いだった。
私にはフランツがユリアのペットを従えているように見えていたのに、実際はフランツはそのペットに従えられていたのだ。
「ピーーーー」
ペットがフランツにペットのお腹を指して何か言った。
「えっ、ピーちゃん、もうお腹が減ったのか?」
「ピーーーー」
不機嫌そうにペットが唸る。
「そんなこと言っても城の奴らは竜を恐れて皆逃げ出しちゃったからな。料理人も逃げたぞ」
「ピー」
ユリアのペットは食い意地だけはユリアとそっくりであるみたいだ。
不機嫌そうに鳴いていた。
そのまま地下の厨房に行ったら食材は山のように積まれていたが、料理人は一人も残っていなかった。
「おいおい、どうするんだよ。俺は料理は出来ないし」
「ピーーーー」
ユリアのペットはとても不機嫌そうにフランツを突きだした。
「痛い! 痛いから!」
フランツが悲鳴を上げる。
「私、料理なら出来るけど」
私は思わず申し出ていた。フランツが可哀相に見えたし、フランツは私の命の恩人だったから。
でも、私は馬鹿だったのだ。吊り橋効果か何かで目が曇っていたのよ。
この古代竜の食欲旺盛さを知らなかったの。
知っていたらそんなことは言わなかったのに!
「ピーーーー」
私が作った炒め物はすぐにペットが完食していた。
「ええええ! もう食べたの?」
「ピーーーー」
「えっ、もっと欲しいって?」
「ピーーーー」
「でも、私も疲れたし」
「ピーーーー」
私はユリアのペットに急かされるように、また大鍋でスープを作らされる羽目になったのだ。
もう大変だったんだけど。最近は古代竜も食事の時間になると直接厨房に来ることになったのだ。
本当に卑しさはユリア並みだ。
「何で聖女様の私がこんなことしないといけないのよ。あなたも他の古代竜みたいに、そのまま食べなさいよ」
私が文句を言った。
他の古代竜はジャガイモや肉とかをそのまま食べてくれているのだ。
でも、我が儘なユリアのペットは火を通さないと食べてくれないんだけど……
それに、私が作るのはこのペットだけじゃない。
付いてきた騎士や侍従の分まで作らされてしまったのよ。
だって皆料理が作れないって言うんだもの。
あんた達野営で何をしているのよ!
「ピーーーー」
「痛い、判った、作るから突かないで」
私はユリアのペットに突かれながら必死に作らされたのだ。
あの悪役令嬢、覚えていなさいよ。絶対にこの貸しは返してもらうんだから……
私は死にもの狂いで料理を作らされていた。
そんな時だ。
突然私の胸が触りとした。
「なんだこの感覚は?」
フランツも胸を押えている。
このいやな感じは何だろう?
私達が顔を見合わせると
「ピーーーー」
いきなりユリアのペットが鳴くと
「ギャオーーーーー」
巨大化したのだ。
止めて、こんな、厨房の中で巨大化しないでよ!
「キャーーーー」
ドシーーーーン
天井を古代竜が突き破って天井が落ちてきた。
私はフランツに庇われた。
そこには恐ろしい黄金竜がいたのだ。
黄金竜は私達を見ると巨大な嘴を私達に向けてきた。
「えっ?」
驚いたフランツを咥えたのだ。
嘘、食べられる?
幾らお腹が空いているとはいえ、私達を食べるの?
恐怖に震える私を無視して古代竜はぽいっとフランツを後ろに飛ばした。
「ギャーーーー」
フランツの悲鳴とともに、ぽてんと古代竜の背中にフランツは落ちた。
「キャーーー」
私は何も考えずに、逃げようとした。
何故か逃げないといけないと本能が警笛を鳴らしたのよ。
でも、数歩も走らずに、私は服を古代竜に咥えられたのだ。
「えっ?」
そして、古代竜は私を咥えて羽ばたいてくれた。
「ギャーーーー」
古代竜は私を咥えたまま空に飛び立ってくれたのだ。
ぐんぐん地上が小さくなっていく。
嘘、そんな!
私はビュービュー風を切って飛んで行く、古代竜に咥えられてお空を飛ぶことになったのだ。
「いやーーーー! 下ろして!」
心の底から私は叫んだが、ユリアのペットは絶対に下ろしてくれなかった。








